第31話「決着。そして……」
アグレッサーは、直線的に俺の懐へと飛び込んでくる。
万全なアグレッサーであれば、最高時速200キロで走り、地球上のどんな生物でも貫通するほどの拳を振り下ろしてくるだろう。
だが、目の前のアグレッサーには、すでに力の
瞬間的には時速約150キロというスピードで迫ってきたその右拳を、俺は軽々と受け止めて握りつぶした。
「グギャァァァァァアァァァァァッ!」
苦悶の表情を浮かべ、潰れた右手を庇いながら動揺したように数歩下がったアグレッサーは隙だらけだった。一気にゼロ距離まで詰めてアグレッサーの首をつかみ、そのままの勢いで地面にたたきつける。
「グゴハァッ!」
自身の体の形に軽く陥没したアスファルトに沈み、虫の息のアグレッサーは、それでもなお俺を睨み続けてくるが、敵意があっても、もう何もできないだろう。
アグレッサー特有のマゼンタ色の血が、所々に飛び散っていた。
おそらくこいつも、地球に取り残された生き残りのアグレッサーで、諜報中に不測の事態で力を使いすぎてしまったのだろう。
とにかく、殺すより軍に引き渡して尋問させたほうが良いな。
右手でアグレッサーの首を鷲掴みにしたまま、左手の平に体内で循環するブルートを集めていく。
「ッッッ!」
俺が何をしようとしたのか理解したアグレッサーは、逃げだそうと体を必死に動かしているが、手足が動かないのだから足掻くだけ無駄だ。
久々の戦闘としては、手加減もうまくいったと言えるだろう。
「……さて、
俺が軍に引き渡したら、絶対に協力を頼まれるだろう。……正直、まだどうするべきなのか、決めきれていないのだ。もし、協力を断りでもしたら……面倒なことになるのは間違いない。
かといって、放置するというのもなぁ……。
つい、考え込んでしまったのが失敗だった。完全に人の気配に気付いてなかったのだ。
地面の砂利がこすれる音に振り返ると、そこには藤村さんが立っていた。
「……藤村さん」
自分の口から出たとは思えないようなアニメ声優顔負けの萌声で、咄嗟に名前をこぼしてしまう。
やばい、と思い口をふさぐもすでに遅かった。
「魔法……少女……」
俺を見てそうつぶやいた藤村さんは、驚愕し、目を見開き、立ち尽くしていた。
当然だろう。
アグレッサー撤退後、戦中の傷を療養中のはずの魔法少女が目の前にいるのだ。驚くなと言うほうが無理がある。だが、丁度いい。
こんなグロいアグレッサーを見せるのは悪いと思うが、藤村さんが警察なり軍に引き渡してくれればそれでいい。魔法少女がいたことは口止めをしておこう。
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