第二十三回 病気とクトゥルー神話

【初めに】


 お久しぶりです。海野しぃるです。ちょっとした告知があるのでお時間いただきますね。

 皆さんご存知かもしれませんが私はステージⅣの悪性リンパ腫にかかってしまいまして、しばらく更新お休みを頂いておりました。肝臓膵臓骨髄に転移してて死ぬかと思いましたからね。死ぬかもと思ったので生きてきた上での心残りを潰して回ってたんですが大体潰れたので良かったです。あとは善良勤勉会社員として自由溌剌物書きとして好きに生きます。やったね。具体的なことは個人情報であり社内の情報でもあるので言えないけど俺の安定的かつ継続的な雇用はバッチリ守られているので会社最高です。薬剤師を目指す学生でこれ読んでる人は弊社入って俺の後輩になると良いと思うよ。社名ここで具体的に言えないし、社員として絶対に言わないけど、それでも薬剤師を目指している学生ならその気になれば簡単に推測できるかと思われます。


 そう、話題を悪性リンパ腫に戻しますが、他の癌と違って悪性リンパ腫はステージⅣだからといってもう治療が難しいなんてこともないのです。無論ステージⅠよりは死亡率高めですが、強めの抗癌剤(相性良いのがあった)を使って徹底的に治療して、二年間再発が無ければ生命予後は健康成人と変わらないです。なのでまあ俺も大丈夫なんじゃないでしょうか。髪は抜けて爪は変色していますが、これは一時的な薬の副作用。血液検査の結果もそこそこ良いし髄液検査の結果も良いし脳転移もなく、転移予防の髄腔内注射もしてもらったので無敵と言っても良いでしょう。少なくともすぐには死にません。余談ですが治療中の強敵はSNSアカウントに突撃かましてくるインターネット厄介アカウント、同じ部屋のおじいさんのイビキ、同じ病棟から聞こえてくるSANチェックに失敗した感じの成人男性の雄叫び、それに巻き込まれる看護師さんの悲鳴でした。地獄味ありましたね。地獄でなぜ悪い? ともかく入院なんてするもんじゃないぜ! あと三回くらいは入退院繰り返さなきゃなんだけどね!


 さて、死を近くに見てきたことでやはり人間の卑小さ・世界の広大さ・神々の力のようなものを感じてしまいましたね。そう、偉大なる旧支配者の前では私も皆さんも虫に過ぎません。五分の魂を胸に抱いてそれぞれ生きるべく生きて死ぬべく死にましょう。

 そんな話題を枕として今回取り扱うのは病のクトゥルー神話。細菌・ウイルスについて、薬剤師としての医学薬学知識を織り交ぜてお話できればと思います。今流行りだもんなコロナとか! 今、コロナ発症しちゃうと他の人と比べて死亡率が倍以上に跳ね上がるみたいなんですよ僕~! なので個人的にもとってもホットな話題です。信仰と病は密接であり、古くはキリストが盲人の目を開き、仏教徒は日本で施薬院を開き、イスラム教徒は猫ちゃんの為の動物病院を開き、やべえカルトは病人の財布を開いています。そういう訳で今回は簡単に病気にまつわる神様についてご紹介したいと思います。それでは始まり始まり。


【病の神々】


 まず最初に言っておくべきことがあります。クトゥルー神話の神々は私たち人間の神々ではありません。なので人間の病気とかクソどうでもいいケースが多く、これを自分の権能の軸として扱っている神もそんなに居ないのです。それでも病気を操る神として名前が上がっている神もいます。ですがとにかく少なく、この観点で神を纏める資料なんて当然ありません。ここで紹介した神以外にも気になるものがあれば是非ご報告ください。調べてまとめて書きます。


◯バオート・ズッカ=モグ

 この前紹介したグロース君に住処だった惑星シャッガイを破壊されて地球を訪れた神様です。概ね外見は翼を持った蠍。ポケモンのグライオンを想像させますね。毒虫の群れを操り、常に汚染されたものに囲まれて暮らしているそうです。既に地球には飛来してきているそうです。いつか風呂嫌い美少女化して主人公くんの手でザッバザバにお風呂堕ちさせてやりたいですね。そんなことしたら弱体化しそうですね。用意している長編の弾に色々アイディアを練っている邪神です。毒虫大量召喚ってインディー・ジョーンズ味ありません? 何言っているか分からない方はインディー・ジョーンズ見てください。海外の未訳作品に収録された邪神なのであまり情報はありません。ただ面白いのがこいつと虫の媒介する感染症は殺意が高すぎてパンデミックが発生しづらいです。加減下手っぴか? その場で殺すでいいじゃないのよこれなら。優秀な感染症は無症状期間を作り、宿主を殺さず、自らを広げるのが原則です。その点、新型コロナ君は優秀で、免疫の撹乱までやってのけるという報告があるのでマジで優秀です。皆さん、ソーシャルディスタンスですよ。この後紹介するハスターリクに比べると感染症使いとしては拙い邪神でした。


◯ハスターリク

 ハスターと名前は似ていますが無関係です。実は関係あるんじゃないかと思ってます。風邪っていうくらいですし、病原体が広がる為にハスターやその眷属みたいな高速移動できる能力は必要ですからね。

 こちらはウイルス・細菌といった感染症により特化した旧支配者(ある意味で古い表現になってしまいましたねこれ)です。こいつは先程のバオート・ズックァ=モグと異なり頭が良い感染症使いです。僕ならこいつと同じやり方をします。ハスターリクは細菌やウイルスの遺伝子を地道に地道に組み替えて、パンデミックを引き起こします。実験室で人間風情がちまちま地道に遺伝子組み換えするよりも遥かに素早く的確に優秀な病原体を作り上げます。Plague incみてえな真似しやがる。ゲーム的にもこいつの能力って既存感染症の毒性向上なのでPlague incの必勝法みたいなところがあるんですよね。バオート・ズックァ=モグ君はちょっと感染症使いの癖に大味なんですが、この子は病に対して真摯です。この宇宙にあまねく存在する病原体に宿るキングビョーゲンみたいなところがありますからね。僕としてはイチオシですよ。

 魔術師が召喚できると制御できずに感染するという解説がありますが、これは当たり前で「ウイルスを適切に扱う医学知識を持つ魔術師は居ない」なんですよ。現代の生物兵器実験施設レベルの設備、最新の感染症知識、遺伝子変異・遺伝子工学に対する深い洞察力と知見を、旧支配者が召喚可能な魔術師が兼ね備えるの大変ですよ。なのでこの邪神は召喚者にすら制御不能扱いされるんだと思います。逆を言えば現実世界の病原体に対して知悉した魔術師が居れば、この旧支配者は対話の可能性があると思います。感染者を通じて対話を行う知性が存在しており、宇宙にあまねく存在することで得た知識も魔術師にとっては得難い宝になるでしょう。僕が異世界に転生してチートをあげるから旧支配者と一緒に転生先世界を滅ぼして欲しいと言われたら、不老不死不病不感染のチートを貰ってからこの邪神とのタッグを希望します。最悪の感染症が飛び交う世界で人々を癒やして回る最悪のマッチポンプによる宗教戦争で異世界焼きRTAキメてみせますよ。問題は異世界を滅ぼして回る話なんて大御所が書かないと昨今の出版不況では絶対に企画通してもらえないところですね。

 ニャルラトホテプ信仰の私ですが、僕は彼らほど信用できないものが居ないことも同時に深く確信しておりますので、ニャルラトホテプと一緒に異世界とか面白いと思うけど自分ではやりたくありませんね!!!!!!! 僕の書いたケイオスハウル読んでね!!!!! 今なら主人公の佐々佐助が乗り込む斬魔機皇ケイオスハウルのVRモデルも発売中! 経済回していこうぜ~!

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◯ウェンディゴ

 病気シリーズで最後に紹介するのはこちら。こっちはハスターの関係者。こちらは実在する病気に関係するお話なので真面目なトーンでお話いたします。ウェンディゴの伝承が残る地域には、ウェンディゴ症候群と呼ばれる精神疾患が存在します。一般的に文化依存症候群と呼ばれるものです。これはまず精霊ウェンディゴという人食いの怪物を概念として当該地域の住民が共有した状態で、冬期に発生する精神的な抑うつ症状をそのウェンディゴと結びつけることで発生したと推測されます。

 冬期、ウェンディゴの伝承が残る北アメリカでは極端に日照時間も日光量も落ち込みます。続いて食事も保存食に偏りがちになり、特にビタミンが不足するそうです。また日常的に気温が低下して寒い状況が続きます。吹雪で周囲を閉ざされれば運動する機会も減りますね。

 日光、栄養、気温、運動の不足。精神疾患待ったなしの最悪シチュエーションです。そんな時に父祖伝来の神話が精神に滑り込めば、狂っていく己自身が人食いの怪物に取り憑かれたと思い込むまでにはそう時間がかからないのです。通常の食事や身だしなみなどが億劫になる通常の抑うつ症状に加えて、なまじ人食いの伝承があるせいで人を食べようと思いこんでしまうんでしょう。また、実際に人を生のまま食べれば不足した栄養が補給できて一応症状は落ち着く可能性もあります。ウェンディゴに憑かれて食べてしまった……と追い詰められた環境で精神の最後の一線を守る言い訳として伝承を使った事例も可能性としては推測できますね。

 このウェンディゴ症候群の治療は古くからビタミンたっぷり熊の脂による栄養補給・飲酒による血行促進やストレス解消・サウナで身体を温めてから儀式を行うことでのセラピーと非常に的確な物が揃っています。経験的にどうすれば冬期抑うつを乗り越えられるかを理解していた訳です。僕も悪性リンパ腫治療初期のもう死ぬかも知れないって落ち込んでいた時は美味しいもの食べて元気出してました。抑うつに美食はよく効きます。

 なお、このウェンディゴ症候群は旅人にも発生するということですが、これは旅をする中で事前に言い伝えを聞いた上で冬期の抑うつが発生したと考えれば不思議ではありません。また、旅人が共同体にとって不都合であれば、旅人をウェンディゴであるとして処刑することもそう珍しくはないでしょう。病原体は世界に確として存在しますが、そこに病気という概念を見出すのは人間なのです。


【最後に】

 普通に病気関係の話するだけであっさり三千文字突破して五千文字届きそうなので畸形に関係する神々については後に回します。執筆意欲余ってるのか? 遺伝子異常の話もしたいし、学生時代に研究室で盛んだった一塩基多型(SNP)の話もしたいし、SNPの話ができるとそれに伴う疾患の話だってできるし、めちゃくちゃ面白いんですよ神話と畸形。畸形そのものを神による聖痕とみなす文化と相まって多分次回も最高に面白いのでたのしみにしててください。これまで読んでくださったみなさんならばお分かりだと思いますが文章の切れ味上がってるでしょう? これも辛い闘病生活のご褒美かもしれませんね。まだまだ良い物書いていくので楽しみにしていてください。

 あとそれはそれとして神話的魔女っ子を主人公にしたラブコメを十万字程度で書く予定です。全五章の三章目くらいからクトゥルー神話の物語になってくるので、気が向いたら三章目からでもチラッと目を通して星を投げてください。

 それとこの作品がなんと200万PV突破しましたね。カクヨム外から沢山読みに来てくれるそうです。嬉しいな~だからカクヨムアカウントに登録して星くらい入れてくれよな~。アカウント作れば三回クリックするだけで星三つ入れられるからな~。星を三つ入れてこの作品を読む偉い貴方はとても偉いので俺に対するリクエスト権を保有しています。この邪神について書いて欲しいなあ~ってレビューついでに書いてくれれば俺が調べて面白い話を書きます。是非星を入れてください。

 それでは今日はここまでです。次回また会う時までにくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けないように。

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