第152話転校生

「おい聞いたか」


「なんだよ」


「転校生が来るってよ」


本当か、と教室がざわめいた。転校生の話題になると俄然男子は騒ぎ出す。女子らしい、可愛いらしい、女子らしいと落ち着きが無い。朝のホームルームが始まった。先生が転校生の話をしだした。男子生徒の情報は正確だった。


「今日から皆さんのクラスメートになる本田・メリッサ・ホフマンさんです。さあホフマンさん、入ってください」


転校生が入って来た。黒人の美しい女の子だ。頭も小さく、スタイルが良い。鼻筋が通った端正な顔立ちは黒人に対するイメージが崩れた。


「始めまして。本田・メリッサ・ホフマンです。日本語、大丈夫です。よろしくお願いします」


丁寧にお辞儀する彼女は日本人の所作しょさである。


「これからメリッサと呼んでください」


メリッサは笑顔で言った。素敵な笑顔である。メリッサは私の席の横になった。


「メリッサです。宜しくお願いします」


綾小路京子です。よろしくね。握手をした。彼女はすぐにクラスに馴染んだ。日本語も堪能で、素敵な笑顔だ。笑いの中心に彼女がいる。字が綺麗。日本人より日本人。お母さんが日本人で、アメリカで結婚し、生まれてから日本にやって来たと言う。よく自分の事を話す。自然と私も巻き込まれる。


「綾小路さん、実はお願いがあります」


なんだい?


「なんでも綾小路さんはボクシング部で頑張っていると聞きました。是非私を紹介してくれませんか」


お安い御用だよ。


「ありがとうございます」


彼女は丁寧に礼を言った。じゃあ今日私も行くし、一緒に行こうか。


「はい、楽しみです」


彼女は嬉しそうだ。しかしA組に編入するからにはそれなりの成績でないと入れない。優秀である。昼食も一緒になった。私、新子さん、田野君、メリッサで食べた。彼女の弁当にはおにぎりが入っている。


「私、おにぎり大好きなんです。和食も大好きです」


箸の扱いも綺麗だ。余程ご両親の目が行き届いているのだろう。楽しい昼食となった。


「じゃあメリッサ、ボクシング部へ行きましょう」


新子さんがメリッサを誘った。


「新子さんはボクシングをするんですか?」


「私はマネージャーよ。部員は綾小路さん」


そうですか、とメリッサは言った。


「綾小路さん、私とスパーリングしましょう」


急な展開で私の方がついていけない。


「桐生学園にはボクシング部があると聞いて決めました。楽しみです」


転校生といきなりスパーをやる事になりそうだ。

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