第26話受験戦争

「綾小路さんならこの高校は大丈夫でしょう」


家庭教師の羽生さんは太鼓判を押してくれた。私立桐生学園。クラブ活動が盛んで、ボクシング、柔道、レスリングが有り、クラブの掛け持ちも可能。スポーツ推薦が多いので偏差値は低め。私の狙う通りだ。


「でも油断は禁物。しっかり勉強をしましょう」


私は参考書を開き、勉強する。間を置いて羽生さんが出題してくれてそれを解き、また参考書の勉強に戻る。


「京子さん、よく今まで頑張りましたね。不断の努力のおかげね」


羽生さんはほめてくれる。正直私も受験できるなんて思いもよらなかった。


「それはキミの努力の結果やで」


オッサンがいきなり話しかけて来る。ありがとう。時間が過ぎ、羽生先生を見送った後、トレーニングをする事にした。


「京子ちゃん、もう夜遅いから止めとこ」


いいや、今日はやる。私の力で。


「しょうないなぁ、付き合うわ」


トレッドミルで走って、フリーウェイトでダンベルカール。そして腹筋を鍛える。

何か高揚感があって、筋トレが苦痛にならない。


「それが本来の京子ちゃんやねんで」


オッサンは私を上手く乗っ取って、私の感じる負荷を軽減してくれる。こういう時はオッサンが頼もしい。


「よしゃその辺でやめとこうか」


オッサンが制止するので諦めた。


「調子のいい時はついオーバーワークになるねん」


そうらしい。私はシャワーを浴びてゆっくりくつろぐ。心地良い疲労感が身体を支配する。


「おっと京子ちゃん、神様から呼び出しや。ちょっと離れるで」


オッサンはそう言うと気配を消した。何の呼び出しだろう。何も無いと良いけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る