第146話アームレスリング

クラスの昼休み、男子が盛り上がっている。アームレスリング、腕相撲だ。なんだか楽しそう。勝った男子はガッツポーズを決めている。ねぇ、私も混ぜてよ。


「ええ、綾小路?俺達勝てないよ」


まあまあ、やってみないとわからないよ。


「よし、じゃあクラス最強の鈴木とやれば良いんじゃね」


鈴木はクラスの中では体格も良く、腕も太い。


「来いよ、綾小路」


おうさ!気合入れて来いよ。


両者机を挟み、組み合った。いつでも良いぞ。


「それじゃあ行くぞ。レディー、ゴー!」


両者全力を出すいい勝負だ。しかし私には秘策があった。手首を自分の方へ曲げるのだ。これによって相手の力を奪う事が出来る。鈴木もそれは理解しているらしく、同じく手首を曲げようとしている。しかし緊張の糸を切られてはいけない。手首に意識があるうちに瞬時にパワーを発揮する。鈴木の腕がかたむいた。鈴木は顔を真っ赤にしてこらえる。しかしいったん傾くと、劣勢れっせいになるほどなくして鈴木は力尽き、腕を倒した。


「やっぱ綾小路じゃん」


「なんなんだよ綾小路。強すぎる」


「鈴木に勝つならもう敵いないんじゃない?」


教室がざわついた。その時、新子さんがクラスに戻ってきて私が勝った場面を見たらしい。


「ちょっと京子ちゃん、何してるの」


アームレスリングだよ。


「京子ちゃん、怪我したらどうするの!」


新子さんが怒っている。


「京子ちゃん、もし怪我したらどうするの?今は怪我しないように気を付けないといけないのよ」


はい、すみませんでした。以後気を付けます。


「わかればよろしい」


怒った顔から穏やかないつもの新子さんになった。しかしクラスの噂は広がり、次々と対戦者が現れるがことごとく新子さんに断られるのであった。


「京子ちゃんは将来、きっと日本を代表する人になると思う。だから怪我をする可能性は排除しないといけない」


そこまで買っていてくれているのかと私は新子さんに感謝するばかりだ。

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