41 レッツ尋問

「村長さんを出してください」


 私は、オートマタを操作して無機質にそう告げた。

 すると、村人達がおずおずとある人物の方を見る。

 そして、その人物は堂々とした足取りでオートマタの前に進み出た。


「あなたが、この村の村長さんですか?」

「そうだ」


 そいつは、筋骨隆々の初老の男だった。

 鑑定してみたら、攻撃が250もある。

 そこそこ強いな。

 でも、ボコボコにされた跡があるのを見るに、ゴーレム達に寄ってたかって袋叩きにされたと見た。


「ご家族はいますか?」

「……それを聞いて何になる」

「質問は受け付けません。そして答えなければ、後ろの村人達を全員殺します」


 そう告げると、村人達は大いに怯えて、一部の奴らが村長の家族と思われる三人を突き出した。

 醜い。

 さすが人間。

 醜い。


「お前ら……!」

「す、すまねぇ村長! 許してくれ!」


 村長が怒りの視線で睨み付けると、三人を突き出した村人達は震え上がった。

 これ、私が殺さなくても村長に殺されそう。

 まあ、そんな事はどうでもいいか。


 突き出された三人は、若い男女が二人と、10歳以下に見える男の子が一人。

 息子夫婦と孫ってところかな?


 私は、オートマタを三人の方に近づかせた。


「お孫さんですか?」

「…………」

「答えてください」

「……そうだ」


 血を吐くように村長は答えた。

 よし。

 これは効きそうだ。

 私は早速、オートマタに村長の孫を掴み上げさせた。


「ひっ!?」

「おい!」

「黙ってください」

「くっ……!」


 そして、孫を抱えたまま村長の前に戻り、やる事をやる。


「これから、いくつかの質問をします。正直に答えてください。嘘を吐いたり、反抗的な態度を取ったりしたら、この子を痛めつけます」

「貴様ぁ!」

「反抗的な態度ですね。では、まずは……」


 私はオートマタの手で、村長の孫の右手の小指をへし折った。


「あぁあああああああ!」

「ロイ!」

「あなたのせいですよ村長さん。この子の為を思うなら、おとなしく質問に答えてください」


 村長は、砕けそうな程に歯を食いしばり、血が出る程に強く拳を握りしめたものの、激情を堪えるかのように黙った。

 それでいい。


「では、最初の質問です。

 この村では最近、魔物による被害が多発していますよね。

 その対策に何をしたのか、どこに助けを求めたのか、教えてください」

「……最初は冒険者ギルドに依頼を出した」

「それで?」

「依頼を受けた冒険者が戻らず、それを追いかけて来たという冒険者も戻らない。

 その事を冒険者ギルドに報告して、もっと強い冒険者を派遣してくれるように、なけなしの金で依頼を出した」


 ふむ。

 最初に依頼を受けた冒険者っていうのは、多分、最初に来た三人組の事だと思う。

 それを追いかけて来た冒険者っていうのは、生前の中年ゾンビかな?

 あいつ、あの三人を追って来てたのか。


「その後は?」

「ボルドーの街で最強と呼ばれる冒険者が来てくれたが、その冒険者も戻らず、冒険者ギルドには匙を投げられた」


 街で最強の冒険者……不死身ゾンビかな?

 確かに真装使いだったし、田舎の街とかなら最強を名乗れるかもしれない。

 しかし、冒険者ギルドが匙を投げた?

 その後も侵入者は来たぞ。


 オートマタに、村長の孫の右手薬指を折らせた。


「いたいぃいいいいいいいいい!」

「な!? 俺は正直に話したぞ!」

「嘘ですね。冒険者ギルドが匙を投げたというのは。

 あるいは、他の所に助けを求めたでしょう?」


 これは鎌かけみたいなものだ。

 不死身ゾンビの後に来たのは、くっ殺王女と俊足野郎の二人。

 でも、ウチのダンジョン入って来たのは、村からの依頼を受けた訳じゃなく、ただのお姫様の道楽だったのだとしても不思議ではない。

 その場合、村長は他の所には助けを求めていない、あるいは、助けを求めたけど見捨てられたって事になるけど。

 そこんとこ、どうなの?


「答えてください。他の所に助けを求めましたね」

「……助けを求めてはいない。本当だ。

 ただ、おかしな冒険者に村の現状を話したら、自分達に任せろと言って飛び出して行った事はあった。

 それくらいだ」


 おかしな冒険者……。


「それは、若い少女と男の二人組でしたか?」

「ああ、そうだ」


 確定。

 それ、くっ殺王女と俊足野郎だ。


「では、次の質問です。

 その冒険者の後に、国の兵士達が来たでしょう?

 彼らが帰って来ないという話を、誰かに話しましたか?」

「は? 国の兵士? 何の話だ?」


 とぼけるか。

 孫の右腕をねじり折る。


「ギャアアアアアアアアアアア!」

「待て! 本当に知らないんだ! 女神様に誓う! そんな奴らは、この村に来ていない!」


 女神様なんて知らない。

 でも、これは嘘を吐いてる感じじゃないな。

 もしかして、討伐隊はこの村を経由せずに、近くにあるらしい街から直接来たとか?

 くっ殺王女救出の為に急いでただろうし、歩いて半日の距離なら、できなくはないかも。


 そうなると、村長は討伐隊の存在自体知らないのか。

 連中の直前の動向が知れれば、少しは国の出方もわかるかなと思ったけど、知らないんじゃ意味ない。


 なら、もういいや。

 この村で、私がダンジョンマスターになってからの一連の事件が、どんな扱いされてたのか知れただけでもよしとしよう。


「では、最後の質問です。あなたはダンジョンをどう思いますか?」

「ダンジョン? ……危険な場所だと思ってる」

「そうですか」


 それを聞いた直後、村長の孫の首を握り潰した。

 ゴキンと嫌な音が鳴って、村長の孫は動かなくなる。


「ぁ……」

「質問は以上です。もう死んでいいですよ」

「貴様ぁあああああ!」


 怒りに身を任せて突進して来る村長を、剣を抜くまでもないと拳で迎撃する。

 オートマタの拳が村長の頭を打ち抜き、トマトみたいに破裂させた。

 弱い。


 さて、残りも殺すか。


 私は夜が明けない内に全てを片づけるべく、ゴーレム達に指示を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る