第六回 ラヴクラフト御大の作品を読んでみよう
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拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。
とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。
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【初めに】
こんにちわ。ついに新たなる芸名「
そうそう、第五回に何か①とかついていますが、その後すぐに②をやるとは限らないということで、今回はちょっと毛色の違う講座です。今回は読者の方からのリクエストが有りましたのでまず真っ先にラヴクラフト御大の作品をどっから読もうねって話をしましょう。読みづらい作品も多いし。
クトゥルフ神話は非常に自由なアイテムですので、別にどんな使い方をしても良いし、あなたが思うクトゥルフ神話がクトゥルフ神話になるので、別に原典に当たる必要は無いと思ってます。読みづらい作品引いちゃうとしんどいし。
ただそれでもラヴクラフト御大が書いた作品こそが、神話の土台となった作品であり、何を書こうとも描こうともクトゥルフであれば結局その影響からは逃れられない以上、読まないよりは読んだ方が良いとも思います。読みづらいし長い作品も多いけど。
正直言って、長い話も難しい文体もばっちこいなパワー系読書マンだったら特に下準備とか無しで興味のある作品や好きな神格の出る作品をガツガツ読んで行けばいいと思います。今日はできるだけライトに楽しむことを大事にお話したいと思います。
【前準備~衝撃を緩和する為に~】
いくら頑張って翻訳したからといって、ラヴクラフト御大の衒学的かつ古風な言い回しはわかりにくいことが多いです。
先に漫画や超訳作品で話の筋を予習するのが吉です。
まず漫画でオススメなのはビームコミックス様から出版されております田邊剛先生の「ラヴクラフト傑作集」です。ラヴクラフト御大の作品の中でも
続いて超訳作品です。これは「超訳 ラヴクラフトライト」のシリーズです。こちらは原作に忠実な作品ではないのですが、読みやすく、また現代日本の読者にとって共感しやすく再構成されているので、話の筋を予習するというよりも、原作小説を読む為の入り口として読んでみることをオススメします。
こちらの作品のイラストを担当なさっているおおぐろてん様には、このクトゥルフ講座の丸パクリ動画がyoutubeに上げられてた時に、法的な対応のことについて教えていただいたことがあります。マジ助かったんですよ……。イラスト、エロいし絶妙に不安を煽る良いイラストなんですよ。
【入門~読みやすいところから行ってみよう~】
そういう訳で下準備で挙げた作品を読んだことで、慣れてきた皆さんには入門編です。簡単に読めて面白いラヴクラフト作品をピックアップです。
○エーリッヒ・ツァンの音楽
日本で初めて翻訳されたラヴクラフト作品です。
ある不幸な音楽家が夜ごとにかき鳴らす独創的なヴィオル(ヴァイオリンに似た楽器だと思ってください)の音色。
それに魅了された主人公が、その曲の魅力に取り憑かれて追いかける内に、何処とも分からぬ世界の扉に片足を踏み入れてしまう。
ラヴクラフト作品の魅力である「人知を超えた存在との遭遇」と「それに伴う自己の世界の変革、その恐怖」がこれでもかと詰め込まれた一本です。
○ダゴン
「ああ、窓に! 窓に!」で有名なアレです。
それだけ言えばもう充分ですよね。狂気の描写といえばこれですよ!
○冷気
全体に漂う不気味な死の香り。
そして最後に明かされる畸形なる知の正体。
碩学は果たして何処から禁断の知識を手に入れたのか。
簡潔にまとまっていながら、クトゥルフ作品を読み込んだ後にもう一度帰ってきたくなる味わいです。
○神殿
潜水艦を舞台にした物語。私の最も好きな作品です。
ドイツ軍人である主人公は、ある日部下が水死体からネックレスを奪ってからというもの、艦内で頻発する奇妙な事件の処理に悩まされます。
故障した潜水艦で海中を運ばれる心細さが伝わってくる絶品ですので、どうぞ呼んでみてください。
○闇をさまようもの
折角ですので上の四つを読んでからこれを読んでみてください。ラヴクラフト最後の作品です。あのニャルラトホテプが堂々たる邪悪として、手ずから主人公に会いに来るというその一点で、もうオススメしたいじゃありませんか。御大のかわいがっていた後輩作家ロバート・ブロックをモデルにした主人公が、どんどん追い詰められていくのは、本当に楽しんで書いたんだろうなあと思えて笑みがこぼれてしまいます。
ちなみに青空文庫でも読めちゃいますね。
【発展~少し読み応えのあるものを~】
○異次元の色彩
名作of名作。これを読まないという手は有りません。ホラー作品として純粋に出来が良いんですよぉ! 雪車町地蔵様の「血眸~暗澹たる日々~」の元ネタにもなっているので、あの作品が好きだった方は是非読んでみてください。
○クトゥルーの呼び声
CoCの基本ルルブを持っていれば誰でも読んでいる筈ですね? 筈ですよね!!
ルルブ持ってないという貴方は! 買ってください!
買わなくても良いのでラヴクラフト全集の2巻目を買って!
でも一番のおすすめは! 森瀬繚先生の翻訳なさった! 星海社バージョン!
鬼哭街の中央東口先生の絵とあいまって!!!!!
すごくエモ(情感にあふれるの意)!!!!!!!
ちゃんと神殿も収録している辺りが流石分かってらっしゃる~~~~! ファンはそういうことされるとくねくね喜んじゃう~~~~!
クトゥルフ神話TRPGやるって人は絶対に読むべき作品です。だから基本ルルブに載ってる訳だし! でも本当にゼロベースの人が一発目から読むのも大変かなと感じたので、こちらでご紹介!
○銀の鍵の門を越えて
ラヴクラフト御大の考える宇宙と神の終着点。究極とは何処に有りや、真理とは何処に有りや。アメリカ人であるラヴクラフト御大の視点で解釈した悟りの境地の表現なのではないかなと感じました。でも仏教について知識とか有ったのかな? ざーっと見ている感じだと、接点が無さそうなんですよね。知っていたらもっと幸せになれていたかもしれないと思うのですが……これはもう少し調べたいと思います。
自らの心の浮かぶ曖昧模糊としたイメージを形にしようと小説を書いたラヴクラフト御大の作品としては、間違いなくチェックしておくべきものです。これを読むと他のドリームランド系の話も読まなくちゃってなるので沼です。
○インスマウスの影
こいつもまた名作。情景描写が良いんですよ。シンプルな脱出系の物語と見せかけて、本当の恐怖が後から迫ってくる構成も最高。あといわゆるクトゥルフ神話の魚魚してるイメージの源の一つです。
長いけど!
長いけどやっぱこれは良いものなんですよ! 長くてもなお読んで欲しい!
○闇に囁くもの
みんなのアイドルことミ=ゴさんのお話です。脳缶が有名すぎてアレなんですが、途中までの屋敷の中でじわじわと追い詰められていく描写が秀逸なんですよ。次々死ぬ犬とか。おい、ミ=ゴさんの弱点が犬と言ったのは何処の誰だ。めっちゃ犠牲出てるじゃねえか! 俺は犬派だぞ! ミ=ゴお前ら一生許さんからな! となってしまう作品です。私の作品ではそういう憎しみを込めてミ=ゴの扱いは大体悪いです。犬をいじめたからな。
未知の存在、すり減っていく戦力、崩壊する正気、筆舌に尽くしがたい閉塞感と爆発する恐怖、宇宙的真実! いい作品です! 長いけど!
【個人的おすすめ~でもいきなり読ませるのもしんどいかなと~】
○チャールズ・ウォードの奇怪な事件
濃厚な探索が楽しめるクトゥルフ神話ofクトゥルフ神話。きっちりと探索者側が結果出しているのも個人的に熱い!
クトゥルフ神話的に熱い魔術書ネクロノミコンや、TRPGで見覚えの有る魔術など、とにかく思わず唸る品々と濃厚なラヴクラフト文体が! 最後までぎっしり詰まっているんだぜ!
ここまで来たらこれだけで興奮できる体質になっているはずなので読もう! 読もう!
○狂気の山脈にて
長いんだ。チャールズ・ウォードもこれも長い。でもみんな大好きショゴス君が出て来るし、パシリムのデル・トロ監督が映画化しようとしているし、読まないのは損ってものだろうと思ってですね。ご紹介です。
読んでるだけで雪と氷と悪天候に閉ざされ、洞窟の中の吐く息すら固まる感覚に酔いしれることができる名作です。
【最後に】
という訳でリクエストにお応えしまして、ラヴクラフト御大の作品についてまとめてみました。分かっちゃいたけどあれですね。紹介したい作品が有りすぎて全部出すの無理ですね。実は紹介できてない面白い作品がたくさんあります。そのうち語ります。
それはそれとして、ここまで来たということで言っておきたいのは折角だし金払って読もうということです。
ラヴクラフト全集かなにかでこれらの作品が載っている部分だけ買って、読んでみてほしいんですよ。大丈夫、一冊だけならTRPGのルルブよりも安いし、ガチャよりも安い。六百円払うと無料であの名作が読めちゃいます! 経済回していきましょう! 身銭を切って得た知識は強い!
あと報酬が有ると頑張ります。
評価を貰ったり、買ってもらったり、そういうものが有ると作り手は喜ぶのです。
逆にそういったものがないと、作品は作れなくなってしまいます。
今でこそ大作家のラヴクラフト先生も、生前は暮らしていくのが大変だったんですよ。
なのでどうぞ邪神任侠の出版の際には応援よろしくお願いします。
売れると! こっちの講座の内容を充実させるための資料を沢山買い込めるんです! お願いします!
という訳で次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬよう。
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