第七章「友達に……」
第82話「地球の青い悪魔」
「魔法少女……」
藤村さんがそう言ったのが聞こえた。だから、俺は前を向く。
「……
大柄のアグレッサーは憎しみのこもった目で俺を睨みつけると。
「
動揺を隠せずにいたアグレッサー達だったが、指示を受けて我に返ったのか、再度俺たちに手を向けてきた。
だが、行動が一瞬遅れたな。チャージから発射までは3秒以上ある。それは、致命的だ。
その隙を突き、俺は一跳びで目の前のアグレッサー達の前へ。中央から三人の首を横薙ぎの手刀で刎ねた。
「ッ!」
その左右にいたアグレッサー二体は防衛本能からか、素早く狙いを俺に移すとビームを撃ってきた。
狙い通りだ。
俺は素早く腰を落とすと、足のばねを使いバク宙の要領で後方に跳び、ビームをかわしつつ朱音たちのいるあたりに着地。
まさに反対側から朱音たちを狙ったビームが着弾しようとしていたそのタイミング。俺は着地と同時に回し蹴りをし、ビームをすべて弾き飛ばした。
遅れて発生した蹴りによる風圧で、近隣の家の窓は割れ、前方五体のアグレッサーも吹き飛ばされないように中腰になり、必死に踏ん張っていた。
さすがのアグレッサーもここまで対応されると思っていなかったのだろう。その表情は、驚愕と恐怖に染まっていた。
冷静な判断を失い、統率力を失った。そうなれば、当然冷静な判断ができなくなる奴が出てくる。
「
拳にブルートを込め、後方から突っ込んできたのは先ほど殺した三体の両端にいたうちの一体だ。ビームがはじかれたことで、拳なら有効打が与えられると思ったのかもしれないが、愚策だ。
迫りくる右ストレートを振り返りざまに難なく右手で受け止めると、そのまま握りつぶす。
「グギャァァァァッ!」
激痛に叫ぶアグレッサーの右手を掴んだまま朱音たちの間を素早く通り抜け、その勢いのまま胴を右足で蹴り飛ばす。あまりの勢いで蹴り飛ばされたアグレッサーの体はねじきれ、その体は一番端に残っていたもう一体のアグレッサーの体へ直撃すると、ぶつけられたアグレッサーの体も、上下が切り離され絶命した。
一方向の脅威が去ったのを確認すると同時に振り返ると、目の前には多数のビームが目の前まで迫ってきていた。だが、十分に防げる範囲だ。
迫りくるビームの弾幕を拳ではじきつつ、再び朱音たちの前へと立ちふさがる。
残る五体の内、撃ってきていたのは中央の三体だった。
「
リーダーと思しき大柄のアグレッサーが慌てたように止めに入るが、一向に攻撃は止まない。
俺はマゼンタ色の血にまみれた拳にブルートを込め、難なくビームを拳で相殺していく。
アグレッサーにしてみれば、残り少ないブルートを勝ち目の薄い状況で消費し続けるのは避けたいだろうが、そんな冷静な判断ができるほど、優秀な部下ではなかったってことだな。
仲間が一瞬にして殺されたという予想外の状況。戦ったのではなく蹂躙されたというのが正しい表現だと思ったことだろう。それだけの差を見せつけられて、正常な判断ができようはずもない。現に撃ち続けている三体の表情は恐怖に染まっているのだ。
この状況下で冷静を保てるほうが異常なんだ。
「ごめんね、私はまだ未熟だから、あなたたちまで助けることはできないの」
……指揮官に同情はするが、これは命の奪い合いだ。
俺が本当に思い描く魔法少女なら……もっと、うまくやれたのかもしれない。
それでも、俺は今の俺にできることを全力でやるしかないから。
中央のアグレッサーが放ってきたビームを左手の甲で受け流した。それが、放たれた最後の一撃だった。ビームを出すことができなくなった三体のアグレッサーは、ブルートの急激な消耗による苦しさからか、ブルート備蓄器官のある胸部をつかみ顔を歪め、よろめいた。
この機を逃す手はない。俺は、一足で距離を詰めると、そのまま回し蹴りで三体のアグレッサーの頭を一気に粉砕した。
頭蓋がはじけ飛び、頭だったものは水風船のように破裂して、蹴り抜いた方向へマゼンタ色の血しぶきが舞う。頭をなくしたアグレッサーの体が、糸の切れたマリオネットのように地面に崩れ落ちる。
それは、戦時中何度となく見た光景だった。
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