第3話「美少女たちの談笑を横目に」

「お兄さんのことなんかよりも、朱音さんっ! その服可愛いですねっ!」


 強引だな。てか、俺のことってなんだよ。


「えっと、そう?」

「はいっ! どこで買ったんですか?」

「えっと、ね……」


 だが、どうやら効果はバツグンだ。

 確かに朱音の服はいつも可愛い。ファンシーなフリフリのものが多く、今日もそういった装いだ。落ちついた暗い赤を基調にしたデザインが、朱音の雰囲気とマッチしている。

 それに、こういう服は体型を露骨に出さない……。出さないはずなんだが……。


 晄は、そうとうに背が小さい。朱音も晄ほどじゃないが、小さいほうだろう。

 165センチしかない俺がそう思うのだから間違いない。

 だからこそ、気になってしまう。実に自然なスレンダーボディーの晄に対して、朱音の胸部はどうしたらそうなるんだというほどに主張しているのだ。


「お兄さんは、私と朱音さんならどっちがいいと思います?」

「え!? あ、いや……どっちと言われても……」


 やはりテンプレロリはそれはそれで魅力がある。だが、体に見合わないそのサイズは背徳感も相まって、また違った魅力があるんだ。


「渚くん? えっと、私も渚くんの意見聞きたい、かな」

「あ、いや……」


 なんだ? なんで急にこんな?


「二人とも落ち着いてよ。俺には優劣はつけられないって……。二人ともかわいいと思うから、うん」

「……お兄さん、そう言う回答は減点なのです!」

「いや、そう言われてもなぁ……」

「渚くんの趣味で良いんだよ?」

「趣味!?」


 趣味って言うか、性癖だよね!? いやいや、それこそ恥ずかしくて言いづらいと思うんですけど……。言われるほうは恥ずかしくないのだろうか?


「お兄さんは、いつもあんなに可愛らしいアニメを見ているのですから、いろいろな服を知っているのではないですか?」

「……え? 服?」

「そうだよ、渚くん。……え?」


 キョトンとした朱音に続き、晄は訝しそうに俺を見てきた。


「お兄さん、いったい何と勘違いしたんですか?」

「いや、いやいや……服だよね、うん。いや、別に、いや……ほら、それこそ好みでしょ。ね? 自分が可愛いと思うのが正解じゃない?」

「お兄さん? なにか誤魔化してません?」

「いや、そんなことはないよ」

「そうですか? ……あ、そう言えば朱音さん!」


 冷汗が出て来そうになった俺を置き去りにして、二人はまたも女子トークに花を咲かせ始めた。

 ……俺を挟んで話されると、なんだか自分が邪魔ものみたいな気分になってくる。こうなることがわかっているから、晄の横には朱音が乗ってほしかったんだが……。


 まあ、こうして話を聞いていると、この一年で晄が随分、地球の生活に馴染んだことがわかるので、まあ良しとしよう。

 流暢に日本語を話す晄の姿になんだか親のような気持ちになりつつ、二人の会話をBGMにしながら、今まさに放送中であろう魔法少女マジカルプリティーの展開を一人で考え始めた。

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