107 最終ミッション
「皆の者! よくぞ集まってくれた!」
眼下にずらりと集まった魔物の群れ、魔王軍の全軍に対して魔王が語りかける。
もっとも、その言葉をちゃんと理解できてるのは、知能のある幹部だけだと思うけど。
「遂に我らはこの地にて集結した! 残る標的は最後の壁、エールフリート神聖国首都のみ!
ここを落とし、この地に封じられた魔神様を蘇えらせれば、遂に我ら魔物による世界が幕を開けるのじゃ!」
いつになく魔王が熱い。
その熱気に当てられたのか、多くの魔物が雄叫びを上げ、幹部の何体も同調するように拳を振り上げる。
私?
内心げっそりしてますが何か?
「ここまで長かった! 魔物はいつも人間に虐げられ、狩られ、そして死んできた!
そんな時代はもうすぐ終わる! 否! 我らが終わらせる!
━━出陣じゃ!
目的地は首都の中央! 大聖堂と呼ばれる建物の地下にあるダンジョン『魔神の墓場』!
かつて、女神に敗北した魔神様が封印されておる場所じゃ!
我はそこへと攻め入り、魔神様の封印を解く!
お主らは全力を尽くし、我の道を切り開いてみせよ!」
『━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━!』
さっきよりも更に激しく、魔物どもが雄叫びを上げた。
幹部にも雄叫びを上げてる奴がいる。
特にフェンリル。
そういえば、こいつは自己紹介の時に「俺は魔王様の忠実な僕だ」とか言ってたっけ。
もしかしたら、リーフ並みに忠犬意識が高いのかもしれない。
そして、
「行くぞ! 突撃開始!」
魔王の号令によって、人類と魔王軍との最終決戦が始まった。
今回は一応作戦があって、多方面から攻める手筈になってるから、一部の幹部とそれに続く魔物の群れが、広大な首都とそれを守る防壁を包囲するように展開していく。
脳筋魔王軍がこんな作戦を立てた理由は簡単。
単純に、億に届こうかという魔物の群れを一ヶ所に集中させる事ができなかったからだ。
そんな事したら、普通に大渋滞が起こるわ。
だからこその包囲作戦。
こうすれば渋滞は解消され、敵の戦力も迎撃の為にバラける。
こっちは魔王一人が目的地に辿り着けば勝ちなんだし、その為に敵を分散させるのは、意外と合理的な作戦だと思う。
ちなみに、この作戦における私のモチベーションは結構高かったりする。
もちろん、魔王に協力する為じゃなくて、全力で漁夫の利を得る為のやる気だけど。
「ふぉっふぉっふぉ。では、行くとするかのう」
私がそんな事を考えてる間に、亀が人化を解除し、防壁に向かって歩き始める。
それに続いて、この場に残った幹部と雑兵魔物どもが突撃していく。
その亀に向かって、極大の光の魔法が飛んできた。
この威力、神道か。
前よりも更に強くなってる。
危ないなぁ。
「纏え━━『ダイアモンド』」
それに対して、亀は真装を発動させて対処した。
ダイアモンドみたいな甲殻が亀の全身を纏い、ただでさえ硬い体を更に硬くさせる。
その結果、亀の防御力は勇者の魔法を弾き飛ばした。
「……今のは結構痛かったのう。老骨にはキツイわい」
「ふむ。さすがのお主でも、勇者の魔法を何発も食らうのはキツイか」
亀と、その頭の上に乗った魔王が会話してる間に、勇者以外の魔法攻撃が飛んできた。
中には、そこそこ強力なのと、滅茶苦茶強力なのが混ざってる。
多分、そこそこ強力なのは真装使い。
滅茶苦茶強力なのは十二使徒の魔法かな。
他の魔法も別に弱くはないし、それに当たった魔物どもが絶命していく。
さすがに簡単にはいかないらしい。
まあ、向こうだって後がない事くらいわかってるだろうし、ここに戦力を集中させてるんだろうから当たり前だけど。
そして、そうこうしてる内に、また勇者の極大魔法が飛んでくる。
「今度は我に任せるがよい! 《ダークネスレイ》!」
それに対し、今回は魔王の闇の魔法で対処した。
光と闇が正面からぶつかり合い、相殺する。
相殺か……。
温存するつもりなのか、魔王はまだ真装を使っていない。
でも、一瞬、魔王の体を闇のオーラが包み込んでたのを見ると、ステータス強化のスキル《暗黒闘気》を使ったと思われる。
その状態の魔王の魔法と相殺。
しかも、これだけ離れた距離から撃った魔法で。
……神道、実に厄介。
でも、魔王軍とてやられっぱなしじゃない。
遠距離攻撃ができる魔物はこっちにもいる。
その攻撃は防壁に阻まれて届かないけど、相手の魔法をある程度相殺する事はできた。
それによって被害を最小限に止め、魔王軍は進軍を続けた。
そして、遂に亀が防壁のすぐ近くにまで接近する。
「さて、暴れるとするかのう! 地獄より来たれ━━《サタン》!」
そのタイミングで魔王が真装を発動。
現れた漆黒の大剣を握り締め、先陣を切って防壁の上へと乗り込んで行く。
それに続いて、防壁をものともしない幹部が続く。
雑兵魔物どもは、向こうの雑兵の手を煩わせる。
そして、私もまたオートマタを動かし、配下を引き連れて防壁の上へと乗り出した。
「魔王ォオオオオオ!」
「また会ったのう、勇者!」
そこでは、丁度、勇者と魔王の戦いが始まっていた。
勇者の聖剣と、魔王の魔剣がぶつかり合い、周囲に凄まじい衝撃波が吹き荒れる。
こうして、最後の戦いが本格的に始まった。
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