第六十二回 クトゥルー神話解体新書2ってなぁに?

【初めに】


 ご挨拶遅れまして申し訳ございません。

 この度、執筆のお手伝いをさせていただいた『クトゥルー神話解体新書2』が無事に発売されました。森瀬先生の神話解説本は高校生くらいの頃から読み続けてたんですが、そこに自分の名前が載る日が来るとは全く思っておらず、またこういう記事を書かせてもらえる機会があるとも思っておらず、思ってもみない幸運と名誉に恵まれて本当に幸せです。まだ何も知らないことをまた知りました。もっと勉強します。クトゥルー神話めちゃくちゃ楽しいです。

 そしてクトゥルー神話設定周りのお手伝いをした「因習村サイコキネシス」が無事完結しました。木古おうみ先生、お声がけいただきありがとうございます! 自分が学んだことを人に活用してもらうの超楽しいです。「Jail Fragment」の頃から推してるので今後もマジ飛躍していってください!

 というわけで今回はクトゥルー神話解体新書2について説明をしていきたいと思います。基本的な骨格はクトゥルー神話解体新書と同じなのですが、日本だとなかなか触れない海外における神格の取り扱いの変遷や、当時の出版周りの事情を踏まえた解説、そして何より日本語だと読めない資料から抽出された神格のエッセンス。これはですね……濃厚です。とても濃厚なのでぜひ皆さん買ってください。

 それでは各章の紹介です! どうぞ!


【第1章 神々と異形の種族】


 こちらの章ではいわゆる神話生物、旧神、旧支配者、外なる神の類について説明しています。

 個人的に興味深いのはゴルゴー、モルモー、ウィツィロポチトリ、マリク・タウス、セベクといった現実に崇拝された神や悪魔をクトゥルー神話の中で取り扱ってきた歴史について濃厚に触れられているところです。この話ができる人は今の時代少なく、私も上古の時代の神秘の残照や平成・昭和の余熱で暖をとっているのですが……今回の本でかなりホカホカしてきたと思います。このあたりはすでにクトゥルー神話が好きな人にとってありがたいところですね。

 あと僕がヘンリー・カットナーの作品と縁が深かったので個人的に嬉しいのですが、ヘンリー・カットナーの奥様のキャサリン・L・ムーアが登場させたファロールについても取り上げられているんですよね。このファロールはカットナーのハイドラでクトゥルー神話に取り込まれたのですが、めちゃくちゃ楽しかったなあという思いでがあります。とはいえ、僕自身ファロールに詳しい訳ではなかったのでここで学ぶことができて助かりました。

 なによりも“濃い”という解体新書2の味わいが詰まったパートですね。


【第2章 書物と物品】


 マイナーな魔導書を使いたいTRPGプレイヤーは多いと思います。そんなTRPG大好き人間の皆さんに朗報です。めっちゃマイナーな魔導書の元ネタある。デモンベインの二次創作にも使いやすい。これは良いものです。

 個人的にはトゥル金属メタルについてのまとまった解説があるところも素晴らしいですね。トゥル金属メタルは「墳丘」で出てくる地下世界クン=ヤンで使われる金属なのですが、良く似た名前でミ=ゴが脳缶に使うトゥクル金属というものもあるんですよね。この二つの名前が似ているので僕は今まで同じようなものと認識していたのですが、実のところ「関係性は不明」ということがここではっきりしています。てっきり近いものあるいは同じと思っていたので読めてよかったです。

 それに「銀の鍵の門を抜けて」を読んだ皆さんには嬉しい光線外被ライト=ビーム・エンベロープも登場します。僕ずっと思っているんですけど、時間と空間をくぐり抜ける為に身体を保護する光線外被ってFGOのエドモンの着ているコートみたいじゃないですか? アレ格好いいよな……クトゥルフ神話で格好いい異能バトル物ができることがあったらアレ使いたいよ俺は。


【第3章 神話世界の人間たち】


 ここはクトゥルー神話世界にまだ入ってきたばかりの人にこそおすすめしたいです。クトゥルー神話で定番の職業や探索者、魔術師というものがどういうものなのかをガッツリと説明してくださっています。

 クトゥルフ神話TRPGを遊ぶにあたってのイメージをふくらませるのにうってつけのパートなので、これまで神話好き向けの内容が多い印象からガラッと変わっています。読み続けてちょっと脳が疲れちゃったぞ~って初めての人はこっちを一度読んで小休止してからまた読み始めても良いかも知れません。


【第4章 ラヴクラフト・カントリー】


 情報量が!!!!!!!!! 多い!!!!!!!!!!

 これこの章だけで62項目あるんですけどこの本が135項目の情報について解説しているので、実質半分がこの第4章! 情報が多いという話もご納得いただけたでしょう!!!!!!!

 これほどの情報を握ってらしたのですね先生……。

 この章で特に面白いのはカッパ・アルファ・タウ(猫の秘密結社)、サンボーン太平洋海域考古遺物研究所、星の智慧派、ピックマン財団といった組織について触れてい点です。多種多様な土地についての解説も面白いのですが、多分ゲームや小説を書いてみたいという皆さんにはこの組織の解説が特に役に立つのではないでしょうか。自分の知っている場所に少しだけ違う組織を出す方が、話を作る上ではスムーズですからね。

 個人的に気になったのはインスマスとコーンウォール半島です。コーンウォール半島にもインスマスあったの!? っておどきましたよ。セレファイス読んだ筈なのに違和感持たずに、というかセレファイスの話を読んだのになぜかアメリカ舞台だと思いこんでいた自分に気が付きました。思いて学ばざればすなわち危うし、ですね。しっかり元となる書物にあたって基礎をしっかり固めるのは大事。そういうきっかけとしてもこの本は素敵だと思います。


【第5章 失われた世界】


 古代大陸、ムーとかアトランティスとか、クトゥルー神話の成立時期にはアツいジャンルだったので、実はラヴクラフトやその周辺の作家は皆さんそれをネタとして自分の作品に使っています。

 なのでこれを上手に使うとクトゥルー神話作品らしさが一気に強くなるのですが、問題は古代大陸とクトゥルーを絡めて一発で学ぶ事ができる文献がそんなに多くないところなんですよ。

 この章はまさしくその「知りたいところ」を最新の文献に基づいて専門家がまとめている訳ですからとてもお得。ここ読むだけでシナリオやキャラにひと味加えることができるのでつまみ読みするなら第3章とこの章がオススメです。


【第6章 星々の世界】


 僕の出番だ!

 ついに僕が書かせてもらったところ(を第一稿として森瀬先生が仕上げたところ)ですよ。初めて読んだ時は緊張と興奮で頭の中に文字が入ってこなかった。直しが入ってるとは言え自分の書いた文章なのにね。昔から憧れていた先生に自分の文章を直されたりするのはみなさん羨ましいと思いますが、実際やっていただくと自分の未熟と無知と不明を恥じるばかりで思った以上に胃が痛くなりました……俺はなんて……伸びしろがある(精一杯のポジティブ)んだ……。

 ベル・ヤーナクと奏音領域が担当したパートなので、皆さんぜひ読んでください。ぜひとも読んでください。すっごく面白いと思います。まあこの本どこ読んでもすっごく面白いのですっごく面白いだけでは売り込みづらいですが……まあこの講座を読んでくださってるみなさんには読んで欲しいじゃないですか。

 そういう気持ちだよ、気持ち。

 宇宙の各所の星とクトゥルー神話の関係をまとめる項目もあるので、忘れがちないろいろな星の設定を見直すのには便利なパートですよ。


【最後に】


 紹介は以上です。

 ともかく濃いんですよ、『クトゥルー神話解体新書2』。とっても面白い本でした。この先もこういうものを作り上げるお手伝いもしたいし、自分でも面白いものを作ってみたいなあという思いです。

 たとえばこのクトゥルフ講座を漫画とかにしてみたりさ……最近TLが皆漫画の原作をやってて羨ましいんですよ。あの人も! あの人も! コミカライズ! 漫画原作! 良いなあ!

 でも十年以上前に「クトゥルフ神話ってすげえ~! こんな本あるんだおもしれえ!」って言ってた高校生が今ちょっと書かせてもらえたのでこれから頑張ればコミカライズあるかもしれないですね。

 というわけで待ってろよカクヨムコンテスト10プロ部門。

 コンテストが始まったら更新頻度上げるのでリクエストを募集しています。

 今のところ記事で取り上げるのは古きもの、アトゥ、シノトグリス(登場した話の翻訳もやるよ)、チクタクマン(登場作品の翻訳もやるよ)を予定しています。

 よろしくね!


 それでは次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。

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