第59話「自分の体」
夕方と言って差し支えのない時間に差し掛かったころ、俺たちは葛飾区にある涼太郎さんが経営する病院へと着いた。
200床以上の病床数がある、いわゆる地域医療支援病院と言われるサイズで、かなりの設備が整っているらしいが、俺自身専門ではないので細かいことはよくわからない。
少なくとも、群馬にこの規模の病院は十数個しかないと、どこかで聞いた覚えがある。
いかにも病院といった外観の白い建物で、俺の視界に収まり切れないほどに大きい。
院内に、全員でぞろぞろと入っていったわけなのだが、土曜日な上、午後四時を回っていたのも相まって、中に人はほとんどいなかった。いるのは、病院関係者である看護師や医者くらいのもので、たまに入院患者とすれ違うくらいである。
このくらい人が少ない状況下でないと、俺の検査を内々でどうにかするのは骨が折れるだろうし都合は良かった。
そんなわけで、少し挨拶をしてくるから待っていてほしいと言う涼太郎さんに案内された俺たちは、広いわりにまるで
レントゲンから始まり、CTやMRIなどと細かく検査を行っていった。他にもいろいろと促されるまま従っているうちに検査は一通り終了していたらしい。
少し待っていてくれと、診察室の前まで案内された俺は紅色の長椅子に一人で腰かけ、奥に行くほど薄暗く映る廊下がどのくらいあるのだろうかと、なんとなく眺めていると、
「待たせたね」
涼太郎さんが診察室のドアを中から開けて顔を出してきた。
「いえ、そんなに待ってませんから」
「どうぞ」
涼太郎さんに促されるまま俺は診察室に入り、患者用と思しき丸椅子に腰かけた。まるで普通に病院で診察を受けているみたいだな、なんて呑気に思っていると、涼太郎さんはレントゲンの結果を次々とディスプレイに映し出してきた。
「幸城渚くん。わかるかい?」
「……これが?」
「そうだね。君の体だよ」
「……」
全体的な身体構造は、地球人のものであるとは思う。けど、ブルート蓄積用器官がないだけで全身にアグレッサーのものに似た神経組織が張り巡らされているのだ。でも、初変身後に検査した時もこんな感じだったような気がするんだが……。
「あの、先生。初変身時の時のは……」
俺がそう尋ねると、聞かれるとわかっていたようで、すぐにもう一枚のレントゲンを出してくる。
「……これは」
張り巡らされている神経組織の密度が違う。特に、これは……。
「先生。胸のあたりに神経組織が集まってますけど、これは……」
「予想通りだと思うよ。これはおそらく、ブルート備蓄器官になりきれていない何かだ」
「……」
何か。つまり、まだそうではないが、そうなるかもしれないものってことなんだろうな。
造りのベースは地球人でも、これじゃあまるで……アグレッサーだ。
俺の目には、そう映ってしまった。
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