第68話「三人で」
「……ん」
目が覚めると、そこには見慣れない天井があった。
「そうだ……」
昨日、俺は検査のために涼太郎さんの病院まで来ていたんだった。
起き上がり、ほかのベッドを見るも、朱音と晄の姿はない。
「どこ、行ったんだ?」
ぼそりと俺がつぶやくのをどこかで聞いていたのか、一つの足音が近づいてきた。
「渚くん、おはよう」
ひょっこりと顔を出して現れた朱音は、にっこりと笑顔を見せると、俺のベッドの横へと小走りで駆け寄ってきた。
「おはよう、朱音。今、何時?」
「えっと、十時少し過ぎたくらいだよ」
「随分寝ちゃったな」
朱音の服装は長袖無地のグレートップスに、ワインレッドのタイトスカートという落ち着いた雰囲気で、いつにもまして大人びて見えた。
「朱音だけ? 晄は?」
「晄ちゃんは朝、随分早く起きたみたいでね。お父さんのところに行ったと思ったらすぐに戻ってきて、なんだったか、お手伝いをしてくるとかでまた行っちゃったんだよね」
「そっか……」
朝から元気だな、晄は。
それにしても、お手伝いか。
「俺たちも行こう。準備するよ」
「あ、うん。外で待ってるね」
「うん、ちょっと待ってて。すぐに準備するから」
急いでベッドを出て着替えた俺は、部屋を出ると、朱音と共に涼太郎さんのいるであろう院長室へと向かった。
階も同じなため、すぐにドアの前へと到着する。
「お父さん。いる?」
そう言って朱音は、高そうな木製のドアをノックした。
「いるよ。どうぞ」
涼太郎さんの返事を受けた俺たちは、そのまま中へと入った。
「お兄さん! おはようございます!」
今日は、水色のワンピースに身を包んだ晄が、くるりと回って笑顔を見せてきた。
その向こうにある、これまた数百万はしそうなデスクに腰かけた白衣姿の涼太郎さんは、椅子から立ち上がると。
「三人共、そろったね。……じゃあ、今でいいのかな? 幸城渚くん」
「……はい。お願いします」
「わかったよ。朱音と幸城渚くんには、これを見てほしいんだ」
涼太郎さんは、机の上の束ねられた紙を手に取りこちらへやって来て、俺たちに渡してくる。
「お父さん。これは?」
「幸城渚くんの検査結果だよ。朱音にも見てほしいというのが本人の意思……ということで良いんだよね?」
「はい。勿論です」
そう答えた俺は、朱音と目を合わせ頷いた。
朱音も真剣な表情でコクりと首を縦にふると、俺と一緒に数枚の紙がまとめられた検査結果に目を通していく。そこには、晄についての情報との比較が細かく載っていた。
「これは……」
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