第128話甘味処

今日は部活の休養日だ。新子さんが話かけてきた。


「ねぇ京子ちゃん、お店に寄り道しない?」


良いねぇ。五十嵐に電話をして送迎をしなくていい旨を伝えた。よし、これで準備OK。ところでどんなお店?


「甘い物を食べれるところだよ」


ホームルームが終わり、新子さんと私は教室を出た。囲碁将棋部員が声を掛けてきた。


「綾小路さん、対局しませんか」


悪いね、今日は用事があるんだ。


「そうですか、わかりました。部長にそう伝えます」


がっかりして部員は去った。そう言えば全国大会が近いな。今度顔を出そう。2人でお喋りしながら歩く。電車で3駅。駅前の商店街を通り、少し離れたところにその店はあった。


「甘味処みよし」


と書かれた暖簾のれんが掛かっている。店の見栄えは古く年季が入っているが綺麗に店先は掃除が行き届いている。暖簾をくぐると、いらっしゃいと声が掛かった。適当にテーブルに座る。


「このお店、クラスの子が凄く美味しいって教えてくれたの」


じゃあとりあえず善哉ぜんざいを頼もうか。


「おばちゃん、善哉2つね」


「はーい、善哉2つね」


おばさんが厨房へ消えて行った。


「すぐ来るよ」


新子さんがそう言い、2人でお喋りをした。新子さんに好きな人が出来たらしい。良いじゃない。声掛けてみなよ。


「え~やだ、恥ずかしい」


新子さんの照れる姿は可愛い。早速善哉が出された。


「はい善哉お待ち」


おばさんが店の奥に消えた。お椀の蓋を開ける。甘い香りがする。ほっとする小豆あずきの香り。塩昆布が小皿に添えてある。椀には餅が入っているが先ずは善哉を食べた。びっくりするくらい甘い。


「凄い甘いね。塩昆布で良い感じになるね」


どれだけ甘く作ってあるんだろう。しかし女子は甘いものには弱い。2人夢中になって善哉を食べた。食べ終えると満足感に満たされる。これは2杯は食べれないな。


「まあたまには甘いもん食べても良いやろ」


オッサンもそう言いつつ


「俺も善哉好きやねん」


と羨ましそうに言った。会計を済ませ、店を出た時、2人で甘い物巡りをしようと約束した。

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