5 将来設計
寝て起きたら、大分、気分が落ち着いて、気力が回復してきた。
やっぱり、人間一回寝ると落ち着くっていうのは本当だ。
今の私が人間と言えるかどうかは微妙なところだけど。
ステータスの種族覧っぽい所に、ダンジョンマスターって出たし。
「ステータス」
とりあえず、状態異常の疲労が取れてるのか確認する為に、ステータスを開いた。
ダンジョンのメニューと似たような透明なディスプレイが目の前に現れ、そこに私のステータスが表示される。
しかし、そこにはちょっと予想外の表示がされていた。
ーーー
ダンジョンマスター Lv3
名前 ホンジョウ・マモリ
HP 24/24
MP 5000/5000
ーーー
Lvが一つ上がっていた。
というか、MPの上昇率凄いな。
何故かと思って洞窟の中、いや、ダンジョンの中を見渡せば、ゴブリンの死体が五つくらい転がってた。
そして、返り血にまみれて佇むリビングアーマー先輩の姿が。
倒してくれたらしい。
メニューを確認すれば、ちょっとだけDPが増えてる。
早速、ゴブリンどもの死体を還元し、そのDPを使ってリビングアーマー先輩の損傷を直した。
大したダメージはなかったから、3DPくらいで完治したけど。
リビングアーマー先輩、強い。
……でも、襲撃されたのに寝こけてたっていうのはマズイな。
今度から、何か対策しよう。
「さて」
最低限の確認を終えてから、私は考え始めた。
これからどうするのか。
私はどうしたいのか。
そういう事を。
最初は、ここで適当に野垂れ死んでもいいと思ってた。
パパもママも死んじゃったし、こんな所に異世界転移した以上、もう私の
戻れたとしても、あそこは凄惨な殺人事件が起こった現場だ。
今までのように、ひっそりと引きこもりを続ける事はできないだろう。
あそこは、私の世界の全てだった。
つまり、私は世界の全てを失ったのだ。
もう、私に生きる気力はない。
生きてる意味もない。
でも、さっきゴブリンどもに襲われて気づいた。
私には生きる気力がなくて、でも、死ぬ勇気もなかったんだと。
ゴブリンどもに襲われた時、死ぬのが、殺されるのが、乱暴されるのが凄く怖かった。
いや、ゴブリンの時だけじゃない。
ストーカーの時も同じだ。
だから私は、必死であいつを刺し殺した。
今だってそうだ。
舌を噛みきるなり、岩壁に頭ぶつけるなり、リビングアーマー先輩にダンジョンコアを破壊してもらうなりすれば、死ぬ事はできる。
なのに、私にはそれを実行する勇気がない。
結局、私は自分から死ぬ事なんてできないのだ。
辛い事から逃げて、引きこもりの道を選んだ私には。
だったら、どうするのか。
答えは最初から決まってたのかもしれない。
だから、ステータスなんて確認した。
生きる為の手段を模索した。
結局、ダンジョンコアの思惑通りという訳だ。
「私は……ダンジョンマスターになる」
ダンジョンマスターになって、難攻不落の大迷宮を造って、そこを新しい聖域にしよう。
何人たりとも攻略できない。
ストーカーだろうと、ゴブリンだろうと、勇者だろうと、魔王だろうと、私の元までは辿り着けない、辿り着かせない、鉄壁の大迷宮を造ろう。
そして私は、そんな大迷宮の奥底に引きこもる。
もう二度と、あんな怖い思いをしなくて済むように。
私は、引きこもり道を極めてやる。
「よし! そうと決まれば、早速、ダンジョンを造ろう!」
そうして私は、再びメニューを開いてダンジョンの強化を始めた。
全ては、私の安寧なヒッキー生活の為に。
私の安寧を脅かす者は、誰であろうと……
「━━皆殺しにしてやる」
その時、私は嗤っていた。
狂ったような笑顔を浮かべながら、私はダンジョンを造っていく。
私の為の。
私の為だけの楽園を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます