第十二章 答え

第84話 門での見張り

タリスは呆然とその場に立ち尽くした。


アリシヤがオルキデアを出ていったあの日。

タリスはアリシヤの背を追いかけようとした。


どうしたらいいか。そんなことは分からない。

だが、このまま放っておくことなどできなかった。

そして、店を出て、足を止めた。


すさまじい数のエーヌの民がオルキデアを囲っていたのだ。

タリスはとっさに店内に戻り、剣を手に取った。

エーヌはその動きを許した。


多勢に無勢だ。勝てるはずもない。

そして、何よりセレーノを身の危険にさらしてはいけない。


タリスは店から出ることができなかった。


しばらくすると、エーヌの民は去っていった。

タリスは駆け出した。


アリシヤに何かあったに違いない。

アリシヤはきっと、城に向かったはずだ。

無事ならば城まで逃げ込めているはずだ。


城に駆け込み、門兵にアリシヤのことを訊いたが、望んだ答えは帰ってこなかった。


アリシヤは城に来てない。

タリスの顔から血の気が引いた。


タリスはそのまま、リベルタを訪れる。

リベルタに事の次第を伝えると、彼は即座に立ち上がった。


「行こう」

「でも、どこへ行ったか―」

「大丈夫だ。俺にあてがある」


いつもの頼もしい笑顔でリベルタは答えた。


***


タリスは、リベルタに王都から少し離れた小さな村に待機を命じられた。

村には、見張り台を兼ねた大きな門が設置されていた。


「ここで、待機しておいてくれ。明後日の夜明けには戻ってくる。もしそれまでに戻ってこなかったら、アウトリタに知らせてくれ」

「分かりました」


タリスは二人が帰ってくるのを今か今かと待った。

見渡しのいい門の上に立ち、リベルタが地図に示した場所を見やる。

そこから出てくるらしい。


あたりを見渡した。

ちらほらと廃屋が見える。


この隣の村は魔王に滅ぼされた。

こちらの村は滅ぼされなかった。


その違いはなんなのだったのだろう。

こんな近隣にある村なのに何が命運を分けたのだろう。

いや、ただの魔王の気まぐれか。


タリスは思考をやめ、見張りに戻った。



月が上がってしばらく経った。

リベルタとアリシヤはまだ戻ってこない。

次の夜明けにはまだある。


だが、焦りがタリスを駆り立てていた。

当てがあると言ったリベルタはそれが何か教えてはくれなかった。

タリスは、落ち着きなく門の上を行ったり来たりする。

しばらくそうしていただろう。


「あ!」


タリスは思わず声を上げた。

暗がりの中、小さな光が見えた。

リベルタの持っていたランタンだ。


確証はない。

だが、おそらくそうだ。


タリスは門を下る。


夜間の行動は危険だ。

ここらへんは山賊もいる。

軽率な行動は控えるように言われている。

だが、今はそんなことより、二人の安否が知りたかった。


二人を迎えに行こう。


タリスは足早に光の下へ向かった。

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