第138話病み上がり

インフルエンザは完治したが念のためマスクをしている。もちろん、部活動は禁止だ。こればかりはどうしようもない。


「京子ちゃん、大丈夫?」


新子さんが話しかけてきた。うん、良くなったよ。


「でもしばらくは部活動もできないね」


ハードコンタクトな部活ばかりだから、ウィルスをばら撒きかねない。


「こればかりは仕方が無いよね」


ゆっくり休んでね、と新子さんは言った。どうにも何時もの事ができないと言うのは調子が狂ってしまう。授業後、早々に五十嵐の車に乗り、帰宅した。しばらくは家のジムでのトレーニングになるだろう。


「京子ちゃん、腐らんでな」


オッサンが言った。体がなまってしまいそうで怖い。


「1週間くらいでは鈍らんよ。大丈夫や」


はたしてそうだろうか?この休養時間、色々と考える時間はいくらでもあったのでどうしても進路や勉強のことを考えてしまう。これはどうしようもない。


「悩んで悩んで悩み尽くして出る答えもあるんやで」


オッサンの言葉もむなしい。久し振りのジョグで、気持ちよく汗をかけた。疲労感も無い。


「静養が慢性的な疲労を取り除く事が出来たんやで。インフルエンザに感謝せんなあかんな」


オッサンの言う通りだ。今までは大して深く考えなかったけど、気が付かないうちに疲労が溜まっていたんだな。休養日はトレーニングを一切やめて何も考えずゆっくり休むべきだ。しかしそれがなかなか難しい。


「京子ちゃんは頑張り屋やからずっとその環境に居たらとことんやってしまう。それは良い事やけど時として体を休めるのも大切やねん」


いや、オッサンが言い出しっぺじゃないか。ツッコミを入れたくなったがそこは堪えた。さあ、次は勉強勉強。

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