とある元勇者と勇者の近況
ウルフェウス王国から逃げ出した俺達は、エマちゃんの『
傷ついた
それに文句はない。
少なくとも俺は。
でも、国を見捨てた形になったから、神道とアイヴィさんは、めっちゃ複雑な顔してたけどな。
そうして、エールフリート神聖国に辿り着いた後、俺は戦いから遠ざかる事になった。
これは、道中でも三人に話していた事だ。
もう心が折れた。
戦えないと死んだ目で語ったら、三人とも同情するような目で見てきて、俺の決断を受け入れてくれた。
今後、俺は戦い以外の道で食っていく事になるだろう。
鑑定を活かした目利きとかで。
それに引き換え、神道は立派だよ。
エマちゃんと、新しい十二使徒に選ばれたアイヴィさんと一緒に、これからは最前線で戦い続けるって言うんだから。
そうして、いつの日か魔王を倒して皆の仇を討つんだって。
まさに勇者だ。
悲劇の英雄だ。
戒めとして、本城さんに付けられた左目の傷をそのままに(眼球は治したみたいだけど)してる事といい、俺には逆立ちしても真似できない。
俺にできたのは、鑑定に成功した魔王やあのドラゴン、そして本城さんの姿をした魔物のステータスを教える事くらいだった。
それが、勇者としての俺の最後の仕事だ。
この先、俺の話した情報を基に、神道がどんな選択をするのかはわからない。
勇者と魔王の戦いの結末もわからない。
この世界がどうなるのかもわからないし、俺の力じゃもうどうしようもない。
俺はもう何もできない。
俺はもう、勇者の物語の中にはいない。
心を折られた負け犬にできるのは、その他大勢に交ざって、勇者様が魔王を倒して平和を掴みとってくれる事を祈るだけ。
こうして、俺の冒険は終わってしまった。
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