【初めに】

　あけましておめでとうございます。（本日二度目）

　というわけで今回はSSR楊貴妃ちゃんのクトゥルー神話要素についての解説です。ご覧の通りクトゥグアの要素を取り入れたフォーリナーでございます。XXちゃんが星の戦士＆ニャル子さん要素が強い実質上の這いニャルコラボだったことは有名な話ですが、今回の楊貴妃ちゃんについては本当に唐突でマジで訳わからなくてびっくりしました。

　楊貴妃とクトゥグアの関係性を理解したあとも有り体に言って「雑すぎでは？　これまであれだけ精緻にネタ仕込んだ型月なのに雑すぎでは？　クトゥグアを活かすって観点じゃなくて、楊貴妃というキャラの設定を盛るって観点だと、クトゥグアめっちゃ便利だけどそういう使い方する？　よりにもよって型月が？　嘘でしょ？」と思ったのですが、調べ直すと非常に面白い工夫がされているので、こちらで解説させていただきます。

　まず肝となる部分だけ先に言うと楊貴妃はクトゥグアとクトゥグアの部下であるフタグアの二柱がモチーフです。楊貴妃とクトゥグアの結びつけ自体はやっぱり雑としか思えないものの、楊貴妃を出す為にクトゥグアを使ったこと自体は非常に巧みな配置ですし、ディテールに関してはニヤッとする要素が散りばめられているので皆さんとぜひ共有できればと思います。

　それでは始めてまいりましょう。書き初めです。

【楊貴妃と北落師門（フォマルハウト）】

　まずこれです。正直は納得いってません。

　せっかくなら漢王朝第二代皇帝恵帝とかがやりなさいよ。とは言え全くの無関係ではないので、これからのお話の前提として一応説明しておきます。

　クトゥグアの棲む星“フォマルハウト”→フォマルハウトの中国名“北落師門”→唐の都長安北部にある門の一つがそれに準えて“北落師門”と呼ばれている→長安に縁のある英霊→楊貴妃という流れは一応あります。一応。ただ門ってだけなら長安作った人とかが似つかわしい筈です。シナリオ中で「いや～実はヨグ＝ソトースの娘で～」って話があり元々セイレムという神話に縁深い土地の人間だったアビーとか、体験クエストやTRPGの方で関係性が描写された葛飾北斎父娘と異なり、納得しがたい部分があります。BBちゃんとXXちゃんはほら、夏だから……考えるのやめよう。

　宝具のボイスでも言及されていますが、皇帝の軍が通る北落師門と神々のおわすフォマルハウト、皇帝の直属軍である羽林と今でいうみなみのうお座（フォマルハウトがある）に相当する羽林、その辺りの対応は美しいのですが「FGO世界において、楊貴妃である必要あった？」という疑問が頭の中にちらつきます。FGOを作っているのは世代的にもクトゥルー世界に対する深い知識と経験を持った方々で、そういった方々にリアル魔術師みたいな専門家まで監修についているので、無意味な訳が無いんですよ。無意味ではありえない。アビゲイルと北斎を送り出したFGOがここまで雑なことは絶対に無い筈、なのに今分かっている情報は明らかにかけている。これは妙です。

　そこで私が注目しているのは、楊貴妃の体験クエストに一切のシナリオがついていなかったことで、これはこの先のメインシナリオに彼女がガッツリ出張るからではないかと考えています。その出番に備えてあえて今回は何も語らなかったならば納得はできます。

　これはあくまで私の推測ですが、これから出るメインシナリオ、あるいはイベントシナリオで、今私が感じている違和感・欠落感には答えが出るのではないかと思っています。

（以下、2020/12/01追記）

　出ましたね。イベント（イマジナリ・スクランブル）。モロに神の分霊系のスキルを応用していて、この記事で推測した通りになっていました。

【楊貴妃の攻撃時に発生する人型・魚型の炎の塊】

　こちらを理解するために重要なのは「星宿る紺碧の臣下」というセリフです。クトゥグアたる彼女の臣下といえばアフーム＝ザーです。これは青白い燐光のようなものを放つクトゥグアの使い魔です。こちらは基本的に不定形なので、人型でも魚型でも呼び出せておかしくはないです。ビジュアル的にも色味的にも恐らく間違いないのではないかと思います。ただ、今回はここからが厄介なところでして、竹岡啓先生の個人研究と照らし合わせると、楊貴妃にはもう一柱のクトゥグアの臣下も関わっているとしか思えない。

　そのもう一柱こそがフタグアです。後付でクトゥグアの臣下にされたエネルギー生命体。The Fire Vampiresという作品で描写されたその姿も、また青なんですよね。このセリフが指しているのは果たしてどちらか、あるいはどちらもか。アフームザーのみと見せかけて隠された可能性が確かにあると思うんですよね。

【不安定な霊基、フタグアとの関係】

　流石にこじつけ融合上等なだけあって、楊貴妃自身のセリフにも自らの不安定さを指摘するセリフがあります。彼女はフォーリナーのサーヴァントとしても、不完全なのだそうです。この“としても”という言葉が重要で、再臨段階でまるで人格が切り替わるようにセリフがコロコロ変わるんですよね。他のフォーリナーも邪神の影響で人格がスイッチしてしまうんですが、彼女に限って言えば楊貴妃という女性が持つ「魔性の美妃」と「愛らしい少女」が切り替わっている印象を受けます。一人の人間のオルタ形態とリリィ形態、あるいはカーミラとエリちゃんを無理やり一つの体に突っ込んだような状態です。

　これが恐らくフォーリナーのサーヴァント“としても”不完全ということで、サーヴァントの人格の形成も実は上手くいっていないんじゃないかと思うんですよね。通常ならどちらかだけで出るものが、どちらも出る、みたいな。

　で、ここからが本命のお話。フタグアは人間の知識や記憶を吸収して人間の言葉や振る舞いを学習する存在です。それにより元の作戦では交渉や脅迫も器用にこなしていました。そして、これまで講座にて触れてきたように、クトゥグアは既に狂気に汚染されているという説が濃厚で、とてもではないですが理性的ふるまいは望めません。更にこれまでのフォーリナーの別人格は濃厚に邪神たちの影響を受けていました。そこから推察するに、あの「一般的な傾国の美妃」みたいな振る舞いをする楊貴妃の第三再臨以降の姿は、「一般的な楊貴妃のイメージを学習したフタグア」という可能性があるのではないかと考えました。フタグア自体、強い力を持っているものの旧支配者たちには及ばないという記述がクトゥルフ神話TRPGサプリメントのマレウス・モンストロルムでされているので、それを踏まえた表現として不完全なフォーリナーになっている可能性はありえます。

　サーヴァントとして呼ばれたことによる弱体化、楊貴妃という枠、そういったものの影響で、フタグアの自我が楊貴妃の記憶と混濁して、自らを「クトゥグアに仕える楊貴妃」と定義するフタグアになっていてもおかしくはない。ちなみにそうすると彼女の宝具演出と面白い符合が発生するので、この先で少し説明していきましょう。

（以下、2020/12/01追記）

　イマジナリスクランブルにおいて「楊貴妃というガワを使って邪神寄りの認識に徹底的に改造された存在」という真実が明らかになりました。なのでこれらの予想が概ね真実となっていたことになります。あくまでクトゥグア（汚染により皇帝＆マスターに重なる）へ仕える炎の女ならば、限りなくフタグアの性質に近い訳ですね。フタグア自体が人間の自我を使って人間っぽく振る舞う神性ですから完璧に一致です。

【宝具演出】

　楊貴妃がフタグアとクトゥグアの影響を同時に受けているという仮説に基づいて考察すると一番面白いのがこの宝具になります。

　宝具演出の時に地球の向こう側に青い炎の塊が出てくるじゃないですか。フタグアの話って「地球に接近した巨大な星＝エネルギー体のフタグア」が出てくるんですよね。けど、クトゥグアの召喚も「水平線上にフォマルハウトが現れた時に詠唱を行う」なんですよ。そう、混ざってる。勿論あの演出は水平線上ではなかったし、それにフォマルハウトは青く輝く星ではないです。けど海で覆われて青い地球の影から出てくる姿は水平線に星が現れた瞬間を狙ってクトゥグアを召喚する方法をふまえた演出と見て良いと思います。

　あと個人的に気になるのが宝具のセリフで「北落師門の御門（ミカド）を開き→北落師門の帝（ミカド）を放ち」に変化しているんですよね。開いていたものが放っている。どちらも御門（ミカド）と言い張ることはできますが、ならわざわざ放つ必要は無い筈。これは北落師門（フォマルハウト）の帝（ミカド）、クトゥグアを放っているとしか思えない。

　娘として神を解き放ったアビゲイル、神に取り込まれかけた父親が頑張っている北斎、臣下（フタグア）として帝を呼び覚ます楊貴妃。そう考えるとやっぱ綺麗にハマるんですよねえ。

　再臨を重ねた時の宝具の詠唱も気になります。「いあ、ふんぐるいむぐるうなふ　ふぉまるはうと　んがあぐあ　なふるたぐん！」って詠唱しているんですけど、これ有名なクトゥグアの詠唱からクトゥグアの名前を抜いただけなんですよ。これまでのアビゲイル・北斎も直接的に神の名を唱えませんが、彼らのような大胆かつ洒落たアレンジが存在しない。クトゥグアの名を意図的に脱落させたことを匂わせています。そうなるともうそもそもの問題として、楊貴妃ちゃんの宝具ってフタグアの力を解き放って暴れているだけという可能性すら発生してくるんですよ。ニャルBBちゃんに対するセリフで何もかも燃やしてやるってセリフはありますが、それだって別にクトゥグアの臣下が言ったところで何一つおかしくないですし。なによりニャルBBちゃんにメタ食らってやけどを防御されるクトゥグアさんとか解釈違いなんですけどどうすか！！！！！！！！！！！！！！！　クトゥグアの攻撃をニャルラトホテプがメタできたら変だろなんか！！！！！！！！　という話にも展開できます。

　というわけで、クトゥグア単体としたら作中描写とも、楊貴妃という一個人とも、いまいちマッチしないと私が感じた理由が分かっていただけたでしょうか。逆にフタグアが混じってくると面白い味わいが発生することも、分かっていただけたと思います。

　ここまで書いていて急に思いついたんですがもし「この世界ではフタグアはクトゥグアの妻です」ってどこぞのシナリオで言われたら「神だよ型月ィイイイイ！　めちゃくちゃCOOLだよぉ！！！！！」って叫んで踊りだすかもしれません。それなら楊貴妃と合体しても何一つおかしくない。楊貴妃は融合先として素晴らしい候補たりえます。なにせ彼女は北落師門の帝の妻にして臣下なのですから。逆にこれ以上の候補はそうそう居ない。というわけで今回の宝具演出は実に面白い考察対象でした。

【フォマルハウトとギリシャ異聞帯の関係】

　さて、ここはおまけです。

　クトゥグアの棲むとされるフォマルハウトは、オリュンポス十二神のデメテルの信仰の証としても知られています。デメテルを崇める秘儀を伝える教団の信仰のシンボルでした。現在多くのマスターが攻略中であるギリシャ異聞帯において、重要視されるオリュンポス十二神の一柱と縁を持つフォマルハウト・楊貴妃が、この先メインシナリオに関わってくる可能性はあります。

　というよりこんなタイミングで型月がわざわざぶっ込んでくるんだから絶対にその手のウルトラCが飛び出してくれるよ！　俺中学生の頃から見てるもんそういうすごいシナリオ！　いやあ楽しみですね。

（以下、2020/12/01追記）

　まさか4.5章で大活躍というのはびっくりでしたね。メインシナリオで本当に関わってくるとは思っておりませんでした。オリュンポスに向かう道の中であそこまで大暴れしてくれるとは……予想を無事当てられて嬉しいですが、それ以上に型月の上手さに感動してふるえております。

【さいごに】

　言っておくがユゥユゥちゃんは俺の幼馴染だ。ユゥユゥちゃんは辛い環境の中で懸命に幸せになろうとした良い子なんだ。分かるか？　分かるな。お妃様となって、今ではすっかり遠くになってしまったが、あの子が幼い頃に語った夢を知っているんだ。俺だけはユゥユゥちゃんの事をわかっているからな……クッ！

　と、男に思わせるとんでもないサークラパワーを秘めていますね楊貴妃。この女、会うもの会うもの皆に思わせる魔性の力を秘めています。しかも赤ちゃんプレイを愛好するだとぉ……バブ、バ、バブゥ……！　危険です。大した狂気の女神だよ！　

　私の頭がおかしいのではなくて、見ろよ第一形態のあのサークラ服！　あれを見てサークラじゃないって言わせねえぞ！　円卓サーは登場人物が少しユニークだったからセイバーでクラッシュしたけど、唐サーはあれ絶対にユゥユゥちゃんがぶっ壊したぞ！　史実を見ろ！　俺だって大きな男の人が赤ちゃんみたいになるところを見たいと言われたらやむをえずバブゥ……！ってなりかねません。良い年こいた大人がそんなことになる組織に俺は所属したくないぞ！　サークル崩壊不可避じゃ！

　だがわかって欲しい！　ユゥユゥちゃんが悪い訳じゃない！　彼女はただ政治の道具にされただけなんだ。彼女の周りに悪い奴らが居たから……うぅ許せねえ～！　許せねぇよなあ～！　俺がユゥユゥちゃんの笑顔を取り戻すんだ……唐王朝を……滅ぼす！（Let's go 安禄山！）

　話はそれますが安禄山はペルシャ系です。実は楊貴妃にもペルシャ系って伝説が残っています。そしてこの案碌山、楊貴妃が死んだ後は荒れに荒れて求心力を失って部下から見限られています。悲しいよね。

　さて、これでFGOにおける楊貴妃の恐ろしさと面白さが伝わったかと思われます。あとは貴方の手元にあるそのスマホでガチャを回しましょう。あ、勿論この記事のPVをガンガン回してくださっても良いです。多分これだけ書き込んだら触媒になっていますので、ガチャを回す要領でこのページを閲覧しまくってください。PVが僕のガチャ代になりますので！

（後日、今回のPVから入った広告収入で無事に楊貴妃ガチャ代賄えました。この場をお借りして深く御礼申し上げます）

　それでは本日のご紹介は以上。

　次回また会う時までにくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けないように。