第十二回 邪神任侠ってなぁに?

【初めに】


 三月十五日。H.P.ラヴクラフト御大の命日、世では邪神忌と呼ばれています。

 そんな日に、デビュー作「邪神任侠」が出版されました! やった! あまりにも最高! ありがとう敏腕担当編集H様! まだ買ってない人はGO書店にGO! 何故なら今回のクトゥルフ講座はそのものずばり邪神任侠の解説だからです! 何を解説するのか、解説してしまって面白さが損なわれないのか、そもそもネタバレ行為になって売上にかかわるのではないか。成る程、そういう考え方もあるでしょう。ですが大丈夫。今回は具体的に言うと異端なるセイレム解説回くらいの感じでやっていこうと考えています。お話の面白さは実際読まなければ分からないけれども、なんだか面白そうだなと思ってもらえる程度にしていきます。ぜひとも楽しんでいってくださいね。


【概要~邪神任侠ってなぁに?~】


 北海道を舞台とした暗黒神話連作短編です。ヤクザにして薬剤師の香食禮次郎が、ある日偶然から保護した謎めいた少女と共に、北海道の各地に巣食う神話的存在と対峙しながら自らの過去に向き合うというお話ですね。COC動画が好きな方はわりとテンションが近いので楽しめるかなと思います。出鼻はおどろおどろしく、中盤は真面目にホラーやる回を混ぜつつも、最後にダイナミックなアクションが入って感動のエンドへ……という作品です。

 この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回ります。


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 さて簡単な紹介も終わりましたし、それでは今回の書籍についてクトゥルフネタやら何やらを解説していきたいと思います。

 此処から先は読んでからのほうが楽しめると思いますので、注意して下さいね。先に書籍を読んでから、こちらを読むことをお勧めします。

 また、ここでの解説はあくまで執筆時点での僕の自己解釈なので話が続いていく内に別の設定が生えたり設定を変えたりする可能性があります。要するに公式じゃないよ! 気をつけて!


●表紙をめくって一枚目の絵


 最高だよね。データで見た時よりもすごいことになってて、やっぱプロの漫画家ってすげーって思いました。表紙であんな「可愛い女の子です」って顔をしておいてこれだものやられましたよ。


●第一章

 出会いの話、担当編集様ししょーに大変気に入っていただいた話です。例のシーンもドスケベイラストがついてしまったのでもう本当に最高ですね。これをやってくださった戦友のもんぷち様とは今後も一緒に、沢山お仕事をしたいところです。という訳で邪神任侠をお友達に勧めてあげて下さい。


【概要~コービット~】


 禮次郎のお出ししていたお薬です。

 名前の由来は悪霊の家で毎度爆殺される例の彼です。詳しくはクトゥルフ神話TRPGの基本ルルブを読んで下さい。

 実在のお薬にクラビットという抗菌薬が有るのですが、使い方はこちらを元ネタにしております。禮次郎の知識は、現実の時間からずれているのですが、そこはあくまで架空のものということで通しています。


【概要~有葉緑郎~】


 僕の作品には何時も出てくる魔術師です。

 アメコミ映画に出てくるスタン・リー様みたいなあれだったはずが、担当様に気に入られて出番が増えた……!

 斬魔師シリーズの元ネタは僕の大好きな作品「斬魔機皇ケイオスハウル」です。宇宙人が云々ってのもあれに出てきたチクタクマンがモデルです。ケイオスハウルは良いものなので、皆も読もう。今書き直したらもっと上手にできそうだな……。

 あ、蕎麦屋もブリティッシュパブも2018年に実在する店がモデルなので、札幌観光の時にはぜひ探してみて下さい。気になったら直接聞いてくださっても大丈夫ですよ。


【概要~清水龍之介の服装~】


 ゴ ッ ド フ ァ ー ザ ー !

 ヴィトー・コルレオーネです。

 貧しい時代を経て、悪事で生きていく中、気持ちだけでも胸張れないと男稼業はできないと、自ら派手な服を着て部下たちにも映画みたいなスーツを着せてるみたいな話があります。邪神任侠はヤクザものじゃないのでそこらへんの話は書籍だとできなかったけど、この辺りも語りたいですね。


【概要~よく見て、よく考えろ~】


 有葉の台詞ですがCOCの時の自分の心得ですね。こまめに目星、こまめにアイデア。そしてここぞというタイミングで赤報隊で培った鉄砲火器の知識を元に手に入れたダイナマイトを投擲しましょう。暴力で解決できると確信するまで絶対に暴力に訴えかけないのが、暗黒神話世界で生きていく知恵です。


【概要~『惨之七秘聖典』、『NECRONOMICON abridged edition』、『螺湮城本伝』~】


 それぞれ『フサンの謎の七書』、『抄訳版・ネクロノミコン』、『ルルイエ異本』となっております。

 ここだけの話それぞれ『魔術師の死体の取り扱い+ニャルについての知識(クチナシの死体の保管と、知識を授けてくれたニャルラトホテプへの接触)』『死者蘇生の儀式に関する断片的な情報(クチナシの蘇生の儀式)』『旧支配者クトゥルフとルルイエにまつわる情報(北海道で暗躍していたダゴン秘密教団への対策)』を取り扱っているので、邪神任侠の物語の裏側で動いていたものについて、ここでそれとなく示唆しているんですよね。

 担当編集様から「せっかくだし第一章に明確なクトゥルフ神話要素入れよう!」と話をしていたので、単に魔道書を出すだけではなくて、こっそりこういう仕込みをさせていただきました。


【概要~肉塊~】


 駄目じゃないか死体は死んでなきゃとか言い出しているのはガンダム大好きロボ勢の癖みたいなものです。ロボ書きたい。二つほど面白いロボ物のアイディアが有るんですよ。

 それはさておき、クトゥルフ神話的に死体が動き出すのは結構ありふれたモチーフで、チャールズ・ウォードや戸口にあらわれたものといった作品で死者が歩きだしています。COCの基本ルールブックのサンプルシナリオも動く死体がテーマの作品が多いですね。

 なので今回もクトゥルフ神話的には王道と言いますか、最初のセッションで相手するには丁度良いと思うんですよね。あえてゾンビではなくて肉塊にしているのは、そっちの方がなんかよくわかなんなくて良いじゃないですか。名状しがたい方が嫌悪感や困惑を味わえて暗黒神話してる喜びがあるじゃないですか。でも分からなすぎると面白くないので、あれくらいの明確な属性を与えつつ最後まで綺麗に表現しきれないギリギリのところを狙いました。


【概要~再生能力~】


 クチナシに由来する能力ですね。鞘埋め込まれているようなものです。ダブルクロスで言うところのノイマン/エグザイルです。でも実際にプレイする時はエンハイ/エグザイルにしています。他のPCと比較して純粋な知性よりも悪知恵という側面を際立たせたいので、ノイマン使うよりも、エンハイと合わせて陽炎の衣→見えざる死神+ブレインハック(状況に応じてデビルストリングス)がすごいしっくり来るんですよね。こいつ何言ってやがると思った方はFEAR社から発売されているダブルクロス3rdエディションを始めてみましょう。面白いよ! FEARバンザイ!

 こぼれ話ですが担当さんはこういうことを早口で言っても完璧に理解してくださるのでマジ最高です。


●第二章

 マリア登場回ですね。web版と違ってかなり主張するし人間的になってます。その分なんというかこう、情念みたいなのを描くことが出来たので、これはこれで好きですね。というかweb版だとクトゥルフ神話知っている人しか共感あるいは納得ができない弱点があったので書籍に合わせて大筋をいじらない程度に変えました。web版のマリアも同じようなことは思っていたんですが、死ぬ直前になってはじめて自覚したんだと思います。

 自分で書いといてあれですがマリアさん思ったよりもセクシーになって最初にラフ来た時ビビりました。

 後ここだけの話、時代考証的に明確におかしいシーンが一つだけあるんですが、まあ水戸黄門とか子連れ狼みたいな時代劇だと思っておおらかに許して。許してください。直したつもりだったんですけどね! ごめんなさい校閲者さん! 訂正したつもりになってたんです!


【概要~石狩~】


 好きです石狩。地元のお店は当時は無かったり、三月だと開いてなかったりするものを出したのですが、まあそこは実際手にとった後の北海道旅行などでうまくしたら行ってみてほしいなあということで一つお願いします。


【概要~光を超ゆるもの~】


 タイタス・クロウシリーズ「幻夢の時計」において出てくる旧支配者特製の超兵器であり、全ての吸血鬼の祖であるとのことです。実質真祖なのでは? 真祖に食われて肉を埋め込まれた禮次郎は死徒なのでは? あの日光に弱そうな白髪とか肌の色とか目の色素の薄さとか、実は吸血鬼表現の伏線だったのでは? 全ての真実はそのうち語る予定です。

 光を超ゆるものは近くに存在する生き物の生命エネルギーを無条件で奪って、次々食い尽くしてしまう邪悪な存在で、普段は制御の為に巨大なルビーの中に閉じ込められています。ですが一度解き放たれると大変危険です。基本的に光が苦手なので、再度封印するのも可能でこそあれ、とんでもない損害が出ます。

 ド・マリニーの時計(時空往還機)でわりあいさっくり倒されてしまいましたが、あれはタイタス・クロウが使うと外なる神さえぶっとばす決戦兵器になるので、決して格は落ちません。あれはタイタス本人でないとはいえ、相手が悪すぎた。


【概要~千の仔孕みし森の黒山羊、万物の母~】


 シュブ=ニグラスさんについては間違いじゃないんだけど、「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」とか「千の仔を孕みし森の黒山羊」にすべきかなあとちょっと思ったんですけれども、千の仔孕みし森の黒山羊だと「タンタカ・タカタカ・タカタタカタカ」って感じの3・4・7になるリズムが気持ちよくてこういう表記にしました。ごめんなさい。シュブ=ニグラスさんについて詳しいことはもうクトゥルフ講座で書いたので読んで下さい。

 阿僧祇家のリビングに刻まれていたのはシュブ=ニグラスの印です。


【概要~黒い仔山羊ダークヤング~】


 シュブ=ニグラスの眷属です。詳しくはクトゥルフ講座のシュブ=ニグラスのところに書いているので割愛。


●第三章

 この辺りはweb版の第九話を膨らませてますね。佐藤喜膳がまさかの登場&挿絵ゲットで何が起きるかわからないものですね。あと豪快に薬局へ物申す展開になってますね。ははは、大丈夫ですよ就活に響く訳が無いじゃないですか。これはフィクションですよフィクション。任侠パートは正月あたりに実家で黙々と書いていました。家族がでかけている間に黙々と書いていました。

 ぶっちゃけこの章は説明すべき新しい用語とかないんですよね。

 強いて言えば倉敷珈琲くらいなんですが、似た名前のお店が札幌に有って僕が好きということくらいです。でも森彦コーヒーも美味しいので悩ましいですよね。というか北海道なら森彦コーヒーだろおめえ当時からあるんだしよぉって声がするんですけど、美少女と化した佐藤喜膳十八歳なら倉式珈琲店選ぶよなあって感覚があるのでこちらにしました。


【概要~女装禮次郎~】


 何を隠そう僕はデモンベインというロボットものゲームが大好きなんですよ。

 クトゥルフ神話の邪悪な連中に戦いを挑む人間の愛と勇気の物語なんです。

 その主人公の大十字九郎さんが女装するんですよね。

 女装ですよ。女装。まあ主人公の女装というのは古今東西あるものですし、自分が読んできた作品で主人公が女装する作品は間違いなく面白かったので、それにあやかって禮次郎に女装させたいなーって思ったんですよ。

 「この章、最後に禮次郎が●●●●訳ですし! 折角ならコミカルなシーンも居れていくべきですよ! 丁度真ん中あたりで中だるみしやすい所でツイストかけていきましょう!」と目を爛々と輝かせて担当編集様に詰め寄ったのはここだけの話です。

 話を進める上でも、世界観的にも、魔術的にも、非常に重要な意味を持つ女装なので女装無しじゃ語れないのが酷い話ですよね。


●第四章

 という訳で最終章。

 壮絶な戦いもここでひとまず幕が下ります。

 俺たちの戦いはこれからだ。それゆけ刻を裂くパラディオン。

 

【概要~例のビデオ~】


 書籍版から来た方はweb版の方に例のビデオの中身全部書いているので、ぜひ読んで下さい。『第11話 子供の領分 第四曲「雪は踊っている」』ってところなので、同名の曲を流しながら読み進めると最高に気持ちよくなれます。

 リンクはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883167536/episodes/1177354054883186761


【概要~月に吼える~】


 三文文士なので月に吠えたり月に吼えたりします。

 クトゥルフ神話ではニャルラトホテプの化身として「月に吠えるもの」が居ます。

 でもきっとそんなに関係ないです。きっと。


【概要~海魔~】


 有葉緑郎はダゴン秘密教団のお偉いさんの家に生まれています。

 実権はそんなにないものの、名誉職的なのを代々任されている感じです。

 有葉自身は魔術師としては中の上ですが、自ら書いた原稿を使ってブーストすることで上の中くらいの魔術師として力を使うことが出来ます。


【概要~視力を失う禮次郎~】


 アマゾンッッッッ! あとがきにも書いてるじゃないですか! ロボとか仮面ライダーが好きだって!

 さぁ、プライムに入ってアマゾンズを見ましょう。

 やがて星が降るので実質クトゥルフ神話かもしれない……いや違うわ。

 詞隈とか、薬学研究者とか、食うか食われるかとか、わりとアマゾンズの要素に影響を受けています。



【最後に】


 という訳で邪神任侠の「特に分からなくても話を楽しむのには問題ない小ネタ」集をひたすら語ってみました。映画のDVDによく付いているオーディオコメンタリー概念です。

 なんかこれ以外に気になったところがあったら語りますので応援コメントなどで聞いてくれれば幸いです。キャスとかやりたいですね。ひたすらこういうのの説明するやつ。

 何時だか、クァチル・ウタウス回の頃に、皆様の応援が少しずつ積み重なればそれが夢に繋がる道になる的な事を話したのですが、本当になりましたね夢への道に。

 それもこれも全て皆様のお陰です。

 今後も更に良い作品、面白い作品、読む価値の有る作品を提供していければと思います。応援に応えられる作品ですね。今後とも宜しくお願いします。


 さて、今日は此処まで。次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。


 特に次回は鈴森くん特集ですから! 絶対来てね!

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