第201話全国高校生囲碁選手権大会
いよいよ選手権予選が始まった。3人1組で1チームで競い合う。つまり2人勝たなければ勝利ではない。
「いよいよ始まりますね」
囲碁部員が私を見上げる。私は腕を組みながら
「ええ雰囲気や。勝負はこういう空気でないとあかん」
オッサンはやる気満々だ。囲碁部を後にすると帰宅後、折り畳みの碁盤と石を取り出した。これはオッサンが私におねだりして買わせたものだ。
「京子ちゃん、任せとき。全勝優勝や」
アナウンスが流れ、各学校の代表が席に着く。私達も席に着いた。椅子が小さい。
「お願いします」
持ち時間は20分、秒読み10秒3回。早碁である
「熱くなってきたで」
オッサンはやる気満々だ。打つ手が異様に早い。
「こりゃ相手にもならんわ。つまらん」
しばらくすると対局相手が投了した。勝った。よし、1勝。ところが他の部員が苦戦している。
「あちゃー、こりゃあかんで」
オッサンが溜息をついた。ある程度私も囲碁の勉強をしたけどそんなに悪く見えない。
「こっちの子が3目半、あっちの子が1目負けや」
オッサンが言った。細かい碁になったという。そして予想通り二人は負けて、桐生学園は予選敗退となった。
「綾小路さん、すみません」
2人は私に謝罪した。でもまあ、対局内容は悪くないんじゃない?
「悔しいです」
うなだれている部員を励まし、学園に報告に向かう事にした。
「部長、怒るだろうな」
大丈夫、私が言ってあげる。
「綾小路さん、本当ですか!」
2人共1年生ながらよく頑張ったよ。
部室に戻って来た。私が先頭で入った。初戦で敗退しました。
「そうでしたか」
部長はうなだれた。
「将棋と違って囲碁は部員層が薄く、1年生も良く頑張ってくれました」
ね?怒ってなんかないでしょ。2人は細かい碁で負けたから健闘した方だよ。私は部長にそう言った。
「綾小路さん、ありがとうございました。コーヒーでもいかがですか?」
一杯頂こう。3人で検討が始まった。本当に悪手が無く、良い碁だったと思う。勝負は時の運。かろうじて相手が良かっただけだ。部長も静かに見ている。部長も囲碁打てるのになんで打たないの?
「僕は元院生でしてね。それに今は将棋の方が楽しいんです」
おいおい、部長が出たら良いじゃん。
「私が出たら部員が成長しません」
帰り道、五十嵐と車中で話をした。
「その部長は自分なりに考えた結果でしょう。無理に出てもつまらないです。とにもかくにもお嬢様、お疲れ様でございました」
私は車窓から外を見ている。夕暮れが綺麗だ。
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