第21話 村の罪を語る

部屋に一瞬の沈黙が訪れる。


「くそっ!」


あからさまに苛立ちを見せる男。その矛先がペルラに向かう。

男の右足がペルラのわき腹を蹴り上げる。


「ペルラさん!」


ペルラは逃げるそぶりも見せず、それを受け止め苦しげに呻いている。

男の足が、うずくまるペルラに向かう。


「やめろ、マット」


村長が低い声で告げる。

マットと呼ばれた男は舌打ちをし、その足を村長に向け、彼を蹴り倒す。


「うっ!」


村長が壁際に、倒れるとペルラを踏みながら男が悪態を吐く。


「チクショウ、なんで、どうして…っ!クソが!!」

「申し訳ございません…」

「申し訳ないじゃ済まねえんだよ!」


村長がわずかばかり顔を上げる。


「そこの赤毛見張っとけよ。逃がすようなことでもしてみろ。この村のガキ、全員皆殺しにしてやるからな!!」


そう吐き捨てて男は出ていった。

男が消えると、地面に伏し苦しむペルラに村長が歩み寄る。


「ペルラ…大丈夫か」

「大丈夫です、お爺様。お爺様、私はやっぱり」

「ああ…ああ。分かっている。だから今は家にお帰り。ピノを待つんだ」

「わかりました」


村長はペルラを送ると、縛られたアリシヤの前に椅子を置く。

そして、アリシヤをじっと見つめた。


「赤の人。ピノは…本当に病気なのだろうか」


村長の問いにアリシヤは頷く。


「ええ、でも—」

「彼らはもういない。だから真実を語ってほしい」


村長の真摯な目に、アリシヤは息を詰まらせる。

一瞬ためらったが、口を開く。


「嘘です。あの子はとっても元気な子です」

「ならよかった…」


村長はため息をつく。先ほどまでとは別人のようだ。

村長のまとう排他的な空気は消えている。


「なぁ…赤の人。君はどこまで知っている?」

「この村がエーヌを語る者たちに搾取されている、ということでしょうか」


アリシヤが言うと村長は首を横に振り、わずかに微笑んだ。

それは悲しい笑顔だった。


「赤の人。君の両親は?」

「知らないのです」

「そうか。赤の人。私は昔、君と同じ赤い色の男に会ったことがある」


アリシヤは息を呑む。今までに自身と同じ赤を持つ人間と出会ったことはない。


「それは、どなたですか?」

「…そうだな。君は知るべきかもしれない。いや、知っておいてくれ」

「何を…ですか?」

「我々の為した罪。今から話す、魔王にかかわる恐ろしい罪を」

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