39 マーヤ村
「さあ、着いたぜ! ここがマーヤ村だ!」
リックとやらに案内されて歩く事、僅か10分くらい。
オートマタはこの世界で初めて見る人間の集落、マーヤ村とやらに到着した。
……こんなに近かったのか。
ウチのダンジョンから殆ど離れてないぞ。
どうりで、ポンポン侵入者が来ると思った。
この村から森に入れば、ほぼ確実に見つけられる位置にあるもの、ウチのダンジョン。
ここはさしずめ、ご近所さんだ。
あの、噂話で引きこもりのメンタルを破壊する危険生物どもだ。
よし、潰そう。
決行は夜だ。
「ちなみに、方向音痴のあんたの為に言っとくと、ここから北の方角に半日も歩けば、そこそこデカイ、ボルドーって街があるぜ。
参考にしてくれよ」
「なるほど」
良い事を聞いた。
村を潰した後は、その街に向かえばいいのか。
「さて! 村に着いたし、早速、商売開始といくか!
お、そうだ、あんたも見ていくか? 助けてくれた礼に、なんかプレゼントするぜ」
「……なら、見る」
異世界の商品には興味がある。
まあ、多分、不死身ゾンビの
あいつ、色んな物を自分で保管してないと落ち着かなかったのか、色々と魔道具の中に詰め込んでたんだよね。
もちろん、お金とかも。
そして、リックとやらは適当に、そこそこ人通りのある場所にやって来て、リュックサックの上に乗ってたシートを広げた。
「よっしゃ! 開店準備だ!」
その上に、やたらと大きいリュックサックから取り出された商品が並んでいく。
剣、薬、地図、剣、ポーション、剣、変な石ころ、剣、剣、ナイフ……
「武器が多い」
「そりゃな。この村は物騒って話だから武器を売りに来たんだ。需要と供給ってやつだぜ」
……意外と考えてた。
いや、考えない商人なんていないか。
いたとすれば、それはとてつもない馬鹿だ。
そして、商品を片っ端から鑑定してた時、ふと変な石ころの鑑定結果が気になった。
このアイテムは……マズイかも。
ーーー
鑑定石
使用者のステータスを開示する事ができる。
ーーー
「お! お客さん、お目が高いね! そいつは鑑定石! 本来は冒険者ギルドとかにしかない貴重品だよ!」
オートマタの視線を追ったのか、リックとやらが饒舌に解説し出した。
この体はオートマタであり、鑑定されれば当然『オートマタ Lvーー』と表示される。
つまり、私にとってステータスを覗かれるというのは致命的なのだ。
まあ、この鑑定石は使用者のステータスを開示するって効果だから、自分から使わなければバレないとは思う。
でも、これとは違う種類の、人のステータスを強制的に開示させるアイテムもあるかもしれない。
注意しておこう。
それと、冒険者ギルドにはこれがあるらしいので、冒険者になるのはやめよう。
冒険者っぽい奴らがいたんだし、冒険者ギルド的な物もあるんだろうなーと思ってたから、ファンタジーのテンプレにあやかって、冒険者になるのもアリかなと思ってる私もいたからね。
公的な身分証明があれば動きやすくなりそうだし。
でも、こんなアイテムが冒険者ギルドに置いてあるなら、この案は却下。
冒険者登録の時にステータスを見せろと言われた時点で詰みだもの。
君子、危うきに近寄らず。
冒険者ギルドはガン無視の方向でいこう。
「あー、その、気に入ったんだったら悪いんだけど、それは偶然手に入れただけの本当に貴重な品だから、いくら恩人でも、さすがにタダでプレゼントって訳にはいかねぇんだわ……。
できれば別の物にしてくれると助かる」
と、私がオートマタの視線を鑑定石に固定させたまま熟考してたら、何を勘違いしたのか、リックとやらがそんな事を言い出した。
とりあえず、勘違いは訂正しておくか。
「別にいらないからいい」
「そっか。なら、何にする?」
言われて、改めて並べられた商品を見る。
大体は今持ってる物と同じ、あるいはその下位互換の物しかない。
侵入者どもは、意外と高級な装備を落として逝ったらしい。
ここで欲しいと思える物は特に……いや、これは良いかも。
私はオートマタの指で、その商品を指差した。
「これは?」
「ん? ああ、それは見ての通り仮面だな。冒険者ってのは荒事だから、たまに人には見せられない傷を顔に負う奴もいる訳だ。
で、こいつは、そういう奴らの為の装備だな」
ほう。
つまり、街中で仮面をつけた冒険者がいても、そこまで不審には思われないのか。
良い事を聞いた。
「じゃあ、これちょうだい」
「え? そんなんが欲しいのか……って、ああ。あんた美人だもんな。
悪い虫避けには、ちょうど良いのか」
わかってるじゃないか、
という事で、リックとやらから一つの仮面を貰った。
シンプルなデザインの白い仮面だ。
中二病的には、もうちょっと凝ったデザインのが欲しいところだけど、これはこれでカッコいいからよし。
早速、装備してみる。
さっきから通行人の男の視線が鬱陶しかったしね。
そして、モニターで映す場所をオートマタの正面に移動させ、鏡の代わりとして使う。
うん。
カッコいい。
「毎度あり! なあ、何なら店が終わった頃に一緒に飯でも……」
「もう行く」
「あ……そっか。それじゃあ、またな!
命を助けてくれた恩は絶対に忘れないぜ! またどこかで会おう!」
そうして、私はリックとやらと別れ、とりあえず村の中を歩き回って地形を把握した後、宿屋っぽい所で夜までオートマタを待機させた。
同時進行で、ダンジョンの準備を進めながら。
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