主人公が特別な力を与えられ、あるいは逆に格別不利な能力を与えられてスタートする異世界作品が多いなか、この作品の魅力は、主人公が「モブキャラ」の立場からスタートし、しかもそれが主人公の見当違いの方向へ〝読者にとっていい意味で〟変化していく意外性にあるかと思います。
語り口も、共感しやすい視点からストーリーが展開し、なかでも〝主人公がゲーム本編について知らない〟という状況設定が巧みで、予測不可能な展開を生み出しており、冒頭だけ斜め読みするつもりがついつい、いつのまにか引き込まれていました。
好き勝手に行動する姿勢、そして予想外の展開、ユーモラスなシーン、そして他のレビュアーさまも特筆されていますが〝キャラクターたちの個性や関係性〟が秀逸で魅力的で、もはやこすられきったと言っていい悪役令嬢のポジションの活用が本当に巧みで、主人公とのやり取りとあいまって、どのようにこれが進展するのか気になってページをめくっていく楽しさがたまりません。
またアクションやロマンチックな要素を全体に散りばめてあり飽きることがなく、根底をつらぬくユーモアがストーリーを支えており、安心して楽しめる作品だとおすすめできます。
こすられきった題材かと思いきや、まさに組み合わせの妙味で、異世界ものそのものがもともとお好きな方や、逆に異世界ものにはもう慣れてしまったかたにもまた異なる視点から新たな異世界を提供してくれるものと思います。
私事ながら、書き手としてはじめて異世界ものに手を出してみることにしたとき、構想と執筆の参考に選んだものがこの「モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが〜ゲーム本編とか知らないし、好き勝手やります〜」だったのですが、さいしょにこの作品と出会えたことは本当に幸運でした。ここを借りて作者様にお礼を申し上げたく、また良作をまだ未見の読み手さまにお伝えしたく、レビューいたしました。
たのしい作品をありがとうございます。
続きも楽しみにしております✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。 朱