6 本格始動

 さて、ダンジョンを造るに当たってまずやるべき事は何か。

 階層を造る事に決まってんだろ。

 改めて考えるまでもない。

 むしろ、これがわからない奴がいたら、そいつの頭を疑う。


 何せ、私の新たなる聖域こと、ダンジョンは未だにちょっと広めの洞窟くらいのスペースしかないのだから。

 これをダンジョンとは呼べない。

 ただの洞窟だ。

 ダンジョンコアと美少女とリビングアーマーがいるだけの洞窟だ。

 よって、私の最初の仕事は新しい階層を造る事……と思ったんだけど、いきなり問題にぶち当たった。


 DPが足りない。


 まさかの資金不足。

 階層の追加に必要なDPは5000。

 私の全MPをDPに変換すれば、ギリギリ足りなくはない。

 ただし、それをやってしまうと、他の強化が一切できなくなる。

 階層の追加は、本当に階層を追加するだけだ。

 だだっ広い空間を造るだけ。

 迷路もない、トラップもない、モンスターもいない、ただ広いだけの空間を造る事しかできない。

 これで、どう防衛しろと?


 という訳で、階層の追加は諦めた。

 というか後日に回した。

 ただの洞窟がダンジョンに進化する日は、まだ遠い。

 DPを貯めてから出直すのだ。


 代わりに、このダンジョン唯一のモンスターであるリビングアーマー先輩と、このダンジョン唯一の階層であるこの部屋の強化をする事にした。


 まずは、私の全MPをダンジョンコアに注ぎ込んで5000DPを確保。

 それから、この部屋の後ろに小部屋を造り(お値段500DP)、そこにダンジョンコアを移動させた。

 ダンジョンコアの移動は、割りと簡単にできるのだ。

 ただし、侵入者が近くのフロアまで来ていない時に限る。

 ついでに、私も奥の小部屋に引っ込んだ。

 ダンジョンマスターと言うだけあって、ダンジョン内の様子はどこにいても確認できるから、困る事はない。

 

 そして、入り口の部屋に『ボス部屋』という特殊な設定を施した(お値段1000DP)高い。

 しかし、このボス部屋というシステムには、1000DPを支払うだけの価値がある。


 ボス部屋とは、その名の通り部屋のボスを設定し、そのボスが倒されない限り、ネズミ一匹たりとも先のフロアへと進ませないようにするシステムなのだ!

 つまり、リビングアーマー先輩がやられない限り、私の生存は確約される訳だ。

 素晴らしい。


 しかも、それだけでなく、ボスとして選択したモンスターのステータスを大幅に上昇させてくれる。

 具体的には、全ステータス3倍だ。

 凄まじい。

 もう、1000DPでもお釣りがくるわ。


 あと、戦闘が始まったら入り口が閉じて、侵入者を逃がさないようにもなっている。

 大魔王からは逃げられない的なアレだ。

 これはこれで、ありがたい。

 侵入者を生かして帰したら、ダンジョンの場所が知れ渡っちゃいそうだし。

 それは困る。

 普通のダンジョンならともかく、ウチに関して言えば、侵入者なんて来ないに越した事はないんだから。


 さて。

 何はともあれ、これにて残りは約3500DP。

 そこから更に1000DPを使って、ボス部屋の中にトラップを敷き詰めた。

 落とし穴、吊り天井、伸びる床、剣山、壁から矢、ギロチン。

 一先ずはこれだけ。

 これだけでも、リビングアーマー先輩と連携させれば、かなりの殺傷力を誇る筈だ。

 手数は強さ。


 そして、次はリビングアーマー先輩の武器だ。

 さすがに、素手のままよりは剣の一本でも持たせた方が強いだろう。

 騎士風の鎧だし。

 剣とか盾とか持ってた方が自然だ。


 という訳で、200DPを使って『鋼の剣』を、800DPを使って『黒鉄の盾』を出して、リビングアーマー先輩に装備させた。

 盾の方に多くのDPを割いたのは、リビングアーマー先輩のHPが自然回復しないからだ。

 なるべくダメージを抑えてほしいとの願いから、かなり良質な盾を出した。


 これで、残り1500DP。

 できれば、このDPでリビングアーマー先輩を更に強化したい。

 ステータスも強化したいし、欲を言えば、リビングアーマー先輩の材質自体をもっと良質な金属にしたい。


 今のリビングアーマー先輩は、リビングアーマー(鉄)だ。

 これを剣と同じ鋼にするだけでもステータスは大きく向上するし、盾と同じ黒鉄にすれば、もっと飛躍的に強くなると思う。

 詳細に鑑定してみた結果、リビングアーマーというモンスターは、材質が強さに直結するらしいから。


 しかし、ここは……涙を飲んで、残りのDPを貯金に回す。

 鋼にしても黒鉄にしても、全身鎧を構築するだけの量を出そうと思ったら、相当高くつく。

 鋼でもギリギリだ。

 黒鉄のボディなんて6000DPもする。

 階層追加より高いとか……。

 黒鉄の盾は800DPなのに。

 なんだろう。

 加工費が高いんだろうか?

 なんにしても、これは手が出ない。


 という事で、この1500DPは貯金だ。

 MPは寝れば全快するみたいだから、明日の分と合わせて階層の追加と改造に使う。

 リビングアーマー先輩の強化は……残念だけど、また今度だ。

 仕方ない。

 私だって、お風呂とか造りたいのを我慢してるんだし、リビングアーマー先輩にも我慢してもらおう。


 それでも、今までの強化で、リビングアーマー先輩のステータスはこんな感じになった。


ーーー


 リビングアーマー Lvーー


 HP 1500/1500

 MP 0/0


 攻撃 900 

 防御 1410

 魔法 0

 魔耐 1350 

 速度 450


 スキル


 なし


ーーー


 『鋼の剣』 耐久値500


 効果 攻撃+20


 鋼で出来た剣。

 とても頑丈に作られている。


ーーー


 『黒鉄の盾』 耐久値1000


 効果 防御+300 魔耐+300


 黒鉄で出来た盾。

 凄まじく頑丈に作られている。


ーーー


 比較対象が私くらいしかいないから今一よくわからないけど、それでも防御力4桁は間違いなく強いとは思う。

 これなら、ゴブリンくらい無傷で倒してくれそうだ。

 実に頼もしい。

 心強い。


 そして、リビングアーマー先輩は、ダンジョン入り口の横に配置した。

 どうせリビングアーマー先輩が倒されない限り、この先に侵入される事はないんだから、少しでも侵入者を不意討ちできそうな場所に居てもらった方がいいと思って。


 で、私はと言うと、起きていてもやる事がないので、MPを回復させる為に、さっさと寝る事にした。

 念の為に、メニューを弄って、侵入者が来たら警報が鳴るように設定して。


 では、お休みなさい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る