60 復讐?
クラスメイト殺しを終えた後、念の為に待機させておいた不死身ゾンビと熱血ゾンビを先生ゾンビと一緒に回収し、ついでにオートマタも回収しておいた。
返り血で汚れまくってたからね。
このままの状態で王都を歩いたら、しょっぴかれる予感しかしない。
先生ゾンビが手に入った今、王都に戻すのは簡単だし、ダンジョン内で洗っておこう。
そうしてオートマタをガーゴイルの水魔法で洗い、新しい服を用意している間に考えた。
今回の行動は、私にとって復讐だったのかどうか?
そうとも言えるし、違うとも言える。
確かに、クラスメイトには恨みがある。
でも、奴らを殺した一番の理由は、成長されたら私にとって危険な存在になると思ったからだ。
だからこそ、先生も殺した。
真っ先に殺した。
オートマタの仮面を外して、素顔を見せて動揺させ、空間魔法で逃げるという思考を奪って確実に殺した。
むしろ、先生を殺すのが本命で、残りの三人はおまけだったとすら言える。
最悪、先生だけ殺せれば、残り三人が逃げたり、目撃者が出て騒ぎになっても仕方ないとまで思ってた。
だって、空間魔法とか、どう考えてもダンジョンの天敵だもの。
もし一度でも先生にボス部屋にまで辿り着かれでもしたら、それ以降は、ダンジョンのあらゆる仕掛けを無視して、強敵がいきなりボス部屋に送られて来るようになるかもしれない。
しかも、いつ襲ってくるかわからない恐怖に苛まれるという。
考えただけで恐ろしい。
そんな悪夢のスキルを持ってた先生を、あんな突発的なエンカウントで殺せて、しかもゾンビとして味方にできたのは凄まじく運が良かった。
イジメられた事といい、両親が殺された事といい、ダンジョンに次から次へと強敵が来た事といい、挙げ句の果てには魔王に魅入られた事といい。
私の運って絶望的なまでに低いと思ってたけど、存外捨てたもんじゃないみたいだ。
それはそれとして、今回の戦果確認といこう。
今回はたった四人しか殺してないけど、それでも確認が必要になるくらいの戦果を手に入れたと言える。
まずは、何と言っても先生ゾンビの入手。
これで移動が楽になっただけじゃなく、石盾に使ったみたいに、外からダンジョンに強制テレポートさせるトラップが使えるようになった。
自分から侵入者を招き入れるのは嫌だけど、効果は凄まじく高いから、使うべき時には出し惜しみせずに使おう。
続いて、クラスメイト三人の死体。
つまり、勇者三人の死体だ。
Lv10程度の雑魚とはいえ、それでもユニークスキル持ちのゾンビは凄い戦力になる。
葉隠の死体を使った隠密ゾンビは、ユニークスキル『神隠し』を持つ。
この効果によって、私はあらゆる場所に侵入可能になったと言えよう。
ただし、効果時間は短いみたいだから注意が必要。
使いどころは限られそうだけど、それでも便利だ。
次に、作間の死体を使って造った、創造ゾンビ。
こいつは、ユニークスキル『創造』という、いかにもチート臭いスキルを持っていた。
このスキルはどうやら、一度触った事のある物質なら、MPを使っていくらでも創造できるというスキルらしい。
生物は無理みたいだけど、それ以外なら何でも、そう何でもだ。
ミスリルやオリハルコンの量産までできる。
ただし、グレードの高い物程、造るのに多大なMPを使うらしいので、オリハルコンの大量生産は無理っぽい。
それでも、ミスリルなら一日にゴーレム一体分くらいの量は造れそうなので、早速、ゴーレム生産ラインに創造ゾンビを組み込んでおいた。
量産型ミスリルゴーレムの完成を楽しみにしている。
最後に石盾の死体だけど……これは、防御力以外のステータスが低すぎて、せいぜい盾としてしか使えないって事で、廃棄に決定した。
もっとLvが上がってれば戦力として使えたんだけどね。
でも、そのおかげで楽に仕留められたと考えれば、まあ、いいか。
ちなみに、石盾の死体は2万DPという高値で還元された。
やっぱり、勇者凄い。
で、死体以外の戦利品はない。
お忍びルックだったから、目ぼしい装備も付けてなかったしね。
その代わりに、私は多大な経験値を手に入れた。
なんと、私のLvが52から60へと一気に上がったのだ!
勇者の経験値しゅごい。
できれば勇者全員、私の手で殺したいと思えるレベルだ。
そうすれば、魔王にすら対抗できるんじゃなかろうか?
まあ、他の勇者には十二使徒とかが護衛に付いてるんだろうし、難易度高そうだから欲はかかないけどさ。
そうして、私が戦果確認を完了させた時だった。
「待たせたな、マモリよ!」
魔王との通信部屋に、魔王が部下っぽいモンスターを一体連れて転送されてきた。
部屋の中にいるリーフが、勢いよく頭を下げる。
マモリちゃん人形も頭を下げた。
「ほう。お前が新しい幹部か?」
「はい。マモリと申します」
「随分と小さいな」
「これは仮の姿ですので」
「そうか」
魔王の部下っぽいモンスターが声をかけてきたので、マモリちゃん人形に受け答えさせた。
そのモンスターは、黒いリザードマンだった。
二足歩行のトカゲというか、二足歩行で人型のドラゴンって感じだ。
そして、筋肉ムキムキである。
熱血ゾンビより凄い。
でも、多分これ、人化したドラゴンだと思う。
ドラゴンとか、高位のモンスターが人化できるって事は知ってる。
オートマタを造る理由になった、諜報活動できるモンスターを探した時に知った。
そして、その人化がどう見ても人には見えない微妙なものでしかないという事も。
とりあえず、鑑定。
ーーー
ブラックドラゴン Lv108
名前 ドラグライト
HP 25300/25300
MP 23000/23000
攻撃 20300
防御 20015
魔力 18840
魔耐 17550
速度 19991
ユニークスキル
『真装』
スキル
『ドラゴン:Lv108』『HP自動回復:Lv84』『MP自動回復:Lv71』
ーーー
化け物や。
平均ステータス約2万とか。
素の力でリビングアーマー先輩並みに強い。
これで真装使われたら、ダンジョンをフルに使っても勝率5割くらいじゃないか?
こんな化け物がポンと出てくるとか、魔王軍ヤバイ。
「俺は魔王軍幹部、ブラックドラゴンのドラグライトだ。
新たなる幹部よ。俺はお前を歓迎しよう。だが、一つだけお前に言っておかねばならん事がある」
そう言って、ドラゴンはマモリちゃん人形を鋭い爪の付いた指で指差した。
私はごくりと息を呑む。
もちろん、マモリちゃん人形は無反応だけど。
「ふんっ!」
そして、ドラゴンは……いきなりマッスルポーズを決めた。
筋肉が膨れ上がる。
しかも、ドラゴンはその姿勢のまま、熱い眼差しをマモリちゃん人形に向けてくる。
……これはどういう事だろう?
助けを求めるように魔王を見れば、魔王はやれやれとばかりに肩をすくめていた。
何か言ってくれ。
「人化して尚損なわれぬ俺の肉体美……惚れてもいいんだぞ?」
…………。
「リーフ、この方達を王都までご案内して差し上げて」
「は、はい!」
なんか、全てがバカらしくなった私は、とりあえず無視してリーフに丸投げしておいた。
リーフは困惑しながらも、「こちらへどうぞ」と言ってマモリちゃん人形を抱き上げ、私のガイドに従ってダンジョンの出口へと歩き出した。
ちゃんと仕事をしてくれて、私は嬉しい。
やはり、リーフは良い買い物だった。
「くっくっく。また振られたなドラグライト」
「ふっ。俺の肉体美に照れているのだな。可愛い後輩だ」
「お主はポジティブじゃのう」
さて、魔王が来たという事は、これにて前哨戦は終わり。
いよいよ、本格的に開戦のようだ。
気を引き締めた私は、とりあえず、ガーゴイルの火魔法と風魔法で服を乾かしたオートマタを、先生ゾンビのテレポートで王都に送り返しておいた。
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