101 敗北
「あー! 負ーけーたー!」
私は敗北という結果にふて腐れてベッドにダイブし、そこで足をバタバタさせながら大声で叫んだ。
少しスッキリしたような気がする。
「それにしても、まさか瞬殺されるなんて……」
あの強さは反則だと思う。
あんな満身創痍の状態だったくせに、吹っ切れて人を殺す覚悟を決めた途端に、速攻で全滅させられるとか。
最後、至近距離に近づいてきた時、鑑定に成功したけど、あの状態でのステータスは軽く10万を超えてた。
おまけに『
実際の戦力差は、ステータス差以上だったんだろうなー。
なんにしても、今回の件でハッキリした。
あのレベルの怪物相手に、圧倒的格下が何人集まっても無駄だって事が。
正直、もう少し何とかなると思ってた。
相手は怪物とはいえ、傷だらけの満身創痍。
対して、こっちにはステータス万超えの化け物が複数。
人質兼肉壁が機能しなくなっても、充分に勝ち目はある。
それが私の見解だった。
ところが、蓋を開けてみれば満身創痍のボロ雑巾一人に、こっちの化け物軍団が瞬殺されるという悲劇。
そんな大損害を受けて、手に入ったのは多少のDPと経験値だけ。
負けだ。
敗北だ。
完全敗北だ。
クッソ悔しい。
「う~~~~~~~~~~!」
枕に顔を埋めて唸る。
唸り声に乗せて色んな感情を吐き出し、少し落ち着いた。
落ち着いたところで、今回の敗因を考えよう。
今回の敗因。
それは多分、圧倒的な格上相手に、格下だけで挑んだ事だと思う。
例えるなら、ネズミの群れでライオンに挑んだみたいな話だった。
……いや、さすがにそこまでのレベル差ではないか。
訂正しよう。
中型犬の群れで野生の狼に挑んだみたいな話だった。
こんな感じで、ある程度の実力差があると、数の暴力は意味をなさないって事が実感できたのは収穫かな。
数の暴力が有効なのは、両者の実力が近い場合だけだ。
中型犬が群れても、野生の狼には勝てない。
一応、フェンリルやアラクネみたいに強い戦力も何体かいたけど、それだって中型犬の群れに何匹か大型犬が混ざった程度。
野生の狼には勝てない。
なら、どうすれば勝てたのか。
簡単だ。
魔王に来てもらうべきだった。
これなら、野生の狼を相手に、獰猛なライオンを味方につけたに等しい。
勝ち確である。
でも、それを言ったら終わりだ。
だって、今回は魔王が来られなかったからこそ、こうなった訳だし。
議題はあくまでも、今回動かせた戦力でどうすれば勝てたかって話だから、この結論は却下。
あとは、中ボス部屋かボス部屋を使う事。
あそこにいるドラゴンゾンビや、リビングアーマー先輩IN私、それと大量のトラップが戦線に加わっていれば勝てたかもしれない。
中型犬の群れに、訓練されたシベリアンハスキーを投入するくらいの戦力アップにはなっただろう。
シベリアンハスキーが死ぬ気で狼を食い止め、その隙に大量の中型犬と少数の大型犬が一斉に狼に噛みつく。
うん、勝てたかもしれない。
まあ、その場合はダンジョンに自分から神道を呼び寄せる事になってたからダメだけど。
だって、ダンジョン内での敗北=私の死だ。
そんな危ない橋を渡るつもりはない!
私は、引きこもりに徹してたからこそ、負けてもこうして生きていられるのだ。
オートマタとゾンビ軍団を失ったのは痛いけど、私本体は傷一つ付いてない。
ベッドでゴロゴロしながら反省会ができる。
確かに、危険を冒せば神道を倒せたかもしれない。
でも、危険を冒したら死んでたかもしれない。
だから、この選択に後悔はない。
「でも、まあ、ボス部屋も一つの手ではあったよね」
禁じ手だけど。
それでも、考察としてなら考える価値ありかな。
結論。
勇者や魔王みたいな怪物に勝つには、最低限、怪物を止められるだけの戦力が必要。
そうなると、リビングアーマー先輩の強化が急がれる。
今のペースだと、リビングアーマー先輩が完全体になるまで、あと一ヶ月ちょっとってところかな。
できるだけ急ごう。
それと並行して、今回失った戦力も補充しないと。
ただ、幸いなのは、ダンジョンの防衛だけを考えるなら充分な戦力が残ってるって事。
ドラゴンゾンビもリビングアーマー先輩も無事だ。
ついでに、爺ゾンビとゴブリンゾンビも。
今回のはかなり痛い損失ではあった。
でも、致命的ではない。
戦力の補充は急ぎの案件ではあるけど、DP使ってまで大慌てでやらなきゃって程じゃないのが救いだ。
でも、それは別としてオートマタはすぐに新しいのを造っておこう。
外で活動する手段がないままなのは普通に困る。
という訳で、前と同じくらいのDPを使って、前と同じ性能のオートマタを造った。
かなりの出費だったけど、今の私からすれば無理のない金額。
セレブになったものである。
ちなみに、この際だからオートマタの見た目も変えておこうかと思ったんだけど、ちょっと思う事があってやめた。
神道に対する抑止力にもならないし、多分、すでに手配書が出回ってるし、やっぱり私の顔の人形が何かされるのは不快だしで、オートマタのデザインを私のままにしておくメリットはもうない。
それどころか、デメリットだらけ。
それでもデザインを変更しなかった理由は、アワルディア共和国の議員どもだ。
奴らにはまだ利用価値がある。
戦場に連れて行った老犬議長は死んだかもしれないけど、他の議員は調教済みのままで、まだ首都にいる筈。
なら、奴らの手綱を握っておけば、私はまだ国を思うがままに操れる。
でも、奴らに対する調教ゾンビの命令は『
ここでデザインを変えた場合、奴らに対しての命令権が失われる可能性がある。
その場合は、また調教ゾンビに命令を上書きさせればいいだけなんだけど、議員の数って地味に多かったから、その作業は普通にめんどくさい。
それに、ステータス的にはクソ雑魚ナメクジな調教ゾンビを連れ回して破壊されたらシャレにならないし。
そういう訳で、オートマタのデザインは結局元のままになりました。
変わったところといえば、また仮面を取り替えたくらいだ。
とりあえず、これでオートマタの作成は完了。
次にやるべきなのは、魔王への報告かな。
敗戦報告は気が重いけど、黙ってる訳にもいかないでしょう。
私は、憂鬱な気持ちで通信部屋のマモリちゃん人形を起動させた。
私、この報告が終わったら、リーフに無事を報せるんだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます