45 教えて、ハーフエルフ先生!

「うぅ……!」


 料金である金貨80枚(これが高いのか安いのかはわからない)を支払った後、

 奴隷紋の主登録に必要という事で、購入したハーフエルフの奴隷、リーフの胸に刻まれた変な模様(これが奴隷紋らしい)にオートマタの魔力を流し込んで、契約を完了させる。

 どうやら、この時に結構な痛みが走るみたいで、リーフは痛そうな顔してた。


 そして、今さら気づいたけど、ファンタジーの定番である、契約には血が必要ですってパターンだったら終わってたんじゃないかな?

 だって、オートマタには血も涙もないし。

 ……ま、まあ、こうして無事に契約完了したんだから、今回はセーフという事で。

 これからは、もう少し慎重になろう。


「ありがとうございました。またの来店をお待ちしております」


 で、最後に奴隷商人達がお辞儀で見送り、オートマタはリーフを連れて店の外へ。

 おっかなビックリ付いてくるリーフをモニターで確認しながら、防音のしっかりしてそうな宿屋に直行。

 お楽しみの時間だ。


「さて」


 二人部屋に入った後、あえてオートマタの口からその呟きを発し、これから何かを始める事をリーフに悟らせる。

 ビクリと震えた。

 ショタコンかロリコンの奴なら、こういう仕草にキュンとくるのかもしれない。

 私には関係ないけど。


 そして私はとりあえず、オートマタの仮面を外した。


 仮面を被った不気味な奴より、絶世の美少女相手の方がやる気が出るんじゃないかと思ったからだ。

 案の定、リーフはポカンとした後、真っ赤になった。

 小さくても、やはり男か。


「そこ、座って」


 オートマタの指でベッドを指差す。


「は、はい……」


 何故か緊張しながらベッドに座るリーフ。

 さて、始めようか。


「じゃあ、これから……」


 その言葉を聞いたらリーフが、真っ赤っ赤になりながら目を閉じた。

 ……これ、何か勘違いしてないか?

 襲われる前の乙女の反応だぞ、これ。

 お前、男じゃないのか?

 とりあえず、その勘違いは訂正しないと。


「色々質問するから、正直に答えて」

「……へ?」


 要望を口にしたら、リーフはポカンとした顔になった。

 やはり勘違いされていたらしい。

 エロい事でもすると思ったのか?

 それは、私がこの世で一番嫌いな行為だぞ。


「色々質問するから、正直に答えて」

「あ、はい」


 大事な事なので二回言えば、ようやくリーフは私の意図を読み取ったようで、おとなしくなった。

 襲われる前の乙女の雰囲気は、もうない。

 うん。

 それでいい。


 さて、まずは何から尋ねようか?

 聞きたい事が多過ぎて、ちょっと悩む。

 そうだなー……まずは、簡単そうなやつからいくか。


「魔法って、どうすれば覚えられるの?」

「え?」

「教えて」


 リーフは未だにポカンとしてる。

 ……この反応を見るに、魔法の覚え方って誰でも知ってる常識なんだろうか?

 だとしたら、下手に誰かに聞かなくてよかった。

 でも、奴隷ならいくら怪しまれても大丈夫。

 さあ、仕事しろ情報源。


「えっと、魔法は『魔導書』っていう本を読むと覚えられます」


 ほほう。


「もっと詳しく」

「わ、わかりました。

 魔導書には色んな魔法の効果の説明と、魔法を使う為の『詠唱』が書いてあって、それを読み上げると魔法が発動するんです。

 それで、その方法で何度も何度も魔法を発動させていると、魔法のスキルが覚えられます。

 そこまで行くと、詠唱なしでスキルLvに見合った魔法が使えるようになるんです」

「……なるほど」


 要するに、魔法の習得には、魔導書っていうアイテムが必要なのか。

 盲点だった。

 てっきり、なんかこう、修行みたいな事して覚えるもんだと思ってた。

 そっかー。

 アイテムかー。


 早速、DPで出せるアイテムの一覧を探す。

 ……あったよ魔導書。

 『初級火魔法の書』とか『初級水魔法の書』とかに分類されてる。

 もっと早く気づきたかった。


「あ、でも、魔法スキルを覚えるのはとっても難しくて、才能のある人でも、一つの魔法スキルを覚えるのに数年かかるのが普通です」


 とりあえず、いくつかの魔導書を購入しようとしてた手が止まった。

 そっか。

 習得には時間がかかるのか。

 いや、考えてみれば当たり前の話だった。

 そんな簡単に覚えられるなら、侵入者の中にもっと魔法スキル持ちがいただろうし。


 ん?

 そういえば、ゴブリンどもはどうやって魔法を覚えたんだろう?

 村とかを襲った時に、戦利品として魔導書を手に入れて読んだとか?

 普通にあり得そう。

 だとすると、魔導書ってゴブリンの手の届く所にあるくらいには沢山あるんだろうか?


「その魔導書って希少?」

「はい。まあ、それなりには。でも、殆どの集落に一冊はあるレベルだと思います」


 マジか。

 もしかして、私が燃やしたマーヤ村にもあったんだろうか。

 もう少し真剣に家探しすればよかったかも。 

 でも、まあ、なんにせよ、こうして魔法習得の手段はわかったんだから、別にいいや。

 あの時は、あんまり時間もかけたくなかったし。


 とりあえず、魔法に関する質問はここまででいいか。

 また、わからなくなったら、こいつに聞こう。


「じゃあ、次の質問」


 続いて、私は次の質問に移った。

 もうお昼だし、昨日の夜から起きてて眠いし、どうしても知りたい事だけ聞いて、早く寝たいと思いながら。

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