第35話 女王とそのお付き
アウトリタは苛立っている。それもそのはずだ。
彼の後ろを行くフィアも納得していた。
「アウトリタ」
「何故、余計なことを言ったのですか」
いつも通りの硬質な声の中に怒りが見え隠れする。
「疑いを持たれては困るのです。それをわざわざ―」
「ごめんなさい」
だけど。
フィアは続ける。
「あの子は、私たちにとって大切な人の子、だから―」
突如、アウトリタが振り返る。
そして、フィアの肩を強くつかんだ。
「まだそんなことを言うのか」
アウトリタの大きな手に力がこもる。
肩に鈍い痛みが走る。だが、フィアは動じない。
「私は殺した。エレフもディニタも皆、皆…!」
「それは違う―」
「違わない」
フィアの言葉を遮り、アウトリタは重く言葉を吐く。
「私が殺した」
アウトリタの手の力がかすかに緩む。
「今更引き返せない。だからフィア様…どうか、どうか…」
アウトリタはフィアの肩に手を置いたまま項垂れた。
懇願するかのようなアウトリタの言葉にフィアは言葉を詰まらせた。
幼い頃の彼を思い出す。
家族を皆殺され憎しみに燃えた幼い少年の姿を。
「アウトリタ。貴方の願いは私の願い。それを違えることはない。約束します」
アウトリタはフィアから手を離し、まっすぐフィアを見つめる。
「その言葉、信じています」
彼の茶色いまっすぐな瞳に、フィアは頷く。
「ええ、だから共に終わらせましょう。この“物語”を」
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