8 (異世界では)初めての人殺し

「ふぅ……終わった」


 私が寝てる間に入って来た侵入者三人が死んだのを確認してから、私は安堵の息を吐いた。

 初めてだ。

 初めて、危なげなく侵入者を殺せた。

 祝!

 圧勝!

 完全勝利!

 ありがとう、リビングアーマー先輩! 


「ハァ~」


 そうして私は、今回の戦いを振り返る。

 あんまり快適とは言えない眠りについてたら、事前に設定した通りアラームが鳴ったから飛び起きた。

 そうして、急いで迎撃に移ったのが今回の顛末だ。

 幸いと言っていいのか、眠りが浅かったおかげで、すぐに動けた。

 まあ、私がやった事と言えば、落とし穴を作動させた事くらいだけど。

 でも、それで撃退できたんだよなぁ。


 ちなみに、あの三人のステータスは、こんな感じだった。


ーーー


 人族 Lv16

 名前 ドイル


 HP 120/120

 MP 50/50


 攻撃 70

 防御 68

 魔力 10

 魔耐 41

 速度 71


 スキル


 『剣術:Lv2』


ーーー


 人族 Lv16

 名前 キース


 HP 110/110

 MP 40/40

 

 攻撃 86

 防御 39

 魔力 11

 魔耐 24

 速度 88


 スキル


 『剣術:Lv2』


ーーー


 人族 Lv16

 名前 アデル


 HP 80/80

 MP 160/160


 攻撃 11

 防御 18

 魔力 90

 魔耐 74

 速度 20


 スキル


 『火魔法:Lv2』『光魔法:Lv1』『回復魔法:Lv1』


ーーー


 漫画とかによく出てくる冒険者みたいな格好した三人組だった。

 そして、全員Lv16。

 これがどのくらいの強さなのかはわからないけど、ステータス的には初期のリビングアーマー先輩より遥か格下だ。

 そう考えれば、そこまでの強敵って訳じゃなかった、のかな?

 それでも、ゴブリンよりは遥かに強かったけど。

 ……もしかしたら、リビングアーマー先輩の強化を怠ってたら勝てなかったかもしれない。

 何せ、三対一だし。

 強化しといて良かった。


 でも、今回の一番の勝因は、最初の不意討ちで一人殺せた事だと思う。

 それだけで、残り二人の内の一人は呆然として動きが止まったし、魔法使いはリビングアーマー先輩が接近すれば簡単に殺せたし。

 正直、まさか、あんな簡単にいくとは思わなかった。

 ゴブリンどもは、仲間が死んでもお構い無しだったから、こうなったのは目から鱗だ。

 今度から、仲間の死体を盾にする的な事をやってみるのもいいかもしれない。


 ボス部屋の中に設置したトラップも上手くハマった。

 と言っても、落とし穴以外は出番がなかったけど。

 逆に言えば、落とし穴以外を使う必要がないくらいの圧勝だったって事だ。

 素晴らしい。


 あと、魔法使いを殺した時点で明かりが消えて、最後の一人が何もできなくなったのは、こっちにとって嬉しい誤算。 

 考えてみれば当たり前の事だった。

 そりゃ、普通の人間は、真っ暗闇の中じゃろくに動けないわな。

 ダンジョンマスターにとって、ダンジョンは自分の手足みたいなものだから、暗闇の中でもメニューのモニターで普通に見れたし、

 リビングアーマー先輩も肉眼で物を見てる訳じゃない無生物系モンスターだから、暗闇なんて関係ない。

 そして、ダンジョン内は私が意図して光源を設置しない限り、ずっと暗いままだ。

 これは良い。

 ウチのダンジョンは、これからも暗闇ダンジョンとしてやっていこう。


 さて、戦闘を振り返るのはここまでとして、戦果の確認といこう。


 あの三人を殺して手に入ったDPは、624DP。

 一人当たり、約200DPってところ。

 大魔導先輩が叩き出す収益に比べたらゴミみたいな数字だけど、それでもゴブリン殺した時とは比べ物にならない。


 そして、死体と装備を還元したら、追加で200DPが手に入った。

 これも、ゴブリンの死体とは比べ物にならない。

 ただ、剣とか、魔法使いの持ってた杖とか、ウエストポーチみたいな物の中に入ってたアイテムは還元しないで残しておいた。

 剣は、リビングアーマー先輩の予備武器として使えるし、杖も、もしかしたら使うかもしれないから。

 アイテムに関しては、後で検分しよう。


 でも、今回のリターンで一番大きいのは、アイテムでもDPでもない。

 経験値だ。

 ゴブリンとは比べ物にならない強さの侵入者三人を殺して、私のLvは一気に3から7に上がった。

 やっぱり、この世界でも、格上を倒すと多くの経験値を貰えるらしい。

 ゲームとかと同じだ。


 そして、このレベルアップによって、私のMPは一気に8500にまで急上昇した。

 大魔導先輩パネェっす。

 でも、睡眠時間が足りなかったせいか、MPが全快はしていない。

 今は大体4000くらいだ。

 その代わり、なんか『MP自動回復:Lv1』とかいうスキルが手に入った。

 普通のスキルを手に入れたのは、地味に初めてである。


 どういう条件で獲得できたのかはわからないけど、多分、熟練度的なシステムだと思う。

 私は何回か、寝る事によってMPを回復させてたから、それで熟練度が上がってたとしてもおかしくない。

 アデルとかいう魔法使いの侵入者は持ってなかったスキルだけど、大魔導先輩の効果の一つに『魔法関連スキルの獲得熟練度を大幅に上昇』ってあったし、その効果が初めて仕事したという事なんだろう。

 大魔導先輩パネェっす。


 ただ……このスキルは、現状あんまり使えない。

 スキルLvが1だからだと思うんだけど、自動回復って言っても、本当に微々たる量しか回復しないのだ。

 一分で1回復するかどうかってところ。

 ……うん。

 今後に期待。


 まあ、新スキルの事は置いといて。


「さて……やるか」


 再び、私の全MPをダンジョンコアに注ぎ込む。

 前回貯金した分を合わせて、6080DP。

 これで、階層の追加と改造ができる。

 ようやく、ただの洞窟からダンジョンに進化する時だ。

 私は、なんとなく感慨深い気持ちになりながら、メニューを操作した。

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