第15話「補給薬」
「これは……ブルート補給薬ですか?」
「試作薬にはなるんだけどね」
晄の母星周辺では当たり前に存在するブルートと呼ばれる粒子。
そのため、地球へとやって来る前にブルート補給薬を相当数持ってきていた晄だったが、そのストックもあと半年ほどで切れてしまうところまで来ていた。
「俺としては安心ですけど、よく作れましたね」
「そうだね。私としても安心しているよ。まあ、なんだ。捕虜を殺すわけにはいかないから、何だかんだと急務ではあったんだ」
「……なるほど」
地球に侵攻してきたアグレッサー兵の捕虜は、結構な数いたはずだ。正式な条約があるわけではないにしろ、ことを治めるときに捕虜の扱いと言うのは大きく問題になるだろうからな。
ただ、一つ疑問は残る。
「ブルートを補給させてしまっては、反抗する力を与えてしまうのではないですか?」
アグレッサーにとってブルートは、フィクションなどにでてくる魔法使いの魔力なんかに近い。ブルートが補給できれば、それを使って攻撃を仕掛けてくるかもしれないのだ。
補給させては、こちらが危険になる可能性も高い。
「幸城渚くん、心配は無用だよ。対アグレッサー用に監獄は改良を施しているし、アグレッサーが能力を安定して行使するためのデバイスもこちらで管理している。そもそも、最低限のブルートしか与えてないからね」
「最低限ですか?」
「そうだね。平時活動におけるブルートの消費量を計測して、それに過不足ないだけ補給薬で補えるようにしているんだ」
「なるほど」
補給薬もできて、ブルートの研究も相当に進んでいるのだろうし、そのくらいはやっているか。ん? まてよ。
「じゃあ、このブルート補給薬も最低限しか補給できないんじゃ……」
「幸城渚くん、心配には及ばないよ。一回の摂取量を増やせばオリジナルと同等量のブルートを摂取できるからね」
「なるほど」
いや、でも待てよ。そうすると、相当数が必要になるわけで……。
「あの涼太郎さん。そんな重要なものを外に持ち出して……大丈夫なんですか? バレたら涼太郎さんもただでは済まないんじゃないですか?」
「その辺は心配しなくて大丈夫だよ。……書類のほうを、ちょちょっとね。上手くやってるから」
「え……」
それ、やばくないですか? 大丈夫ですか?
涼太郎さんの朗らかな笑顔は健在だ。ならまあ、とりあえずは大丈夫なのだろう。
ほかにあてもないし、涼太郎さんに頼るほかないんだから信じて託すしかない。
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