第六十一回 クトゥルフ神話TRPGプレイングガイドってなぁに?④~日本の読者へ~

【パート3 日本のファンへ】


●第7章 キーパーチップス・モア

 「本書の第一章にはクトゥルフ神話TRPGにおける殆どの問題を解決するケビン・ロスからの言葉が記されている。」から始まるこの章では、日本のオンラインセッションをとりまく環境に注目したアドバイスが記載されています。

 日本のCOC環境においてしばしば見られる問題や、くり返し議題になる問題について、内山靖二郎先生が指針を提案してくださっています。困ったら一旦これに従った上で、知識や経験が集まってきたら自分の周囲の環境に合わせた解決方法を打ち出していくと快適なTRPGライフ、COCライフが送れるのではないでしょうか。

 この章の内容の紹介も兼ねて、内山先生のお考えを踏まえた上で、ここで語られる問題について私見を述べさせていただきます。


・シナリオの改変について

 他の人が作成したクトゥルフ神話TRPGのシナリオを、状況に合わせて筋書きを書き換える行為というのは、TRPGという場では当たり前の行為です。服を買えば裾を合わせたり身体に合わせて直したりしますし、車も整備がてら少しずつ高級なパーツを入れて乗り心地を良くしたり速くしたりするし、TRPGでは出てくるPCたちに合わせて卓が最高にブチ上がるように因縁や見せ場を盛ったりそのために別の部分を削ったりします。あとはメイクだって同じ化粧品使っていても個々人でちょっとずつ違うものになります。良いものを作ろう、楽しい体験をしよう、と考えるのならば日々少しずつ変えていくのが当たり前のことです。なんならプレイしている最中に気づかなかったキャラの側面が見えてくると、大急ぎで自分の書いたシナリオを書き換えることだってあります。「分かった……プランBで行く(何も考えてない)」からが勝負ですよ。

 それはそれとして一つだけ絶対に改変するのやめようぜってなる場合があって、作者さんが改変やめて!って言ってる場合はそれを尊重しましょう。やめてって言われることをやるのは……ただの悪意だろ! ただ改変NGのシナリオ拾って遊んでる暇あったら公式のシナリオ遊んだほうが楽だし楽しいですよ。今の時代はアプリで安価にルルブやシナリオにアクセスできますから……。それでも改変できない物語をたどりたいなら小説もオススメっすね! まあそんなこんなで公式シナリオ10本くらい遊んでたら、何が面白いのかを自分なりに理解して自分でシナリオ作るようになりますから……。車のパーツも、服も、TRPGシナリオも、最後はやっぱオーダーメイドですよ。最高の自キャラの為に誂えた一点物のシナリオで差をつけていきましょう。


・よそのことは気にしない

 最後は一点物の最高のシナリオを作るという話に繋がってくるのですが、よその卓とかあんまり気にしないほうが良いです。他の卓でBGMとか立ち絵とかすごくて自分にはできないとか自分もやらなきゃとか思うのはやめましょうという話題ですね。

 KPでもGMでもPLでも、やっぱ最高の芸を見せたいと思うのは人情……卓人たくんちゅ人情というものです。ですが、自分のキャパを超えるものをやってはいけません。あくまで私個人の感覚ですが「それで無理なく月1~2卓GMできる?」というのを常に自分に問いかけていったほうが良いと思います。自分のできる範囲で、無理なく卓を開いて楽しく完結させ続ければ、あなたは勝手に他人がすごいと思うような卓ができるようになっています。そういう継続の中で「すごいと思ったKP・PLのマネ」を少しずつ織り交ぜて学べば良いんですよ。私の周りもなんか野生の公式とか本物の公式とか神絵師とか作家みたいなTRPG星人が沢山居てみんなすごくて羨ましくて困るんですが、まあ普通の人間にできることは普通に日々継続して普通に自分のできる面白いことを増やすしかないので……自分の普通で楽しもうぜ! それができるようにゲームは設計されてるんですから!


・言葉の選択に気を配る

 これはですね。卓を囲むグループごとの感覚の違いも有れば、SNSの巨大な空間では思わぬすれ違いもあるよね、という話で……だから言葉の選択に気をつけなくてはいけないんですね。

 コンセンサスをきっちりとる……というのは大事で、皆さんやってるけど、コンセンサスを取る場合でも単語の感覚が違うパターンが有るという話をここではしています。これは本当にうっかりしちゃうので、仰る通りです……!という言葉しかでなかったです……はい……気をつけます……。


・不満を引き出せるように

 はい、後から不満が噴出して大変なんてこと、ありますよね。ありましたねボクも……。血まみれだよ。要は気軽に言い合える相手、気軽に言い合える関係性の構築が大事なので……そうだね……そういう仲間でプレイグループを形成するのが一番良いんじゃないかなって僕は思いますよ……。

 辛くなってきたので早めに切り上げましょうか。


・推奨される技能?

 これは考えさせられる項目で、推奨にも推奨の強さによる違いがあるという話です。自分がわりと推奨技能は抑えてから残りの構築考えるタイプだったので、推奨の濃淡について強く意識してなかったです。シナリオや舞台の設定を考えるとどうしてもPCがその技能を一定以上の数値で持ってないと不自然という局面はありえます。この本だと南極探検隊が例に挙げられていました。ただの推奨じゃなくて、必須技能ですよね。

 シナリオを書く際にはその技能が必須なのか、推奨なのか、しっかり意識しておかないとダメですね。反省しました。普段は全部のキャラシチェックして展開に無理が出ないようにシナリオの方を微調整しちゃうからかえって意識できないパターンでした。


・ルールブックの扱いについて

 Twitter(現:X)のTRPG学級会で死ぬほど見たやつだ~~~~~~~~!

 何もかも正しいことしか書いてないのでもうこれが決定版でええと思う……もう学級会をやめよう。その学級会をする時間でダイスを振れ、天に己のPCの運命を問え、友と語らい、人生に満ちる楽しい思い出の時間をまた少し積み上げろ、おお卓人よインターネット(ここでは卓外のあれやこれやを指します)をやめろ、インターネットをやめて卓をやれ、行為こそ真理である。TRPGを愛するものがやることはTRPGをやることなのだから……。この項目に書いてあることを読んだらそれを遵守してTRPGをやろう。それでいいんだ……。あと偶にはラヴクラフト御大の作品とかクトゥルー神話全集的なものに目を通して「なんだこれは……」ってなると自分の認識する世界が広がって、さらに練り上げられた卓を出せますよ。


・探索者が何をするのかで語ってもらう

 ここからまた私の意見なんですが「自分からダイスを振ろうとするのは弱い動き」です。これは覚えて帰ってください。「自分のキャラクターがこのような行動を取りたいと考えている。目的はこういうものだ。これは可能だろうか」と聞いてから動きましょう。なんで自分からファンブルするかもしれないしなんなら効果が出ないかもしれないダイスを振ろうとするんですか。いえ、この項目の趣旨ではないんですが、どうしても言いたくて……。

 この項目はルール用語でキャラの動きを伝えるのではなくて、キャラがどう動いているかをちゃんと話そうねという話です。TRPGは物語を作る遊びなので、それをより良くする為に大事な手法です。


・楽しみ方はたくさんあるが

 事故らないって自信があるなら秘匿ハンドアウトで疑心暗鬼を演出したり、探索者同士がバトルロイヤルしたり、武道キックで神をも討ち果たしていいのですが、普通は事故るのでやめておいたほうがいいぜ!

 KP側で事故らないってのは勿論、PL側を事故らせないってのもKPの技術です。「あえてスレスレを走る快感がたまらねえ! みんな一緒に気持ちよくなろうぜ!」って爆発炎上しそうになりながら突っ走るのが好きなのでなければ絶対やめましょう。参加者全員が「どうすんだよこれww」って笑いながら突っ走る卓は頭がどうにかなりそうなくらい気持ちええんじゃ……。五年かけたキャンペーンのPC1を最終話でロストさせそうになってガチで参加者から心配された私が言うと説得力が欠片もないですね。いやあの時は「それも美味しいなあ~~~~~~~」って本気で思ってただけで……一応死なないようには作ってたからさ……生きて帰ってきたしさ……セーフということで一つ……。

 あとこういう特殊なシナリオって気心知れた仲間が呼吸を合わせて上手にやるから面白くなるのであって、そういう面子でやる卓は別に特殊なギミックが無くても面白いから本質的に味変以上の効果は無いぜ! はい……私はこういう異常ギミックを死ぬほど出すタイプのKP・GMですが、特殊なギミックが面白さそのものに寄与することは無いと思ってます……。なので……何回かオーソドックスなシナリオを回して息があってきた仲間たちと人外魔境なシナリオ・サプリでゲラゲラ笑うのが……最高です……特殊ルール上等ですよ、どんどんやろうぜ!!!!!!! 鍛え上げてきたKP筋をこれでもかと見せびらかそう!!!!!!! 何も考えて無くても余裕みたいな面をPLにして実際なんか面白いことを言って「俺天才じゃん……」と自己満足して皆で笑顔で卓を終えよう!!!!! というのがこのあたりの状況に対する考えです。


・ネット以外での遊び方

 僕は今、離島暮らしなのであんまり気軽にオフで卓を囲めません。上司が卓人なのですが、上司にもご家庭があります故……! というわけでオフ卓をあんまり囲めません。ただその上で、オフ卓を楽しむならやっぱりコンベンションです。地元の大学のTRPG研究会や、公式が主催するコンベンションに参加すればまあ間違いはありません。卓道を極めたいぜって若者にはぜひ大学のTRPG研究会入ってほしいですよ。技術の継承とか、卒業後の公式への就職とか、ある程度メンバーの新陳代謝があるとか、卓について理解を深める為に大事なことが詰まっています。話を書くことに興味がある場合も、実はオススメ。なにせ短期間でシナリオをポンポン書き続けないといけないので、自然と基礎が学べます。サークルにのめり込みすぎてうっかり留年でもしない限りタイパコスパ最高ですよ。学生の皆さんはマジで学生の時間有意義に使っていこうな……。


・ネットのプレイヤーへのチップス

 この辺りは本書のチップスの内容から更に現代日本TRPGシーン向けに洗練させたものが掲載されています。ここの内容をあんまりガッツリ出すと本の内容を持ってきただけになるので良くないですから、こちらのチップスを参考に私なりのしぃるチップスを纏めますね。

「睡眠をとれ、健康的な食生活と生活習慣を維持しろ」

「スケジュールに余裕を持たせろ」

「スケジュール詰めすぎてパフォーマンスを落とすな」

「インターネットをやめろ、眼の前のKPやPLと話し合え」

「悪いインターネットをやめろ、自分たちの卓に向き合え」

「マジでインターネットをやめて今やってる卓に集中をしろ」

「眼の前の卓で最高のパフォーマンスをする為にできることを全部やれ」

 というのがしぃるチップスです。勿論本書のチップスではもっと別の内容が様々に載っているのですが、私がここのコーナーで書くとしたらまっさきにこれかなあ……というものです。

 ここまで極端じゃないのですが、こういった内容も載ってますので正直ここに来る人にはこの部分こそ読んでもらいたいな……と思いました。


・おまけ

 色々面白便利な資料が世の中にはたくさんあるのでそれについてアクセスする方法を紹介していたり、著者の方々についての紹介が載っています。ここはもう直接読んだほうが良いに決まってますし、詳しく話すと良くないので実際読んでみてください。


【最後に】


 というわけでいろいろあって遅れましたがクトゥルフ神話TRPGプレイングガイドの紹介でした。

 そうこうしている間に『このホラーがすごい!』とか『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』とか面白い本が次々出版されて俺の予定はもうパンパン。迂闊だった……面白いものが多すぎる。

 今日は貴重な休日ですが、血液内科に行って定期検診を受けて近所の鍛冶屋さんにオーダーメイドした出刃包丁の進捗を聞いてチューニングを無事に終えた車のオイル交換をして車高を僅かに下げる相談をしてアマゾンに注文したら全然違うサイズで来た衣服を返品して友人と卓を囲むという非常に忙しいスケジュールになっており、執筆の時間がなんと午前中しかありません。忘れてたけど婚活もしなくちゃいけません。誰かいい人紹介してくれ。

 あと俺の婚活友の獅子吼れお先生の『Q eND A』は7/25発売です。よろしくな!


 それでは次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。

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