初めてでもよく分かるクトゥルフ講座
海野しぃる
一学期
第1回 クトゥルフ神話ってなぁに? 改
【はじめに】
はじめまして皆様、私sealと申します。このエッセイではクトゥルフ神話についておおまかに説明していきたいと思います。
さて、突然ですが「クトゥルフ神話とは何だ?」という問は答えの出せない問題です。
それは「ロックとはなんだ?」だとか「SFとはなんだ?」だとか「ガンダムとはなんだ?」のように個々人の心の中に答えが存在してしまう類の問題なのです。
別に煙に巻いている訳じゃありません。
その証明として、ここで今言った個々人の心の中の答えの例を挙げてみましょう。
例えば遥か宇宙から飛来する異形の神々(邪神、旧支配者)が齎す想像の域を超える神話的厄災を描く物語
例えば陰鬱で退廃的な恐怖の物語
例えば幻想的で儚くも尊い夢の如き物語
例えばスーパーロボットが邪神をぶった切る物語
例えば邪神と戦った光の戦士の物語
例えば非力な人間が知恵と機転と勇気で淫祠邪教の徒の陰謀を打ち砕く物語
例えば古代文明の戦士が邪神とプロレス技で殴り合う物語
そして邪神と純愛する話や邪神とラブコメする話、更に西部劇や料理小説まで有ります。
なんということでしょう。これらのすべてがクトゥルフです。ジャンルはバラバラ、テイストも文体も、方向性も全部バラバラ。
これだからとっつきにくいと感じる方が多いのかもしれませんね。
でも大丈夫です。
だって全部知る必要は無いんですから。
作者だって好きなところや自分が書いている斬魔機皇ケイオスハウルに関わる部分以外はたいして深く知っている訳じゃないんですよ。
なのでクトゥルフに興味を持った方はまず興味を持った部分が何処かをはっきりさせ、それについて周辺の知識を集めていくのがオススメだと思われます。クトゥルフ神話においては多くの知識が連結しており、それが切っ掛けでまた新たな興味が湧いてくる筈です。このエッセイはそういった未来の探索者となるかもしれない皆様の、果てしなき探求の旅の一助になることを願い、書かせていただきます。
【クトゥルフ神話の概略】
さて、それはそれとしてクトゥルフ神話についての概略だけは説明させてもらいます。
クトゥルフ神話というのは外宇宙から訪れた神々やそれに関わる生命体の設定を共有した一連の物語群のことです。ちなみに主神はクトゥルフじゃないですよ。
クトゥルフ神話において重要なのはこの設定の共有という奴で、これがあるからこそクトゥルフ愛好家達はみんな楽しそうにいあいあくとぅるーふたぐんしている訳ですね。
個人的にクトゥルフ神話の肝はこの設定・用語の共有に有ると思います。設定・用語を知っている者同士で
「こいつをここで使ってきたか!」
「この話の中心に居たこいつって実はアレだったの!?」
「あ、この話の怪物……アレがモチーフかな?」
「この描写……もしかしてあの場所での話なのか?」
とニヤニヤするのは実に楽しいものですから。
だからクトゥルフ書きたかったらまずは気に入った邪神の設定だけ勉強すれば良いんです。わからないクトゥルフ作品が有る時は作品に出てくる邪神の設定だけ勉強すれば良いんです。面倒だったらtwitterなり近況ノートへの返信なりなんなりでsealまでご一報下さい。簡単に纏めてこのエッセイのネタにさせていただくので。
さて、クトゥルフの話に戻りましょう。ともかくそうやって楽しむだけだったらクトゥルフ神話はここまで流行らなかった筈です。皆が創作へと盛んにクトゥルフの設定を取り入れたのは、其処で息づく邪神達の設定そのものが魅力的だったからだと私は考えています。
あえて個別の邪神の設定についてはここで細かく言及しません。ここで話すのはあくまで総論。いかにしてクトゥルフ神話がその魅力的な世界観を練り上げられたのか。その理由について今は語りたいと思います。
まずクトゥルフ神話の生みの親であるH.P.ラブクラフト御大の精力的な活動です。まだネットも発達していない時代に、文通などで多くの作家仲間のクトゥルフ作品を読み込んで細かに訂正したことが挙げられます。ネットの無い時代にこれだけの事をしたからこそ、創作仲間の中でクトゥルフ神話が根付いたのでしょう。
続いて、彼の盟友であり弟子でもあったオーガスト・ダーレスがこのクトゥルフ作品を世に出す為の出版社を自ら作り上げ、仲間と協力してこれまでのクトゥルフ神話の設定をまとめ、さらに多くの優れた後進を世に送り出したことが挙げられます。クトゥルフの世界観を固め、なおかつ有力な後継者を生み出したことにより、仲間内の遊びだったクトゥルフが市民権を得ていくのです。
ざっくり簡単に纏めると「初期の段階で強固かつ魅力的な設定の核とそれを利用して独自の作品を創り上げることができる執筆者の育成ができていた」ということですね。
これにより魅力的な世界観に少しずつ優れた作家たちが自分の設定を継ぎ足し継ぎ足しする構造が完璧に確立され、傍から見ると複雑怪奇なクトゥルフ神話の世界が出来上がったのです。
カクヨムロボ勢にちょっと似てますね。
さて、クトゥルフ神話自体がどのようなものかはご理解いただけたでしょうか?
理解いただけた方、ありがとうございます。
やっぱり良く分からないという方、おまかせ下さい。
ざっくりまとめると、クトゥルフ神話とは、創作意欲を掻き立てる素敵な設定が用意された最高の創作の舞台ってことなのですよ。しかもこの舞台、誰にでも好きに使えて、なおかつ好きな所だけ使えます。
もし興味をお持ちになっていただけたのならば、この忌まわしき旧支配者達の笛の音と共に私達と一つ踊ってくれませんか?
宇宙の深淵と私は何時でも貴方の、いいえ貴方だけのクトゥルフ神話をお待ちしております。
【最後に】
貴方の好きなクトゥルフ神話が貴方のクトゥルフ神話です。ただし他人から同意を得られるとは限りません。
ただしコアとなる設定は有るので創作にあたってはそれを踏まえた方が読んでいる方も楽しめることでしょう。
クトゥルフの個別の知識や設定に関しては今後各論で触れるので今のうちにリクエストをしておいてください。リクエストくれると作者が喜びます。
作者が喜ぶと続きを書き始めます。お得ですね。
あと身の回りのクトゥルフについて知りたがっている人にこのエッセイを勧めてあげて下さい。
以上です、今回の講座を終わります。
次回まで闇からの囁きにご注意下さい。
【追記(2018/08/16)】
今後も度々触れることになると思いますが、当エッセイでは一連の神話群をクトゥルフ神話と呼ぶことにしています。本来想定されていたと思しい発音とは少々異なるのですが、私自身がクトゥルフ神話TRPGやその動画、それに新紀元社様の図解クトゥルフ神話などでこの世界に触れたというルーツが有るので、あえてそれを強調する目的でこのようにしております。
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拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。
とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。
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