81 盗賊狩りの戦果

 オートマタの腕の中でリーフが眠ったのがわかった。

 ステータスの状態異常に睡眠が追加されたから、一発でわかる。

 疲れただろうし、今は安らかに眠るがいい。


 その間に、リーフの手によってグチャグチャにされた盗賊どもの死体を還元。

 リーフの攻撃力だと、ミスリルソードの力を以ってしても一撃では殺せなかったから、結果として全員が何度も何度も刺された末に死ぬという、拷問みたいな結果になったんだよね。

 まあ、どう考えても自業自得だけど。


 それはともかく。

 盗賊を皆殺しにした事によって、臨時収入のDPと経験値が入ってきた。

 盗賊の人数は20人ちょい。

 大体、オークと同じくらいの数だった。

 でも、手に入ったDPはオークの比じゃない。

 やっぱり、強い奴を殺すと潤う。


 と言っても、本当に強かったのは親玉だけで、残りはそこそこ止まりだったけどね。

 親玉以外で一番強いのでも、平均ステータス1000もいかなかった。

 それでも全員が戦闘職だったから儲かったけど。

 しかもこれ、労力対効果を考えると、村とか街とか滅ぼすより遥かに楽で儲かる。

 私、学んだ。

 一番楽で儲かるのは、弱いのを何百人と殺す事じゃなくて、そこそこ強いのを何十人か狩る事なんだって。

 この教訓は次回以降に活かそう。


「さて」


 戦果確認も終わったし、成り行きで放っちゃった火もガーゴイル達の水魔法で鎮火した。

 そして、今回使ったモンスター達の送還も完了。

 もう、この場に用はない。

 戻ろう。


 眠ったリーフをオートマタに背負わせ、森の出口を目指す。

 ちなみに、リーフの格好は盗賊どもの返り血で酷い事になってたから、脱がせて体をお湯とタオルで拭いて、新しい服を着せておいた。

 脱がせた服は、前に毒対策で造ったダンジョンの洗濯部屋に直送。

 ゴーレムにゴシゴシと洗わせる。


 そんなこんなで、しばらく歩けば、オーク退治の依頼を出した村まで辿り着いた。

 で、とりあえずここで宿を一泊借りる。

 時刻はもう遅いし、今から街まで歩こうとしたら確実に夜になる。

 それに、リーフを背負ったまま長距離を歩く気はない。

 急ぐ理由もないし、街に戻るのは明日でいいだろう。


 ちなみに、先生ゾンビのテレポートで戻るのはなしだ。

 あれを多用したら怪しまれるだろうし、そもそも先生ゾンビは既に首都へ向かわせちゃったから、今は動かせない。

 ダンジョン領域の外だと命令も届かないしね。

 まあ、首都の近辺に到着したらテレポートでダンジョンに戻ってくるように命令してあるから、あと数日もすればまた普通に使えるようになるだろうけど。


 そういう訳で、今日は宿屋にリーフを寝かせて、私も休む。

 リーフをベッドの上に寝かせ、オートマタも隣のベッドに寝かせ……る前に、オートマタの服も交換しておいた。

 至近距離で盗賊をザクザクしてたリーフ程じゃないけど、オートマタもそれなりに返り血を浴びてたから。


 その後、改めてオートマタをベッドに寝かせ、いつものように、何かあったらアラームが鳴るように設定する。

 そして、オートマタ視点のモニターを閉じて私も寝ようと思った時。


「ご主人……様……行か……ないで……」


 ふと、うなされてるリーフの顔がモニターに写った。

 さっきまでは大丈夫だったくせに、オートマタが離れた途端にこれとは。

 やっぱり、色々あって精神が弱ってるらしい。


 仕方ないから、オートマタをリーフと一緒のベッドに移動させて、胸に抱いてやった。

 そうすると、リーフは穏やかな寝顔に戻る。


「……って。何やってんだろ、私は」


 そこまでやって、私はふと我に返った。

 そして、自分の行動に呆れる。

 いつから、私はこんなに甘い人間になったんだか。


 まあ、でも、別にいいか。

 今回の最大の戦果は、リーフからの好感度だろうし。

 復讐に手を貸してやって、精神が不安定になったところを優しくしてやって。

 ここまですれば、それなり以上にリーフの心を掴めた筈。

 もしかしたら、依存の領域にまで落とせたかもしれない。


 前にも考えたけど、好感度の高い奴隷は貴重だ。

 私の為に自発的に行動してくれる奴なんて、そうそう手に入らない。

 リーフは、そんな貴重な手駒であり、その好感度は高ければ高い方がいい。

 オートマタの添い寝程度で上げられるなら安いものだ。

 まあ、本体なら絶対にやらないけど。


 そうして、自分の行動の正当性を確認してから、今度こそオートマタ視点のモニターを閉じる。

 あとはいつものように、ご飯食べて、お風呂入って、寝るとしよう。


 こうして、初の冒険者としての仕事は終わったのだった。

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