第16回 イスの偉大なる種族ってなぁに?

【宣伝】


 拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。

 とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。


 アマゾンの購入ページはこちらです!

 http://amzn.asia/bzDadtK


【初めに】


 こんにちわ。土曜日ですね。最近、クトゥルフの古典と鈴森君をしっかり読みなおしているところなのですが、めっちゃMPとかPOWとかSANとか削れていきそうになりますね。特にラブクラフト御大の作品はひたすら読みづらくて、それだけで疲労が溜まっていきます。それでも読むのはきっと面白いからなんでしょうね。鈴森君の場合がスゥ~っと染みてありがたい……。


 その点、ブライアン・ラムレイ氏のタイタス・クロウサーガの短編集は読みやすくて面白くてありがたい……。続・黒の召喚者とかは思わず身震いしちゃいました。


 ブライアン・ラムレイ氏は世間が吸血鬼や超能力、DNAの怪物といった存在について騒ぎ立てていた期間も、当時としては古臭くなりつつあったクトゥルフ神話に自分なりのアレンジを加えて神々の灯火を絶やさぬよう戦い続けた古強者でもあります。願わくば彼のように粛々と書き続けることで、私も久遠に続く神話の世界の一頁となりたいものです。あ、ちなみにタイタス・クロウサーガ最新刊「ボレアの妖月」が出版されたそうなので皆さん買ってください。私もお金と時間の都合つき次第急いで読みます。


 さて今回はイスの偉大なる種族を取り上げます。こやつらも独立した種族なのですが、何せ時間を自由に旅行できるという特質が有るので様々な物語で便利に使えます。タイタス・クロウサーガの「タイタス・クロウの帰還」でも出てきますよ。


 という訳で早速イスの偉大なる種族について知識を深めちゃいましょう!


【概要~時をかける神話生物イース~】


 イスの偉大なる種族、あるいはイースの大いなる種族は非常に高度な文明を築き上げております。彼等は人間など及ぶべくもない超技術により、時間旅行の秘法を発見し、それを利用してまた自らの文明を進歩させているのです。非常に勤勉ですね。


 時間旅行と聞いてピンと来たそこのあなた。良いセンスです。そうですよ、クトゥルフ神話の世界で時間旅行なんてしようものならあの青くてネトネトした「ティンダロスの猟犬」に襲われてしまうんじゃないかと心配になるのは当たり前です。


 ところがどっこいこの偉大な種族は完璧に奴らの目を誤魔化します。


 何故彼等がティンダロスの猟犬を誤魔化すことができるのかは分かっていませんが、理由の一つとして彼等の時間旅行のスタイルが非常に特殊であることが挙げられると思います。


 彼等は時間旅行の際、自らの身体はそのままに、精神だけを別の知的生命体の肉体に送り込むのです。これは彼等が精神生命体だからこそできた技術・発想なのでしょう。これによりタイムパラドックスの発生も軽減されますし、何より質量保存の法則に反することはまず有りません。


 勿論これだけでティンダロスの猟犬による追跡をかわしている訳ではないでしょう。何せ水晶球で過去を覗き見ただけの男さえ、ティンダロスの猟犬には殺されてしまうのですから。ただ、この特殊な時間移動ならばあくまで外側は「その時代の知的生命体」な訳ですし、移動そのものはすぐに終わります。水晶球を覗くように、自分の精神だけを現在から過去にまたがる形で拡張している訳ではないので、比較的見つかりづらくはなっていると思われます。


【概要~大いなる種族、その優雅なる生活~】


 イスの偉大なる種族は非常に発達した文明(核とか電気銃とか)を持っており、日々の糧を得る為の労働は殆どしなくて良いことになっています。


 代わりに各種の知識を得る為の研究ですとか、芸術に関しての探求を行っているようです。


 入れ替わる知的生命体は多くの場合、その種族の知的階級の個体が選ばれます。彼等は自らの肉体と引き換えにイスの大いなる種族の肉体を得て、彼等の星で一時的に暮らすことになります。クトゥルフ神話TRPGサプリ「比叡山炎上」では織田信長も精神交換をされていたという説が有ります。


 その間に何か苦役や拷問をされる訳でもなく、逆に大図書館で自由に知的活動を行うことが許されています。また、彼等が元居た世界について本を書くことをしばしば依頼されるそうです。協力的な場合は街への外出許可も与えられ、そこそこ悪くない待遇が待っているそうです。


 こういう話を聞くと「一次選考オチばっかりの俺が異星人に誘拐された先でベストセラー作家になってウハウハな件」とか書きたくなりますね。皆さんどうか使わないでおいてください。まあヒロイン不足すぎてちょっとラノベにはできなさそうだけどね!


※なお、萌え萌えクトゥルー神話辞典でのイスの偉大なる種族は非常に可愛い眼鏡っことなっております故、是非ご一読ください


【概要~イスの偉大なる種族の過去と未来~】


 ヒロイン不足になると言った原因はイスの偉大なる種族の現在の外見にあります。


 なにせ虹色の円錐体の頂部から四本のホースが伸びており、それがそれぞれ頭・鉤爪・移動用の尻尾みたいな器官となっている異形です。頭なんか目が三つで花みたいなものもくっついている奇妙な外見です。とてもじゃないですがヒロイン力不足です。まあぶっちゃけると「主人公が異星人の肉体に押し込められたことで、脳の構造や認識能力が変化して、イスの偉大なる種族も美少女に見える」とかやれば大丈夫だと思いますよ。手塚治虫の火の鳥ですとか、ニトロプラスの沙耶の唄みたいな感じですね。


 ところで沙耶の唄リスペクトで書いてみた「幸福の邪神様」読んで下さい。お願いします。個人的にはトルタに出した同時多発失恋玉突き事故小説である「失恋童話」と双璧で気に入っているんですよ。こっちは純愛です。


 さて、先ほどと申し上げました。そう、イスの偉大なる種族は精神交換によって寄り代とする種族を次々変えていきます。我々人間を精神交換の対象として選んでいる時代のイスの偉大なる種族が先ほど申し上げた外見であるというだけの話なのです。

 

 では今まで、そしてこれから、イスの偉大なる種族はどのような姿をとっていくのでしょうか?


 彼等の歴史はイスと呼ばれる世界から始まります。故にイスの偉大なる種族という訳です。この歴史以前にも彼等は存在していた筈なのですが、その辺りの記述は何故か残っていません。彼等は元々イスに居た両生類的な生物の身体を乗っ取ります。この身体を利用して自らの精神を維持する装置を作り、この地にて最初の繁栄を謳歌します。ところがこの繁栄も終わりを迎えます。このイスの世界に未曾有の大災害が起きるのです。


 この災害によってイスの偉大なる種族は慌てて地球へと自らの精神を飛ばします。そこで現在よく知られるイスの偉大なる種族としての姿を得る訳です。地球にやってきた当初、彼等の敵は「飛行するポリプ(盲目のもの)」と呼ばれる凶暴な種族でした。彼等を狩る武器として有名なイスの電気銃が開発されたと聞きます。透明になったり風を起こしたり常に飛行して頭上をとるポリプに対して電気銃はどのように有効だったのでしょうか。実体を持たない電気弾が、風を起こしたり空を飛んだりする敵に良く効いたのかもしれません。ともかく彼等は飛行するポリプを封じ込め、再び文明を築きあげるのです。我々地球人類が精神交換される先は大体この文明です。


 こうして再度繁栄した偉大なる種族ですが、彼等は飛行するポリプによる逆襲を受けて滅びることも決定づけられています。そこで、彼等は更に未来へと精神を飛ばし、その先に居る甲虫のような群体生物に成り代わる予定です。更に地球が滅びる時は水星の球根状生命体に精神を移して乗り切るのだとか。


【概要~イスは何故滅びたか~】


 さて、ここからは個人的な推測です。そもそも何故イスは滅びたのでしょうか。そしてこれだけの知識を持ちながら、何故魔術には手を出さないのでしょうか。


 クトゥルフ神話TRPGにおいて、イスの偉大なる種族には二種類が存在します。すなわち先ほど述べた一般的なイスの偉大なる種族、そして甲虫のような群体生物としてのイスの偉大なる種族です。


 TRPGのルルブによれば前者は魔術をめったに学ぶことがなく、後者に至っては知的な規律を乱すものと考えています。過去、地球をクトゥルフやミ=ゴと分割統治していたことからすると、魔術の知識は有ったにも関わらず、それらを積極的に使わなかったことは明らかです。


 私はその原因が最初のイスの世界の崩壊に関わっていると考えています。クトゥルフ神話における奉仕種族の多くは蛙のような両生類的外見をとっており、イスの世界におけるイスの偉大なる種族の寄り代となった種族が元々魔術に長けていた奉仕種族の一つだった可能性は有ります。


 その種族の知識を生かして魔術的な儀式を行ったところ、旧支配者なり外なる神を招いてしまい、旧神による歴史干渉が発生、イスの偉大なる種族は今までの歴史を失ったと考えるとロマンが有りますよね。なお旧神による歴史干渉はシアエガの覚醒時にも発生しております。


 魔術を習っている極小数のイスの偉大なる種族は、この時の生き残りかこの時の生き残りから魔術を習ったものかもしれません。


 また、魔術的な災害で呼び起こされる神は彼等が生きる時間そのものを消し去りかねません。狂信者による神の招来はイスの偉大なる種族にとっても迷惑なのです。そこで彼等が探索者に協力することもしばしばありうることでしょう。探索者達に協力的なNPCとして出すにはもってこいの種族です。


 ただし、種族の中でも魔術を知っているものは居ます。なのでイス内部の狂信者というキャラを出して、PCには正気を保ったイスの偉大なる種族と奇妙な共闘を演じてもらうのも一興かもしれません。


 この仮説についてはご自由にお使い下さい。できればついでに宣伝して、面白かったらポイント入れてくれるように言って下さい。お願いします。


【最後に】


 という訳でリクエスト頂いたイスの偉大なる種族でした。リクエスト本当にありがとうございます。なにせ設定の多い種族なものですから考察や記述の甲斐が有って、本当に書いていて楽しい回となりました。


 それにしてもこの電気銃がロマンに溢れてて楽しすぎる。クトゥグアのところで紹介した炎の剣とこの電気銃で武装したサイボーグ邪神ハンターに暴れてもらう話とかやりたいですね。


 ロボットバトルの世界に出てきてしまうと世界観がブレるので、これもA Big Cの方でやらせていただきましょうかね。コンテストに出す方は三万文字中編で始まりの物語となりますが、別のエピソードを別作品として中編で出すくらいはきっとセーフですし。


 クトゥルフ神話の世界を楽しんでもらう為に始めたこのエッセイですが、最近は皆様に楽しんでもらえているようで何よりです。もっともっと楽しんでもらう為に今後も頑張っていきたいと思います。


 それでは、次回までに闇からの囁きにくれぐれも耳を傾けぬように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る