第六十三回 パルプクトゥルフってなぁに?①
【初めに】
結婚が決まりました。(イェーイ!)
こちらの方は特に変わらず翻訳なり神話関係の本なりサプリなりFGOのクトゥルー神話要素について語るだけなのですが、しぃるちょっぴり上機嫌です。
特別なことはできないけど、至って普通のサラリーマンをしながら日々研鑽を怠らず、学んだことを広く人々に共有し、社会における幸福と叡智の総量を増やしていきたいと思います。今後とも宜しくお願いいたします。
今回取り上げるのは『新クトゥルフ神話TRPG パルプクトゥルフ』。邪悪な神とその信奉者を相手に、我らがヒーローが格好良く戦って、事件を解決してくれるお話です。そう、ニコニコ動画で良く見た格好いい探索者をやる為のハウスルールを公式が叩きつけてくれました。時代が追いついたな……あの頃の動画からTRPGに入ったニコニコキッズとしてはもう本当にニッコニコです。
クトゥルー神話自体がそもそもパルプマガジンと呼ばれる娯楽雑誌に掲載されていた作品群に使われた共通用語群であることを思えば、邪神を相手取った冒険活劇はある意味で王道であり、ある意味で原点回帰といえるでしょう。
クトゥルー神話は楽しくて、自由で、でたらめでべらぼうで、なんかめっちゃエモいということをこれでもかと堪能していただける本となっております。
もしもこれを読んで気になったなら、皆さま是非とも書店でお買い求めください。
【第1章 パルプとは】
そもそもパルプ・フィクションとは何かについて詳細な歴史を解説してくださっています。アメリカにおけるパルプ・フィクションの発生や、取り上げられる作品の傾向について取り上げられています。
ラヴクラフトが当時の風潮からしても異端であった点について言及されているのが良いですよね。クトゥルー神話、というかクトゥルー神話を生み出したラヴクラフトの作風が基本的にパルプマガジンの中では変で浮いているんですよ。これはラヴクラフトがアーサー・マッケンなど少し前の時代の作家の作品を愛していたことや、ラヴクラフトが当時の売れ線に作品を寄せられなかったことなどが大きいと見ています。ラヴクラフトの書いた恋愛ものとか読んだことあるのですがその……なに? ってなりましたよ、すごいよ。「
そのラヴクラフト御大の作った独自の世界が多様なクリエイターに受け入れられて今がある訳ですから、つくづく自由ですよねクトゥルー神話。
この章を通じてまずはパルプマガジンの世界、この本でやりたいことについて、ざっくりとイメージを膨らませてから先へ進みましょう。
【第2章 パルプヒーローの創造】
こちらではパルプクトゥルフに相応しい特殊なキャラの創造が可能になっております。
特に今回の売りであるパルプタレント。絶妙に便利ですが、比叡山炎上ほどの純粋暴力という感じではなく、一部を除いて適度なバランスと言えるでしょう。キャラ立ちという意味でも、濃厚にキャラを描くことができるようになるので、面白いやり方だと思います。
さらに今回は探索者ごとに「どういう役回りのキャラか」を決めることができます。パルプアーキタイプと呼ばれる属性の付与なのですが、これがとてつもなく強烈です。主に求められる能力値を1d+13で決めたり、その役柄なら持っていてほしい技能に100ポイントもボーナスポイントが入ったり、もうやりたい放題です。こんなの絶対活躍する有能探索者しか生まれない。でもそれでいいんですよ。今回の主役は少ないリソースでなんとか生き延びる普通の人間じゃない。今回の主役は旧支配者の寝床をダイナマイトでぶっ飛ばす大学教授のような連中です。あるいは西部のガンマンです。もしくは軍隊帰りのムキムキマッチョマンかもしれません。皆さんの卓が実写化された時、PCを演じてくれるのはシルヴェスター・スタローンやアンジェリーナ・ジョリー……あるいはダニエル・ラドクリフです。
個人的にはパルプタレントの《早撃ち》《抜き撃ち》を習得して、「銃で殺せるエネミー絶対先手打って殺すマン」をビルドして、戦闘の事故を必ず潰したいところです。45口径オートマチック拳銃で怒涛のノーペナルティ三回攻撃キメていくぜ! ダイスが1d10と大きいので威力のブレがコワイけど三発撃てばだいたい死ぬ筈です。
【第3章 パルプに登場する組織】
PC側で所属しやすい組織と、それに敵対する悪の結社的な組織を紹介しています。セッションで使いやすいように細く設定が決められており、セッションの中でPCがどの立ち位置に入っていくのか、セッションの中でPCとどのように敵対するのかについて、想定が説明されています。
組織の紹介をいくつかしておきましょう。
・先駆者クラブ
PCの所属組織・後援組織として想定された冒険家たちの集まりです。科学者たちも多数在籍し、奇妙な発明や先進的な発明を発表し続けています。彼らは物理的にも科学的にも人間がこの世界を掌握できると信じ、日夜先進的な活動に取り組み続けているのです。この、慈悲なき神が闊歩するクトゥルー神話の世界において!
一見するとこれは大変な悲劇ですが、同時にプレイヤー・キーパーである皆さんにとっては好都合です。なぜなら今回はパルプクトゥルフ! 人類の可能性を普段より更に追い求めるチャンスがあるのです! 未知のジャングルに墜落したセスナからヒロインを救い出し、人食い部族の跋扈する密林を駆け抜けてヨシ! クローン技術により生まれたクローン深きものどもの製造プラントを爆破してヨシ! 上流階級の支援者(かなり多い)の紹介により、上流階級の社交場に紛れ込んだニャルラトホテプの化身を追ってヨシ!
しかもこの先駆者クラブの図書館には魔導書こそないものの、彼らが蓄積した神話的存在との遭遇記録が充実しています。この慈悲なき世界を掌握せしめんとする彼らの活動が残した成果ですね。
こういった特質から先駆者クラブは他の様々な組織から目をつけられているというのも、シナリオフックとして魅力的ですよね。
・ケリュケイオン
神話的存在殺すべし――ケリュケイオンは巨大製薬企業の創始者が企業の売却益を用いて創設した国際慈善団体です。世界中のありとあらゆる地域に医療の光を当てる素晴らしい集団です!
しかし、その裏では創設者ジョシュア・ミーダムの指示を受けた精鋭部隊が魔術師を神話生物を因習に塗れた暗黒の部族を根絶やしにしています。きっと時代によってはバイオテロとかもやってますよ。炭疽菌テロで滅びた暗黒食人部族の村もあったことでしょう。
人道支援の面をしてあらゆる悲惨な事件事故の現場に乗り込めるので、この団体も非常に魅力的です。そしてこの団体自体が非常に戦闘的な志向を持っているので、スムーズに神話生物との殺し合いに発展します。
この団体については本邦で未訳のキャンペーンシナリオもあるらしいので、それが導入されたりすると楽しそうですね。
・継承団
クトゥルフ神話の魔術を使って世界の破滅を促進する終末的カルト団体――悪の秘密結社です!
彼らは世界の終末そのものが目的であり、自分たちが世界の終末を早めることでその報いを与えられると信じています。
正体不明の首領の下、世界各地で破滅的な活動を続けています……!
要は神話的存在を召喚したり魔術を使える犯罪者集団だと思えば良いので、敵として非常に便利です。
この集団の特徴は他のクトゥルー神話カルトからも邪魔に思われている事が多いということです。とにかく犯罪と破壊を繰り返して乱暴に神話的知識を使うので、迷惑だからです。たとえば、平和なインスマスの町にバイアクヘーに乗った継承団のモヒカンどもが群れでやってきて子どもたちを誘拐していくとかやりかねない。
だからこの組織と戦っている時は思わぬ助けが都合よく発生することもあります。
そういう意味でも敵として便利なのでパルプクトゥルフでこいつらを登場させない手はありません。
・グレータイガーズ
エンジョイ&エキサイティング! クレイジーでグレートな狩りの為ならなんでもするぜ! 人間、怪物、猛獣、なんでも俺たちがハントしてやる!
そんなイカれた殺戮者
【第4章 ゲームシステム】
【第5章 パルプ正気度】
狂気の先にある力を知っているか?
このパルプクトゥルフにはあるんだ、“力”ってやつがな。
エッジの上を走る
探索者なんて連中はいつだってそう、高みを目指して派手にくたばるだけの時限装置。
だったら精々命の使い道くらいは心得ておくべきだ。
はい、このコーナーで紹介したいのは2つ。
“100%を超える技能取得”と“狂気のタレント”です。
他にも華々しい最期とか、狂気の発作とかも面白いんですが、この2つがぶっちぎり面白い。
100%を超える技能取得はまあ分かりやすいですね、書いた通りの意味です。
ファンブルでも起きない限り絶対に成功するしクリティカルの確率も上がります。
このクリティカルの確率が上がることで狂気のタレント“狂気の技能拡張”が成功しやすくなります。
そう、狂気のタレント“狂気の技能拡張”が面白すぎる! これがあればありとあらゆる技能をクトゥルフ神話技能と組み合わせて異常現象を巻き起こすことができてしまうのです! クトゥルフ神話技能の数値が必要ではありますが神話の力で神話と戦う仮面ライダーみたいなヒーローになれます。というか近接格闘とクトゥルフ神話を組み合わせた結果発生する事象の説明が仮面ライダー過ぎて仮面ライダーやってたみたいな気分になりますよ。動画でもそこまでせんぞなかなかってレベルの暴れルール暴れスキルなので、これを使ってゲラゲラ笑うだけでこのサプリは元とれます。
今回全体的に白兵技能がアッパー調整なので、男らしく正面から戦うのも乙かもしれませんね。
【小休止】
FGOのクリスマスイベント始まりましたね。
ニャルラトBBちゃんが蠢いていて神話的アトモスフィアが漂い、実に良い感じです。
こちらの解説記事もあげていきたいので神話的事象……待ってるからね……!
それでは今日はここまで、くれぐれも次回まで闇からの囁きに耳を傾けぬように……。
初めてでもよく分かるクトゥルフ講座 海野しぃる @hibiki
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