4 ステータス

 さて、いつまでも座り込んでいる訳にもいかない。

 何故かクラクラとする頭を抑えながら立ち上が……ろうとしたけど、めんどくさかったので座ったまま状況を確認する。


「鑑定」


 まずは、ダンジョンマスターの能力の一つ、鑑定を発動させる。

 様々なラノベでお馴染みのこの能力は、大体様々なラノベで出てくるのと同じ効果がある。

 すなわち、対象のステータス・・・・・を見る事ができるのだ。

 まあ、ダンジョンエリア内限定だけど。


 それを使って、まずは鎧を鑑定する。


ーーー


 リビングアーマー Lvーー


 HP 499/500

 MP 0/0


 攻撃 300

 防御 450

 魔法 0

 魔耐 450

 速度 150


 スキル


 なし


ーーー


 ああ。

 この鎧、リビングアーマーだったんだ。

 割りと色んな作品に出てくる、結構メジャーなモンスターだ。

 動く鎧。

 一応、メニューに載ってるリビングアーマーの情報を閲覧。


ーーー


 リビングアーマー


 動く鎧。

 意思を持たない無生物系モンスター。

 与えられた命令を忠実に遂行する。


 お値段 4000DP


ーーー


 おお!

 意思を持たない!

 素晴らしい!

 人間不信の私にはぴったりのモンスターだ!

 お値段って言い方がちょっと気になるけど、そんな事は些細な問題!


 とりあえず、リビングアーマーの詳細な情報を鑑定してみたら、無生物系のモンスターにはLvがないから成長しないし、HPも自動では回復しない事がわかった。

 めっちゃ慌てたけど、すぐに、そこはDPで解決できるとわかって一安心。


 早速、残ってた30DP(多分、ゴブリン一匹10DP、やっす)を使って、リビングアーマーを修復した。

 ダメージが少なかったからか1DPで直ったけど、残り29DPって半端だから、もうリビングアーマーの強化に使っちゃう事に。

 防御が20上がった。

 ……上昇の仕方が今一よくわからない。


 しかし、リビングアーマー、お値段4000DP?

 ウチにそんな蓄えはなかった筈だけど。


 リビングアーマー……いや、ここは命の恩人ならぬ恩鎧に敬意を込めて、リビングアーマー先輩と呼ばせてもらおう。

 リビングアーマー先輩の召喚前にあったのが、多分、自然回復で手に入ったと思わしき12DP。

 今ある(あった)30DPは、ゴブリンを殺して手に入った分だから除外するとして、

 つまり、12DP+私が注入した魔力をDPに変換した分。

 その全てを使いきってリビングアーマー先輩を召喚したんだろうけど、それだと私が3988DP分の魔力を一気に注入した事になる。

 だとしたら、私の魔力量、ちょっと化け物過ぎじゃない?


 とりあえず、私のステータスも鑑定してみる。

 これに関しては鑑定機能を使うまでもなく、「ステータス」と唱えるだけで見れた。


ーーー


 ダンジョンマスター Lv2 

 名前 ホンジョウ・マモリ


 状態異常 疲労


 HP 18/22

 MP 12/4400


 攻撃 6

 防御 5

 魔力 1050

 魔耐 11

 速度 8


 ユニークスキル


 『大魔導』


 スキル


 なし


 称号


 『勇者』『異世界人』『誤転移』


ーーー


 待て。

 色々、待て。

 ツッコミどころが多すぎる。


 まず、Lvがいきなり2になってる。

 でも、まあ、これは然したる問題じゃない。

 多分、さっきゴブリンどもをリビングアーマー先輩が屠殺した影響だろう。

 リビングアーマー先輩と、パーティー的な何かを組んでた的な扱いになったとか、そんな感じじゃない?

 知らんけど。


 状態異常の疲労は……うん、心当たりしかない。

 納得と言わざるを得ない。


 HPの量は普通、なんだろうか?

 比較対象がいないからわかんないけど、まあ、Lv2のステータスと言われれば納得できる数値ではある。

 それは他のステータスも同様。


 ただし、MPと魔力。

 テメーらはダメだ!


 特にMP!

 何、4400って!?

 HPの200倍なんですけど!

 おかしい。

 これは絶対おかしい。

 いや、ある分には構わないし、むしろウェルカムなんだけど、異常な事っていうのは、それだけで精神を疲弊させるのだよ。

 あ……心なしか、状態異常の疲労が濃くなった気がする。


 そ、それはともかく。

 こうしてMPがごっそり減ってるって事は、多分、いや、間違いなく、ダンジョンコアに注ぎ込んだ魔力ってMPの事だと思う。

 試しに、残ってたMPを全部注いでみたら、DPが12ポイント増えた。

 どうやら、1MP=1DPらしい。

 予想はできた事だけど。


 で、次に、ユニークスキル『大魔導』とかいうやつ。

 ……字面からして、多すぎるMPと魔力はこのスキルが原因な気がしてならない。

 とりあえず、詳細を表示!


ーーー


 大魔導


 MP、魔力のステータスを大幅に上昇。

 魔力関連スキルの獲得熟練度を大幅に上昇。


ーーー


 ユニークスキル


 選ばれた者のみが獲得できる特殊なスキル。

 生まれついてのものが殆どであり、後天性のユニークスキルはほぼ存在しない。


ーーー


 やっぱり、犯人は大魔導だった。

 だが、グッジョブ。

 なんでこんなもんを私が持ってるのかわからないし、得体の知れないものは、なんか嫌だけど、

 それでも、このスキルのおかげでリビングアーマー先輩を召喚できたと言っても過言ではない。

 敬意を込めて、大魔導先輩と呼ばせていただこう。


 そして、ユニークスキル。

 選ばれた者のみが獲得できるって、何、その中二設定。

 中二心が疼くわ。

 私だってヒッキーの端くれ。

 暇な時間でネット小説は読み漁った。

 中二病くらい、標準搭載してるわ!


 まあ、私が天才かもしれないという素晴らしい事実は置いといて、次に行こう。

 次は称号。

 『勇者』と『異世界人』と『誤転移』。

 多分、これが一番のツッコミどころにして、全ての元凶だと思う。


ーーー


 称号


 その人物に付与される特殊ステータス。

 持っている者は非常に少ない。


ーーー


 勇者


 神の選別によって異世界から召喚され、人類の為に魔王と戦う事を宿命づけられた者達に与えられる称号。

 この称号の持ち主に、ユニークスキルを付与する。

 この称号の持ち主に、成長補正を付与する。


ーーー


 異世界人


 異なる世界から訪れし者達に与えられる称号。

 この称号の持ち主に、この世界の文字、言語を理解する能力を付与する。


ーーー


 誤転移


 本来の召喚場所へと召喚されず、勇者としての使命を受ける事ができなかった、はぐれ勇者に贈られる称号。

 この称号を持つ者は、勇者として扱われない。


ーーー


 うん。

 案の定、ツッコミどころの山だ。

 

 まず、勇者の称号。

 魔王と戦う事を宿命づけられるって何やねん?

 それ、ただの道具か兵器じゃないの?

 というか、私がユニークスキル持ってるのは、この称号のおかげかい。

 私が天才だった訳じゃないのね。

 凄まじくガックリきた。

 というか、魔王って何?

 神って誰?


 異世界人の称号については……まあ、妥当。

 あえて言うなら、この称号のせいで、ここが異世界だという事が確定したくらいか。


 で、最後に誤転移。

 これに関しては……正直、助かったと言った方がいいのかもしれない。

 勇者の称号の説明文を見るに、もし誤転移せずに普通の勇者として召喚されていた場合、私は大大大っ嫌いな人類を守る為に、無理矢理命懸けで戦わされてた可能性が高い。

 そう考えれば、この状況はまだ良かったと思える。

 私は自由だ。


「はぁ……なんか疲れた」


 いろんな情報を一度に詰め込もうとしたら凄い疲れた。

 一度疲れたと思うと、今までの疲れも一気に襲ってくる感じがして、余計辛い。

 起きてからそんなに経ってないけど、無性に寝たいわ。

 この眠気は、疲労のせいかもしれないし、もしかしたらMPが尽きてる影響もあるのかもしれない。


 とにかく、こんな疲労状態じゃ、まともに今後の事を考える事すらできないだろうし、リビングアーマー先輩に警備を任せて、一旦寝よう。

 ……寝心地悪いなぁ。

 何せ、岩壁の上に直だもん。

 せめて、布団ないかなぁ。


 とか思ってたら、召喚可能なアイテムの中に布団と、ついでにパジャマがあった。

 二つ合わせて、30DP。

 足りない。

 さっきのDP、リビングアーマー先輩の強化に使うんじゃなかったかもしれない。


 なんとかならないかと考えて、ふとゴブリンの死体が目に入った。

 ……そういえば、あれってアイテム扱いになるのかな?

 だとすれば、還元してDPにできるかもしれない。


 結論から言うと、できた。

 ゴブリンの死体三つと、持ってた棍棒や腰布を全部還元したら、ぴったり30DPになった。


 なので、早速、血塗れの服を脱いで、ついでに汚れてない部分で体にかかった血を拭いてから(カピカピで中々落ちなかった)、パジャマに着替えて布団に入り、ようやく少しだけ落ち着いて眠れた。


 お休みなさい。

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