75 国と街の情報

「うーん……あ、ご主人様……」

「起きた?」

「あ、はい」


 街に着いてから一晩経って、ようやくリーフは起きた。

 よく寝たおかげか、顔色は悪くない。

 これなら、質問タイムに移っても大丈夫そうだ。


「あの、ここは?」

「バロムの街の宿屋。もうとっくに到着した」

「す、すみません! 寝ちゃってました!」

「別にいい。それより、この街と国について詳しく教えて」

「は、はい!」


 そうして、リーフから、ここアワルディア共和国とバロムの街についての詳しい説明を聞く。

 本当は旅の途中で聞こうと思ってたんだけど、リーフの馬車酔いが酷かったから、予定がズレ込んだのだ。

 まあ、時間に追われてる訳でもないから、それは別に構わない。

 国境さえ越えれば、こっちのもんだし。


「えっと、それではまず、この国についての説明からしますね。

 アワルディア共和国は、いくつかの国とか集落とかが合併して出来た国で、色んな人種の人達が暮らしています」


 それは知ってる。

 実際に見たから。

 あの、ザ・ファンタジーな光景は、中々に衝撃的だった。

 でも、そうなると気になる事が一つある。


「この国って誰が治めてるの?」


 一人の王が治めてるのか、それとも合併したそれぞれ国や集落の代表が集まって治めてるのか。

 それによっては、国を滅ぼす難易度が上下しそう。


「ええっと、確か『議員』っていう人達が国を管理してたと思います。

 詳しくはわからないですけど、その人達が王族の代わりをしているとか」

「なるほど」

 

 議員ときたか。

 つまり、この国の頭は一つじゃないと。

 潰すのが非常に大変そうだ。

 いや、頭同士で潰し合わせれば、そうでもないかな?


「じゃあ、次。この街の事について説明お願い」

「あ、はい。

 バロムの街の特徴は、何と言ってもウルフェウス王国との国境という事ですね。

 貿易で栄えてる街なので商人が沢山いますし、その商人は両国を行き来するので、ウルフェウス王国とアワルディア共和国の情報なら、どこよりも早く手に入ります」

「ほう」


 それは悪くない。

 多分、ウルフェウス王国壊滅の情報も遠からず広まるだろうし、それに対するアワルディア共和国の出方を見るには、ここに居るのが一番かも。

 それに、ドラゴンが順調に進軍して来れば、多分ここが新しい最前線になる。

 つまり、この街に国の重要な戦力が集まると思う。

 敵情視察には持ってこいだ。


 よし決めた。

 しばらくは、ここを拠点にしよう。


「じゃあ、その情報収集に適した場所って知らない?」

「それなら冒険者ギルドが一番なんですけど……でも、冒険者以外が行くのは不自然な場所なので……」

「問題ない。冒険者登録はしてあるから」

「え!? ど、どうやったんですか!?」

「あなたが知る必要はない」


 世の中には、知らない方が幸せな事があるのだよ。


 という訳で、聞くべき事は聞けたので会話を打ち切り、冒険者ギルドに向かう事にした。

 冒険者ギルドには基本的に食堂というか、酒場が併設されてるらしいので、ついでにリーフの朝御飯もそこで済ませてしまおう。


 そうして、私はオートマタとリーフを冒険者ギルドへと向かわせた。

 その裏で、この国を滅ぼす方法を考えながら。

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