105 幹部集結
魔王軍幹部達との待ち合わせの日。
私は、アワルディア共和国と次の国の国境に当たる街(正確には街の跡地)にオートマタとゴーレム&ガーゴイル軍団を派遣し、他の所から集まってきた魔物(魔王軍)を引き連れ、
そこに、前にドラゴンが占領してたウルフェウス王国とアワルディア共和国の国境の街に置いてあったのを回収したカオスちゃん人形を置いて、幹部達が転送されてくるのを待っていた。
そして、そんなに経たない内に、その時が訪れる。
「うむ。全員準備はできたようじゃな。では、送るぞ」
カオスちゃん人形がそう言った直後、カオスちゃん人形の周りの空間が少し歪んだ。
転送機能を使う時特有の現象だ。
数秒でその現象も収まり、空間が歪んでいた場所には大小様々な魔物達が現れた。
数は20体くらい。
そして、どいつもこいつも強そう。
というか強い。
鑑定できたからよくわかる。
恐ろしい限りです。
「では、仲良くするのじゃぞ」
そう言って、カオスちゃん人形は沈黙した。
私は、オートマタに頭を下げさせる。
「皆様、ようこそ、おいでくださいました。私は皆様の同僚にあたる新しい魔王軍幹部、マモリと申します。
以後、よろしくお願いします」
「あ゛ぁ? テメェが新しい幹部だぁ? ただの人間のメスじゃねぇか!」
そうしたら、いきなり頭の悪そうなのが絡んできた。
大きくて黒くて角の生えたゴブリンって感じの奴だ。
この時点で、私のこいつに対する好感度はマイナスである。
死んでから出直して来い。
ちなみに、こいつを鑑定したらオーガキングって出た。
ステータスは物理寄りで一万弱。
幹部の中では弱い方である。
「おい! 聞いてんのか人間のメス!」
「聞こえていますよ。ですが、その呼び方は改めてください。私は人間ではありませんし、それ以前に不快です」
「生意気だな! 死ねぇ!」
オーガキングが突然拳を振り上げた。
短気すぎる!
魔王に仲良くしろって言われたの覚えてないのか!?
でも、その一撃はオートマタに届く前に、護衛として連れていたミスリルゴーレムが止めてくれた。
「あ゛ぁ!?」
リビングアーマー先輩が完成して、創造ゾンビの手が空いたから何体か造っておいたんだけど、その判断は正解だったと言わざるを得ない。
やっぱり、例によって魔王軍幹部の扱いは難しい。
特にこいつは、私の嫌いなタイプって事もあって、今すぐ殺したいくらいだ。
「邪魔すんじゃねぇよ! 死に晒せ━━『オニマル』!」
そうしたら、今度は真装まで使ってきた。
巨大な黒い棍棒がオーガキングの手の中に現れる。
ちょ!?
そこまでやるか!?
「オラオラオラオラオラオラ! 《鬼ラッシュ》!」
ああ! ミスリルゴーレム!
なんて事!
オーガキングの連続攻撃で、ミスリルゴーレムはあっさりと破壊されてしまった!
許さん!
とりあえず、一回シメてやる!
「オラァ! 死ねぇ!」
私は、同じく護衛として連れていた爺ゾンビに真装を解放させ、同時に無数のミスリルゴーレムに命令を下した。
死ぬのはお前だ!
「待て!」
「あ゛ぁ!?」
しかし、そんな物騒な喧嘩を止める奴がいた。
白い影が私とオーガキングの間に割って入り、その棍棒をあっさりと受け止める。
それを見て、私は配下への命令をキャンセルした。
その隙に、壊れたミスリルゴーレムの残骸を回収して、ゴーレムメーカーに突っ込んでおく。
「こいつは使える奴だ。それに魔王様は仲良くしろと仰られた。その意向に背く者は俺が許さん!」
「うっ……!」
実力差は理解してるのか、殺気を伴った乱入者の威圧に当てられ、オーガキングは怖じ気づいた。
実に情けない。
大いに笑える。
そして、その乱入者がオートマタの方を向いた。
「大丈夫か、マモリ?」
「ええ、問題ありません。というより、あなたこそご無事だったんですね、シロさん」
そう。
この白い乱入者は、何を隠そう、前の戦いで一緒に戦った脳筋フェンリルだった。
てっきり神道に狩られたかと思ってたのにピンピンしてる。
どうやら、あの戦いから逃げ延びたらしい。
命強い奴。
「俺としては、お前が当たり前のように生きている事の方が不思議なんだがな。
お前が死ぬ瞬間を、確かにこの目で見た筈なんだが」
「私はそういう生態なので」
「なるほど。納得した」
これで納得するなんて、どれだけ脳筋なんだろう。
まあ、今に限ってはそっちの方が楽だからいいけどさ。
「チィ! 勇者に負けて逃げてきた負け犬が調子乗ってんじゃねぇぞ!
おい! ポーク、ヴァンプ、手伝え!
テメェらの大好きな人間の女だぞ!」
調子に乗るなと言いつつ、オーガキングは他の幹部に助けを求めた。
情けなっ。
しかし、名指しで呼ばれた二体の幹部、でっぷりと肥えた豚のオークキングと、牙と翼を生やした男のヴァンパイアロードは動かなかった。
「ぶひひひひひひ。
「我輩もだ。その女は何故かそそらん。第一、我輩が貴様の言う事を聞く義理はない」
「テメェらぁあああ!」
しかも断られた。
でも、あの二体も結構不快だなぁ。
オークはゴブリンと同じで人間の女を犯す習性があるし、ヴァンパイアは乙女の血を好むと言う。
つまり、生殖もできず血も流れてないオートマタには反応しなくても、本体になら襲いかかってくる可能性がある訳だ。
優先的に始末したい。
「こうなったら俺一人でも……!」
「ふぉっふぉっふぉ。やめておきなされ。チミにこの二人の相手は務まらんよ」
「なんだと爺ィ!」
今度は二足歩行の亀がオーガキングを止めた。
幹部の個性が豊か過ぎる。
「ここは儂に免じて引いてくれんかね、タンキくん。チミも儂を相手にするのは面倒じゃろう?」
ぷっ!
名前、タンキくんて!
鑑定で知ってたけど、他人の口から聞くとより一層笑える。
多分、魔王のネーミングだと思うけど、ぴったり過ぎるわ。
「あ゛ぁ!? テメェもあっちに付くってのか!?」
「勿論じゃよ。魔王の嬢ちゃんには仲良くせいと言われたしのう。逆らったら殺されてしまうかもしれんわい。ふぉっふぉっふぉ」
「……チィ!」
その一言が効いたのか、オーガキングは渋々と引き下がった。
そして、引き下がった先で他の幹部達にバカにされて切れた。
乱闘が始まる。
おい。
「さて、タンキくんがすまんかったのう、マモリちゃんや」
「いえ、気にしていませんので」
そう、私は気にしていない。
隙があったら最優先で暗殺してやろうとしか思ってないもん。
「それより、あっちは止めなくていいんですか?」
「なぁに、いつもの事じゃよ。あの戦力差ならタンキくんがボコボコにされて終わりじゃろう。殺しはせんから安心せい」
「はぁ」
別に殺してくれてもいいのに。
「さて! では早速人間どもを潰しに行くとするか! 今度こそ役目を果たしてみせよう!」
そう言って、フェンリルは一人でズンズンと進んで行く。
前回言った事をまるで守ってない。
まあ、今回は私の指揮下にある訳じゃないから文句は言わないけどさ。
続いて、オーガキングをボコボコにし終えた幹部達もフェンリルに続く。
そのオーガキングは、ボロ雑巾となってオークキングに引き摺られていた。
扱いが雑。
いや、いい気味ではあるけども。
そんな幹部達の後ろから、私の率いるゴーレム&ガーゴイル軍団と魔物の群れが続き、大所帯となって次の国へと向かうのだった。
私の感想はただ一つ。
やっぱり、魔王軍幹部は扱いづらくて嫌いだ。
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