とある勇者達の異世界召喚
「今日も本城さんはお休みですか……」
月曜日のホームルーム。
出欠を取った担任の教師である『
この先生は良い人だ。
普通に生徒達に親身で優しいし、
それに、教師としての責任問題とか、本城さんへの個人的な感情とかじゃなくて、一人の人間として、本心から引きこもりになった本城さんを心配している。
人間観察のプロを自称する俺にはよくわかる。
ついでに、どう見ても俺達より年下にしか見えない合法ロリってところも、俺的にポイント高い。
このクラスの、否、学校中のアイドルだった『
最近になって、ようやくその大事件による衝撃も落ち着いてきた。
それくらい、本城さんが他者に与える影響は凄まじかったのだ。
アイドルなんて目じゃない凄まじい美貌!
守ってあげたくなるような、儚い雰囲気!
艶々の黒髪に、ボンキュッボンのナイスバディ!
思わず、遠くからの人間観察を至上とするこの俺が、血迷ってラブレターを書きそうになるくらいに魅力的な人だった。
そして、そんな感じで彼女に魅了されたのは俺だけじゃない。
男子の大半は本城さんに惚れていた。
あわよくばという思いを抱かなかった奴などいないだろう。
逆に、女子は本城さんを蛇蝎の如く嫌ってたね。
男の嫉妬は見苦しいってよく言うけど、女の嫉妬はもう怖いとしか言えないわ。
それくらい、本城さんへの陰湿なイジメは、目を覆いたくなるレベルだった。
男子が肉壁になったから、本城さんへの物理的ダメージはそれ程でもなかったけど、精神的ダメージまでは防げない。
しかも、男子が庇うせいで、余計に女子の反感を買ってイジメが終わらないという。
俺には、本城さんの目がどんどん濁っていくのが手に取るようにわかった。
なんとかしようにも、無力なボッチでしかない俺には何もできなかったけど。
その内、ストーカーとかも出現して、一年の頃には少年院にぶち込まれる筋金入りの変態まで現れるという世紀末っぷり。
そりゃ、引きこもりになっても仕方ないわ。
むしろ、そんな状況でも、二年の頭くらいまでは学校に来てた本城さんのメンタル凄ぇというレベル。
「守……心配だな」
ふと、そんな呟きが聞こえた。
一番後ろの席という、人間観察に最適なベストポジションを手にした俺には、今の声の主が誰なのか、手に取るようにわかる。
ボソリとそう呟いたのは、クラス1のイケメンボーイ『
イケメンな上に、成績優秀、スポーツ万能、おまけに人当たりも良くて正義感が強いという、完璧を絵に描いたような奴。
その正義感の強さで、よく本城さんを庇ってたわ。
まあ、こいつも他の男子の例に漏れず、本城さんに惚れてたんだけどな。
最初の方はそうでもなかったみたいだけど、イジメられてる美少女をイケメンの自分が助けるという、まるで少女漫画みたいなシチュエーションが続いた結果、神道もまた本城さんに魅了された。
それでも、恋心よりも正義感優先で本城さんを助けてたのは凄いと思ったけど。
本城さんには通じてなかったけどな!
しかも、イケメンで女子にモテる神道が積極的に本城さんを庇ってたせいで、女子の嫉妬に拍車をかけていたという……。
報われねぇ。
「そうね」
「だな」
そして、神道の呟きに同意したのは、眼鏡をかけた文系の美少女と、体育会系のスポーツイケメン。
『
二人とも神道の幼馴染で仲良し三人組……に見えるが、実際は結構ドロドロの三角関係を形成していらっしゃる。
魔木は神道の事が好きで、剣は魔木の事が好きなのだ。
で、渦中の神道は二人の気持ちに気づかずに、あろう事か本城さんに惚れていたと。
三角関係っていうか、本城さんも入れたら四角関係か。
昼ドラもビックリのドロドロっぷりですよね。
勝手に巻き込まれた本城さんは気の毒としか言えない。
最悪なのは、魔木もまた嫉妬に狂って、陰で本城さんをイジめてた事だよ。
しかも、剣はそれを知ってて見て見ぬ振りをした。
つまり、今の神道に同意した心配の言葉は、薄っぺらい嘘という事だ。
ちなみに、神道は何も気づいていない。
……彼は案外、馬鹿なのかもしれない。
と、そんな感じで人間観察をしていた時、唐突に
教室の床が、突然発光したのだ。
眩し!?
「きゃあ!?」
「な、なんだ!?」
眩しさを我慢して目を開けてみると、教室の床には、光で出来た魔法陣みたいな模様が描かれていた。
クラスメイト達が驚愕の声を上げる中、魔法陣がドンドンと輝きを増していく。
「落ち着いて! 皆、落ち着いてください!」
ソラちゃん先生が必死に声を張り上げるけど、どう見ても本人が一番混乱してる。
でも、他人が混乱してるの見ると、案外落ち着くって本当らしいな。
俺はちょっとだけ冷静になったよ。
そして、そんな、ちょっとだけ冷静になった頭で考えてみる。
この展開は……どう考えても……
「異世界召喚……なのか?」
俺がそんな呟きを漏らした瞬間、魔法陣が一際強く発光し、視界が真っ白に染まった。
もう目を開けていられない。
そうして俺は、俺達は、魔法陣の光に呑み込まれた。
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