第19回 ダゴンとハイドラってなぁに?改+メギド72とクトゥルフ神話

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【始めに】


 なんかメギド72でダゴン実装か~ってことで、直接は関係ないものの、昔の記事を少し書き直してみることにしました。むしろあれですね。直接関係無いんだよって話をするための加筆修正みたいなところがありますね。

 


【概要~深きもの? 旧支配者?~】


 旧支配者として扱われるものの、ダゴンもハイドラもクトゥルフの眷属です。クトゥルフの眷属として有名なあの魚人たち「深きものども」の中でも最も大きな個体であるとされています。

 この「深きものども」はクトゥルフ世界において神々に仕える奉仕種族という扱いなんですよね。なのでダゴンが旧支配者なのか、それとも奉仕種族なのか、ちょっと曖昧なんです。

 一応レッサーオールドワンというこれまた曖昧な立ち位置が有るのですが、面倒なので「旧支配者の中では地位の低い存在なんだな」という程度のふわっとした理解でオッケーです。ちなみにTRPGの方では“唯一の存在”かつ“上級の奉仕種族”となっておりました。とはいえ、掲載されている場所は神々のコーナーですので、私がゲームやシナリオで出す時は神の一つとして扱っております。


 当然ですがダゴンもハイドラも外見は巨大な魚人と考えるべきでしょう。ハイドラについては明確な描写が無いので推測になりますが、大型の深きものどもと考えれば、魚人以外の姿になる可能性は低いと思われます。なお、ハイドラに関しては


 サイズは最低でも6m以上とされていますが、映像や挿絵などでは10mを余裕で超える描写がしばしばなされています。まあ最低6mだからって本当に6m程度だとしょっぱいですからね。菊地秀行氏の妖神グルメでは米軍の空母相手に全長200m超のダゴンが大暴れをしています。ロボ×怪物良いよね……全く関係ない話を突然するんですがロボと怪物が火花を散らすジュブナイルファンタジーSFライトノベル「名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を」がとても面白いので皆さん買って読んでください。今まで読んだ中で一番面白いロボットラノベです。


 さて、一気に話を元に戻しましょう。クトゥルフ神話TRPGにおいては、ダゴンとハイドラと同じレベルの大きさにまで育った深きものも存在する可能性が示唆されています。確かにダゴンは大きさがイメージしづらかったり、作品によって特徴が違うものが多いので、我々が作品で見る存在はダゴンやハイドラに似たような何かという可能性は十分ありえますね。


 夫婦仲についてですが、細かい描写が有りません。なのでやりたい放題です。


【概要~いや、そんな! あの手はなんだ! 窓に! 窓に!~】


 さて、あんまり出番が無いハイドラさんと違ってダゴンには代表的な主演作ってものがあります。その名もずばり「ダゴン」。これは十ページ程度で終わるにも関わらず、清く正しい古き良きクトゥルフ(即ちとっても読みづらい一般的なラブクラフト作品)を代表する傑作短編です!


 あらすじですか? ネタバレになるので細かく語ることはできませんが……


「ダゴンが! 窓から! やってきた!」


 って感じですね。

 どのような作品か気になった方は森瀬先生が星海社から出してらっしゃる翻訳集「クトゥルーの呼び声」で確認してみてください。森瀬先生の訳がとても読みやすく、また注釈も非常に詳しいので、誰でも神話世界にアクセスし、「ダゴン」の世界に浸ることができるでしょう。


 さて、この「ダゴン」で出てくるのがあの名フレーズ「窓に! 窓に!」です。麻薬中毒者が手記に書き残した最後の断末魔。この後彼がどうなったのかは語られません。身投げをする筈だったあの哀れな犠牲者は、逃げ出すべき窓にまで先回りされていました。恐らく死ぬよりつらい目に遭ったことでしょう。


 しかし不思議なんですが、この作品の主人公は一体何処の家に居たんでしょうね。汚らしい通りが見える屋根裏部屋に居たという作中の描写からすると、スラム街近辺といったところでしょうか。発表されたのが1919年であることや作中の記述から推測すると、第一次世界大戦中か直後の出来事となります。

 時代背景も考えれば多少混乱は有ったかもしれませんが、どうしてこんな町中にダゴンが居るのでしょうか? おかしいと思いませんか? 町中に入り込む前に気づかれて大騒ぎになっている筈ですよ。


 私は思うのです。本当にこの麻薬中毒者はダゴンを見ていたのでしょうか?


 前の講座でも話した通り、クトゥルフはテレパシーや精神への干渉を得意とする神です。麻薬により精神が薄弱となっていた男に悪夢を見せるなんて容易いことでしょう。もしもこの主人公がルルイエで何か都合の悪いものを見ていたのだとしたら、こうした回りくどい手を使って始末するということは十分考えられます。


 ではこの都合の悪いものの正体とはなんでしょう?


 この話の主人公は、浮上したルルイエと思しき島で正体不明の怪物と出会い、自分が目にしたものの正体を調べた挙げ句狂気に飲まれています。その際、著名な学者にダゴンという神格について質問をしている描写があります。つまり、男はどうにかしてあの怪物とダゴンという名前を結びつけてしまったのではないでしょうか? 神の姿を直接目にした上で、名前をみだりに口を出した結果、男は罰を受けたのではないでしょうか? それとも、ダゴンには、ダゴンという名で慈悲深くも隠された真実の名前があったのかもしれません。真相は闇の中ですが、私には男が知りすぎたようにしか思えないのです。


【概要~豊穣の海神と九頭の毒竜~】


 本来、ダゴンというのは「魚の偶像」あるいは「穀物」という意味を持っていて、ペリシテ人が信仰する恵みの神の名前だったそうです。インスマスを覆う影において、深きものどもやダゴンが生け贄と引き換えに金銀財宝や豊漁を以て報いたのもそういった背景が原因かもしれません。


 ペリシテ人は旧約聖書の悪役みたいな立ち位置で、彼等の信仰した神々はキリスト教でもユダヤ教でも悪魔扱いです。クトゥルフ神話においてもその流れに乗ったのだと考えられます。


 同じくハイドラもギリシャ神話の九頭竜ヒュドラが元になっています。ちなみにヒュドラって名前の神も別口で居るのでややこしい。冗談じゃない。こちらは元のイメージからだいぶ変わってしまっているようにも見えます。ですが、不死の首を落とさないかぎり次々再生する姿は、自らの娘にバックアップを用意させて幾度でも蘇るクトゥルフに重なるものを感じます。もしかしたらダゴンとハイドラも同じような性質を持っているかもしれませんね。


 なお、ヘンリー・カットナーという作家が「ハイドラ」という作品でそのものずばりハイドラという邪神を取り扱っています。ただ、描写的にはギリシャ神話のハイドラに近く、無数の知的生命体の頭部を収集して生きる吸血鬼的な存在です。混同なさらないように気をつけてください。ゲーム的にはイカれた体力とSIZの持ち主ですし、幽体離脱と合わせて語られることが多いので、シナリオに一度使ってみたいですね。


【補記~メギド72のダゴンについて~】


 そう、今回の加筆修正の目的はこれでした。うっかり忘れるところでした。大人気スマホゲーム「メギド72」において、この度ダゴンちゃんが実装となりました。まあでも今の段階で見た感じ関係無さそうですね。まだセリフも出てないですし。パンが大好きなキャラになっているのは、地獄のパンの管理者という悪魔としてのダゴンの設定や、ダゴンそのものがウガリット語の「dgn」という穀物神に由来している点からとったのでしょう。でもガチャは回すわ……印税残り少ないけどガチャ回すわ。


 でも全国のソロモン王は! ダゴンがクトゥルフ神話と関係無いって話はそろそろ聞き飽きてるよね!

 なので関係性を見いだせる筋道があるとすればどのあたりかって話をしようか!

 俺は関係性を尊重する男だからね!


 はい、牽強付会のきらいもあるのですが、メギド72もクトゥルフ神話ネタっぽいものが時々有るんですよ。例えばニャルラトホテプの化身の中には闇の魔神と呼ばれるものが居て、これはアスモデウスではないかと呼ばれています。そしてこのアスモデウス、メギド72だと事あるごとに混沌混沌言うんですよね。スパイス程度に、ほんの少しは意識している部分があるのではないかと睨んでいます。

 あと「母なる白き妖蛆」についてもルリム・シャイコースという神あるいは大地の妖蛆と呼ばれる種族に関係している可能性があります。とくに大地の妖蛆は「夜の末裔」or「夜の子ら」と呼ばれてますし、母と子で対比させたりしてるんじゃないかとこじつけたくなっちゃうんですよね。あと、大地の妖蛆はブリテンにおける先住民族であり、妖精の類に近い語られ方をしているのも、ヴァイガルドやメギドラルの成り立ちに関する設定が出た場合に非常に面白い絡み方が始まりそうな気がします。

 それと、ラヴクラフトの作品である「インスマスを覆う影」でダゴンと一緒に名前を挙げられる悪魔が他に三体居ます。アシュトレト、ベリアル、ベルゼバブです。アシュトレトは極悪遅延モーションがマジで厄介(2018/11/26のメンテにて修正されました)な程度の強敵ですが、ベリアルとベルゼバブはシナリオ上でも非常に重要な役割を担っています。ラスボスと思しき「母なる白き妖蛆」に直接仕えるベルゼバブと、その陰謀に対抗すべく真っ先にメギドラルから飛び出したベリアルが、どちらも「インスマスを覆う影」で名前を挙げられているのは偶然に思えないんですよ。しかも、ベリアルとベルゼバブは対になるように名前を挙げられているんです。何か関係が有るとしか思えないんですよね。


 あともう一つ。クトゥルー神話の世界にはソロモン王を支えた存在に、母なる白き妖蛆ならぬ蠱の父ウブ(ウブ=ビギズ)ってのが居ます。こいつはソロモン王の魔法力の源であり、全ての生命を繁栄させ生きながらえさせることができるんだとか。まるでメギド72のフォトンみたいなやつですよね。これを覚えておくと少し面白いかも知れません。


【最後に】


 クトゥルフ神話は創世におけるギリシャ神話との類似や旧神のモチーフにおけるケルト神話との類似など既存の神話を数多く参考にしています。人間って零からオリジナルのものは中々作れないものなんですよ。なのでクトゥルフについて理解を深めたいと思ったら様々な神話についての知識も同時に得ておくことをオススメいたします。そして気づいたことが有ったら是非こっそり教えて下さい。ネタにしますので。


 時々妄想するのですよ。web小説家の元に届く一通のメール。そこには我々が住む世界を根幹から揺るがしかねないとある神話的事実の手がかりが記されていた……。


 とか、いかにもクトゥルフ神話TRPGのOPっぽくて素敵じゃないですか? そういう展開お待ちしております。かの名作「鈴森君の場合」みたいなノリの事件が良いです。

 

 もし読者の方の中でニャルラトホテップなどいらっしゃいましたら是非その手のクトゥルフものの展開に僕を連れて行って下さい。死んだり正気を失わないで無事に生きて帰ってきて、国家試験合格もしつつ売れに売れまくる新作の企画書が書けるようになりそうな範囲でお願いします。


 それでは皆さん。次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬようお気をつけ下さい。


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 魔法と科学が交錯し、少年と少女が出会い、竜と機神が殺し合う。

 ファンタジーかSFが好きな人なら買って絶対に後悔しません。むしろ僕に感謝するようになると思います。超面白いです。

 この作品、純粋な読み手として読んでも当然面白いのですが、一人の書き手として読むとまた違う感覚がありました。物語の構成が常に綺麗な対比を行っていて、多くの場合は主題を表現する為の道具でおわる対比構造が、主題そのものとなりうる精度と美しさで展開され、熱く切なく美しい物語として生起する。こんなもの読まされたら嫉妬と羨望と絶望しかありません。ロボ書きてえなあ俺も。絶対に読んでください。


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