第11話「助太刀ヒロイン」
オールバックは手加減を知らないらしく、俺の顔面にけりを入れてきた。さすがにそれは、やばいと思うよ? 傷害罪で訴えちゃおうかな? などと考えつつ俺は、あーこのままだと地面に倒れるなぁ……と思い、さらにそこに金髪が追撃を入れようと足を振り上げてるなぁ……と確認したところで。
「えっ?」
という間抜けな声とともに、金髪が後ろに倒れた。
突然のことに、残り二人が振り返ったので、俺も体を起こして確認すると、そこには絶世の美少女が立っていた。
「藤村さんっ!」
正義の味方が助けに来た時の、モブの気分だ。こんなふうに叫べるシチュエーションは、レアだろうな。
「……」
……なぜか、藤村さんに睨まれました。
「てめぇ、この女……」
状況を把握したのか立ち上がった金髪は、藤村さんの襟元につかみかかろうとしたものの……。
「えっ!」
金髪の右肘付近を藤村さんが素早くつかむと……
「いででででっ」
金髪は慌てたように腕をふりほどき、数歩こちらに下がってきた。
パッと見、ただ握っただけのように見えたが、おそらく腕関節の急所を的確に狙って力を入れたのだ。
「あたしに掴みかかろうとするとか、命知らずね」
「ふざけんなっ! 可愛いからっていい気になるなよ、女の分際でっ!」
そう言って続いたのはチャラ男くん。直線的なパンチを繰り出そうと猛牛のごとく突っ込んで行った結果、藤村さんに横ステップで難なくかわされ、勢いを殺しきる前に背中を強く蹴り飛ばされていた。
「がっ!」
チャラ男は間抜けな声を出すと、そのまま勢いよく顔面から床にダイブしていく。
……バカな奴だ。最初の対処を見たって、素人じゃなさそうなのに。
「はぁ……」
あきれたようにため息をついた藤村さんは、二人を睨みつけ、
「まだやる?」
うん、最高にかっこいい。
「チッ!」
藤村さんの言葉に舌打ちしたオールバックは、二人を連れてそそくさと逃げて行こうとしたが……。
「待ちなさいっ!」
「なんだよ藤村ッ!」
「目障りだから、二度とこういうことしないで。……次は容赦しない」
藤村さんの言葉に、オールバックは怒り心頭といったように睨みつけていたが、
「くそがっ……」
捨て台詞を吐いて、去っていった。……本当に暇な奴らだよな。
「ありがとう、藤村さん。助かったよ」
ゆっくりと立ち上がりお礼を言うも、藤村さんは俺のことも睨みつけてくる。……軽蔑の眼差しがご褒美になったりは、しないんだけどな。
「あなた、名前なんて言ったかしら」
「あれだけアピールしてたのに、名前も認知されてなかったとは……」
何とも悲しいです。
「あたし、鬱陶しい人としか認識してないから。まあ、じゃあ名前はなんでもいいわ。あなた、されるがままなうえに、へらへらしてて……なんになるの?」
「いや、それは……」
何にもならないでしょうよ。とは思った。もっと言うなら、俺が何かをしたところで、そう大きく変わることはないとも思っている。
けど、そんなことを口にできないほどに、藤村さんの表情は真剣だった。
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