116 神を殺せ 2
「ぐはっ!?」
ギロチンが、完全に魔法の発動に集中していた魔神の首筋に食い込み、その勢いで魔神を地面へと縫い付けた。
ダメージ自体は薄い。
でも、動けなくなった隙は大きいし、今の衝撃で魔法の発動はキャンセルされた。
再びのチャンス。
当然、逃さない!
「チェンジ『
再びデウス・エクス・マキナのコピー先を『
そして、今回はそれを目眩ましにして接近した。
突撃した私の後ろから、近接戦闘部隊が続く。
今回は、それをサポートする事をメインに、魔法部隊が魔法を放つ。
本当は遠距離オンリーで削り切れればそれがベストだったんだけど、さっきの攻防で、魔神は魔法の雨に撃たれながらでも大魔法を放てる事がわかった。
亀ゾンビがやられ、ミスリルゴーレムも減った今、もう一度あの状況になったらキツイと思う。
だったら、接近戦で押しまくり、大魔法を使う暇を与えないようにするしかない。
幸い、近接戦闘をこなせる連中はまだ殆どが無事。
魔王ゾンビも、神道ゾンビも、ドラゴンゾンビも、フェンリルゾンビもいる。
やってやれない事はない筈!
「《サンダーソード》!」
攻撃準備。
剣に雷の魔法を纏わせる。
そして!
「《フルパワースラッシュ》!」
「ぐはっ!?」
次なるアーツを使い、それを全力で振り抜いた。
その一撃が、全く態勢を立て直せてなかった魔神の体を真っ二つに斬り裂く。
しかも、電熱で傷口が炭化するレベルで焼けた。
殺ったか!?
「舐、め、る、なぁああああああああ!」
魔神の上半身がそう叫び、速効でダメージを全快させて剣を振りかぶった。
チッ!
やっぱり、この程度じゃ無理か!
「《スラッシュ》!」
「ッ!?」
ならばと、今度は剣を握った腕を斬り飛ばす。
どうもこの魔神、戦闘技術に関しては素人同然だ。
多分、今まではスペックの差に任せたゴリ押ししかしてこなかったんだと思う。
だから、さっきのギロチンも避けられなかったし、こんなに簡単に腕を斬れた。
これは嬉しい誤算。
そして、これで真装による強化は一時的にでも消えた筈。
すなわち、フルボッコのチャンスだ!
「《クロスソード》!」
「ぐあっ!?」
魔神の体を十字に斬って四分割する。
縦に裂かれた魔神の顔が、憤怒の表情で私を睨む。
でも、その怒りを行動には移させない。
「《ブレイブソード》」
「《ディザスターブレード》」
「ぐっ!?」
私に続いてきた近接戦闘部隊の中でも特に速い二体のゾンビ。
神道ゾンビと魔王ゾンビが、私に少し遅れて魔神の下へと到着し、更なる攻撃を叩き込む。
光の斬撃と闇の斬撃が魔神の背後から襲いかかり、今度は魔神の体をバツ印型に斬り裂いた。
これで八分割。
「ふざけ……!」
「レーザービーム!」
「がっ!?」
今度は範囲を絞ったレーザービームを、ピンポイントで叩き込み、魔神の体を光が呑み込んだ。
今度こそ殺ったか!?
「調子に乗るなぁああああ!」
ゲッ!
まだ生きてる!
しかも、またしても瞬時に体を再生させて完全復活しやがった!
しぶとい!
「《ストライクソード》!」
「そう何度も食らうと思うな!」
追撃に放った超速の突きは、腕を盾にして止められた。
剣が腕に突き刺さり、電光で内部から破壊したけど、この程度の傷はすぐに再生される。
「《黒槍》!」
「うっ!?」
そして、攻撃を止めた隙に魔神が闇の槍を放つ。
それを何とか盾で受け止めるも、衝撃で後ろへと飛ばされた。
ボス部屋の壁に勢いよく叩きつけられる。
「かはっ!?」
ガードしたというのに、リビングアーマー先輩越しでも、かなりのダメージを受けた。
すぐにDPでリビングアーマー先輩のダメージを、回復魔法で私のダメージを回復させる。
それにしても、ただの単発攻撃でこの威力……!
やっぱり強い。
スペックの差が大きすぎる。
「よくもやってくれたね。お返しだ!」
魔神が地面を蹴って宙に飛び上がる。
そのまま、魔法の発動準備に入った。
そう簡単にやらせるか!
私に先んじて、ある程度の自己判断能力を持つ魔法部隊が迎撃の魔法を撃ち込む。
でも、完全に威力不足で効いてない。
だからこそ、私自らが動く!
「チェンジ『
『
その効果は、自分と味方数人の速度上昇と飛行能力の付与。
それによって私と魔王ゾンビ、神道ゾンビの速度を跳ね上げ、魔神が魔法を発動させる前に突撃する!
「甘いよ! 《黒い旋風》!」
「くっ!」
それでも、魔神の魔法発動の方が早かった。
黒い風が吹き荒れ、突撃した私達を薙ぎ払う。
ついでに、魔法部隊の魔法を薙ぎ払われた。
けど幸い、威力よりも発動速度を取ったらしく、ダメージは軽微だ。
でも、代わりに追撃不能の隙が出来てしまった。
「終わりだ……ッ!?」
魔神が魔法を発動し終わった瞬間を狙い、壁から一本の矢を放つ。
以前はさんざんお世話になった矢のトラップ。
DPによる強化によって、銃弾以上の速度で放たれるようになった攻撃。
それが、魔神の左目に突き刺さった。
「痛っ!? ……この程度で僕を止められると思ったか!?」
思ってない。
だから、これは目眩まし。
本命はこれだ!
「《ドラゴンクロー》」
「《フェンリルクロー》」
「何っ!?」
魔神の頭上を取ったドラゴンゾンビとフェンリルゾンビのツープラトン技によって、魔神が地面へと撃墜する。
『
6人だ。
魔神を殴るスペースの問題で枠が一つ空いたけど、それは置いておく。
とにかく、今回はそれを利用した。
私と魔王ゾンビ、神道ゾンビといった最高戦力を囮に使って魔神に迎撃させ、魔法で撹乱し、矢で注意を引き、『
しかも、丁度近くにいた隠密ゾンビに『神隠し』をかけさせるというおまけ付きで。
作戦は成功。
魔神は近接戦闘部隊の近くへと落下し、袋叩きに合ってる。
当然、それだけじゃ決定打は与えられない。
だから、『
次で仕留める。
「……もういい」
その瞬間、そんな声が聞こえた。
感情が消え失せたような、冷たい声。
その声を聞いた瞬間、背筋が凍った。
「もういい。もういいよ。消耗を気にして戦うのはやめだ。エネルギーが尽きる前に女神を殺せばいいだけの話なんだから。
ここからは、━━
そう宣言した魔神の体を、赤黒い魔力が包み込んだ。
魔神から感じる威圧感が一気に増す。
こ、これは……!?
「《暗黒闘気》」
これは、魔王の使っていたスキル。
暗黒闘気。
ステータスを大幅に強化し、更に闇属性の攻撃を常時繰り出せるようになるスキル。
そう認識した瞬間、私の視界から魔神が消えた。
消えたと、そう錯覚する程の超スピード。
目では追えない。
ダンジョンマスターとしての感覚が、辛うじて
「ッ!?」
その感覚に従って、咄嗟に体を横に倒す。
その直後、何もしなければ私の体を縦に両断しただろう斬撃が通り抜けていった。
いつの間にか真装を取り返したのか、それとも私の知らない技術で再展開でもしたのか、その手に黒い剣を握った魔神による斬撃が。
━━私の右腕を根本から断ち切りながら。
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