エピローグ
第88話「希望の象徴」
映画 魔法少女マジカルプリティーオールスターズ「永遠の友達 ~きみのなまえをよんで~」
―Fin―
「いやぁー、やっぱりマジカルプリティーは最高だね!」
エンディングまで大いに楽しんで、Finの文字を見たときの感動は実に良いものだ。
「見たの……六回目って言ってなかった?」
ジト目で俺を見てくるのは藤村さんだった。
今日は土曜日。学校もお昼でお開きだ。
そのため俺たちは授業が終わった後、高崎にあるショッピングモールに来ていた。
榛名防衛戦後、晄は無事にたったの二日でいつも通りに元気になった。朱音も無事だ。そうして日常が戻ってきたころ、デートの提案をしてきたのは藤村さんだった。藤村さんいわく「デートする約束だったのに、前回中止になっちゃったでしょ? だから、その埋め合わせよ」ということらしい。
そんなわけで、俺は藤村さんにどこに行きたいかと聞かれたので、一緒に映画を見よう! と誘ったわけだ。ショッピングモールなら良いと言う藤村さんの一声もあったため、三階には映画館もあるし、もうじき映画の公開も終わるので一緒に見たいと思ったのである。
そんなわけで、プリティーライトが光る劇場内でマジカルプリティーの勇姿を堪能してきたわけだ。名残惜しさを感じながらも、館内をでてきたのだが、藤村さんはあまりご機嫌がよくないようだ。
「藤村さん? マジカルプリティー、面白くなかった?」
「んー。思っていたよりは面白かったわよ。小さいころは見てたし、随分と人数増えたのね」
「楽しんでもらえたなら良かったよ」
「はぁ……幸城君のテンションが高すぎて少し引いたけどね」
「え……」
そうだったのか!
「まあ、良いわ。今度は私に付き合ってもらうから。こっち来なさい」
「え? あ、うん」
藤村さんが、シネマの前の大きな通路を足早に歩き始めてしまうので、俺も慌ててそれについてく。
「あなた誕生日は何月?」
「え? 十月だけど」
「そう。わかったわ」
いったいどういうことかと首をかしげていると、藤村さんは左にある、とある店の前で立ち止まった。
「ちょっと、待ってなさい」
「え、あ、うん」
そう言うと、藤村さんは店内に入っていく。店の名前はマーケットストーン。天然石のアクセサリーを扱っているお店らしい。
藤村さんは店内を少し物色したのち、すぐに決まったようでレジで購入してきていた。どうやら袋に入れてもらうのは断っているようで、お金だけ払うと俺のところへと小走り気味に戻って来る。
「はい、これ」
「え?」
突きだされたのは、何かの石のペンダントだった。向きを変えることで色相が虹色に変化するその石は、とても幻想的だった。
「これは?」
「鈍いわね! あげるって言ってんの!」
そう言うと俺の首に手を回し、ペンダントを無理やりつけてくる。
「っ」
甘い匂いがふわっとしてきて、なんだか無性に恥ずかしくなってきた。
ペンダントを着け終わった藤村さんが離れていくのを少し寂しく感じながらも、俺は胸元に下げられたペンダントへと目をやる。それはどう見ても安物ではなかった。
「藤村さん、これ……高かったんじゃ」
「うるさい! つべこべ言わないの! いろいろ、迷惑かけたから……そのお詫びよ」
藤村さんは、少し気まずそうにしながらも、不安げにこちらを見てきた。俺が受け取らなかったらと、心配しているのだろうか。
「藤村さん。……ありがとう」
「その石は十月の誕生石でオパール。希望の象徴って意味もあるの。……お守りだから」
藤村さんは、ふてくされたような表情でそっぽを向いた。照れ隠しだろうか。
何にしても……藤村さんからのプレゼントか。素直に嬉しい。
それだけ、俺の存在を認めてくれたということでもあるのだろうから。
「幸城君。少し、話したいんだけどいい?」
藤村さんは目線で、近くにあるベンチに腰掛けようと促してくる。
「うん。もちろん良いよ」
当然のように承諾すると、すぐに藤村さんはベンチに腰掛けた。あまり近くに座っても怒られそうなので、少しスペースを開けて俺も隣に座る。
しばしの沈黙が訪れた。俺は館内の雑音だけを聞き流しつつ、藤村さんの言葉を待つ。
「手紙を、見たの」
それが、最初の一言だった。
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