第6回 クトゥルフってなぁに? 改

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【始めに】

 

 唐突ですが豆知識。よくクトゥルフ界隈で「いあいあ」言っている人が居るでしょう? あの「いあいあ」というのはどういう意味が有るかご存知でしょうか。かつてクトゥルフ世界内で繁栄を極めたとされるヘビ人間のというのが居りまして、そのヘビ人間が使った言葉であるアクロ語が語源だとされているんですよ。


 アクロ語において「いあ」とは「我は飢えたり」という意味です。そこから転じて恵みを求める言葉として祭祀において使われるようになった訳ですね。よって「いあ・いあ、くとぅるー・ふたぐん」だと

 

 我は飢えたりいあ・いあ神の与え給う恵みにくとぅるー・ふたぐん

 

 と、なるわけです。さてそんな豆知識を枕にしてしまった以上、今回はついにクトゥルフ神話の顔とも言うべき神格クトゥルフを取り上げます!


 クトゥルフ神話って言うけど別にクトゥルフが主神って訳じゃない……とはこの前言いました。しかしクトゥルフが一体何者かについては話していませんでしたね。なので今日はしっかり説明させて貰いますよ!


 このクトゥルフはしばしば海の神だの水を司る旧支配者だの言われますが、こいつ自身は特に水属性というわけではありません。


 単に大昔の地殻変動と星辰(星の配置みたいなものだと思ってください)の変化で力を失い水底へと封印されただけです。長い封印生活の中で水中に適応しただけで、元々はむしろ苦手なくらいなんですよ。


 さて、それだけ言われるとクトゥルフというのがどんな力を持つ神なのかわからなくなってきますね。私も最初は分かりませんでした。


 でもご安心下さい。頭の中にクエスチョンが沢山出てきた貴方にこそ、説明の甲斐があるというものです。それでは神話の世界まで少し心を飛ばしてみましょう。


【概要~名前について~】


 クトゥルフ、クトゥルー、ク・リトル・リトル、トゥートゥー、トゥールー、様々な発音で呼ばれるこの神ですが、どれが正しいということは有りません。


 もう第六回ともなると皆様ご存知かと思われますが、我々矮小な人間風情が偉大なる神々の名を正確に呼びかけることなど不可能です。好きに呼びましょう。


 ちなみにクトゥルフという呼び方はクトゥルフ神話TRPG(元々外国生まれのゲームです、念のため)を輸入した際の訳によって広まったものです。本来の発音はクトゥルーあるいはクルルーに近い雰囲気で、咳き込むように発音するのだそうな。なのでクトゥルー神話って普段から言うとちょっと違いをつけられるかもしれませんよ?


 ただしsealの作品では話している人間がクトゥルフの眷属あるいは関係者・知識人であるということを示したい時にはクトゥルー、特にクトゥルフと直接的な関係が無い人間が話す時はクトゥルフで分けていくことにしています。


 だってそっちの方がキャラが立つでしょう?


【概要~外見は? 化身は?~】


 さてこちらのクトゥルフ、外見は非常に有名です。


 タコのような頭、人に良く似た胴体、そして背中にはコウモリに似た翼が生えていて、全身が鱗で守られています。恐らく此処を覗くような皆さんでしたらネットで一度は見たことがあるでしょう。


 でも皆さん、実はこの神格は自由に姿を変えられるのはご存知でしたか? あの姿は信者から崇め奉られる為の公的なイメージとしての姿であり、その気になれば自由に姿を変えることができるのです。


 そういうわけでクトゥルフの化身は結構たくさん居たりします。精神体であるコラジン、ポナペ経典や聖書に描かれた「すべてのサメの父(リヴァイアサン)」、そして聖書の獣と同じ名前を持ちながら全く異なる性質を持つベヒーモス。九頭竜なんかもクトゥルーとの関係性が示唆されていますね。星に影響される九頭なんて、単なる言葉遊びに終わらない関係性を妄想させてくれます。

 もう少し調べればもっとマイナーな化身も出てくるかもしれません。クトゥルフの眷属の中でも最大のものであるダゴンも、実はクトゥルフの化身という説が有ります。

 


 あとは私の短編「これから小説を書きます」に出てきたコラジンという悪魔もクトゥルフの化身ですね。コラジンについての詳しい情報はKADOKAWA/エンターブレインから発売中のクトゥルフ神話TRPG「マレウスモンストロルム」に載っています。アマゾンではたったの4860円で購入できるので積極的に買いましょう(2017年2月12日時点)。

 此処で触れることがあるとすれば、「これから小説を書きます」という小説でコラジンを悪魔として扱ったのは、新約聖書でイエス・キリストの教えを受け入れなかった町の名前がコラジンだから、という裏話くらいです。


 ただ、それ以外に何か触れることがあるとすれば、なんと面白いことに「すべてのサメの父」以外の化身は夢を通じた精神的接触を多用する性質を持っています。数多居る化身の共通項ですね。クトゥルフは人間の精神に多大なる興味を持ち、なんとかして接点を得たいのかもしれません。

 ロボットアニメ大好きの私としては、ファフナーのフェストゥムか、ガンダム00のELSかなって思っちゃいます。


【概要~世界に広がる信者の輪~】


 クトゥルフの信者は世界各地の港町や水辺に居ます。ある者は宝との引き換えに、ある者は冒涜的な夢の中で、ある者は知識の探求の果てに、それぞれの理由でクトゥルフと取引を行いました。その結果としてかの神の血を受け継ぐおぞましき信奉者“深きもの”を人間の大地に招き入れ、少しずつですが確実に世界を蚕食しています。


 先ほど触れたようにクトゥルフが多様な名前を持つのはこのような形で世界中に信者や教団が有り、いずれも長い歴史を持っている故に本来の名前から少しずつ訛っていったせいだとされています。

 

 こうしたクトゥルフの信奉者達の中で有名なのは、やはりクトゥルフの眷属であるダゴンを崇め奉る“ダゴン秘密教団”でしょう。あの退廃港湾インスマスでうろこぴょんぴょんさせていた連中です。


 クトゥルフと聞くとおぞましい魚人みたいなイメージが有りますが、この教団とその信奉者達がそれらのイメージ形成に一役買っております。


 彼らは信仰の度合いに応じて以下の三つの誓いを立てる事が知られてます。

 一つ、教団に危害を加えぬこと。

 一つ、教団の計画に対して金銭や労働力の提供を行うこと。

 一つ、深きものの連れ合いを作り子供をもうけること。

 実は誓いはこれだけでなく、司祭などの間でだけ知られる秘密の誓いが有るという話も有りますが、明確に定められているのはこの三つだけです。


 ラストの深きものの連れ合いを作り~というのがなんとも冒涜的です。深きものって大体気持ち悪い魚人フェイスと悪臭がトレードマークなので非常にきつい。これで見目麗しいけど眼だけ魚っぽいイケメンとかお嬢さんとかだったらこちらとしてもノリノリで「いあいあだごん! いあいあくとぅるふ!」とか言い出すんですけどね。独身男女の救世主、そして信者数倍増の切り札になるかもしれません。


 ええ、俺だって青髪ロングで額が広めの母性にあふれたパッツンロリカワ深きもの(擬人化ネタ程度の人外要素、鱗は多少ならオーケー、個人的には魔術を解くと人魚になっちゃうのが一番美しいと思っている)がある日突然転がり込んできたらクトゥルフの信奉者になるんだけどなあ! 一応姿を自在に変えられるクトゥルフの血を受け継いでいるのだからちゃんと人間ウケする姿になってくださいよ! おねがいしますよ!! やれよ! そんなこともできないから拠点の海底都市イハ=ンスレイに爆弾ぶっこまれるんだよ! バーカ!


 あ、ちなみにそれっぽいヒロインが出てくるクトゥルフ異能バトル「A Big C」は2016年7月14日に公開です! 宣伝も兼ねて「A Big “C” 1st Season ~vs紫光帝サンダーロードニコラ・テスラ~ 」も公開! 是非読んでね! 他人にやれよって言ったら自分からやっていくスタイルで今後も頑張ります!


【概要~クトゥルフの来訪~】


 さて、CMタイム終了です。真面目な話に戻りましょう。今からクトゥルフという神格が、地球において如何に生きたのかを語ります。


 世界各地に信者が居るクトゥルフ。そんな彼が最初に地球を訪れた時はムー大陸を拠点にしていました。当時地球を支配していた先住民族“古のもの”との戦争を乗り越え、最終的に地球の分割統治を認めさせた過去が有ります。


 古のものというのは拙作ケイオスハウルで佐助君に乱暴狼藉働かれていたあの女騎士みたいな奴です。地球の先住民族で優れた科学力を持っており、ショゴスを作ったのも彼らです。古くて偉くてでも負けてるから女騎士属性付与エンチャントサトウユキ・ミサクラしました。完全に無辜の姫騎士なので、創作の際には真似しないで下さい。


 ムーを統治していた頃のクトゥルフは積極的に統治活動を行っており、自ら恐竜に乗って領土を巡幸したと言われています。領地や領民に関心を持ち、良きにつけ悪しきにつけ強力な支配を行っていたであろうことがここから分かります。


 このマメな性格、封印された今なお世界各地でカルト教団を持っているだけのことは有りますよね。

 星辰の変化、すなわち星の位置の変化により力を失い、眠りについてしまうまでは、クトゥルフの支配は続いたそうです。


【概要~そんな邪神のご家庭は?~】


 そんなクトゥルフですが結構家族に恵まれています。


 兄弟ながらも犬猿の仲であるハスター、ファッキンビッチで恋愛脳で母親でハスターの妻であるシュブ=ニグラス、やんちゃな息子ガタノトーア、娘にしておかーさんであるクティラ、落とし子の癖に人間によってオリーブオイルでアヒージョにされるクトゥルヒ。


 特にクティラは非常に興味深い存在で、クトゥルフの娘でありながら彼が滅ぼされた時はその胎よりクトゥルフを生み出すとされています。あの名作デモンベインでも似たようなことをしたラスボスが居ましたね。


 なお、このクティラが出る作品はあまり多くありません。有名どころだけで言うと「タイタス・クロウの帰還」と格闘ゲームの「カオス・コード」くらいでしょうか。創作の余地が大量に有って非常の素敵ですね! 


【概要~結局何をやっているの?~】

 

 という訳で、今まで話していた通り、クトゥルフは水を司る神などではありません。非常に人間に近い価値観を持ち、更に精神干渉を得意とするタイプの神格です。鋭敏なテレパシー能力は大量の海水で封じられてなお人々の元へ届き、彼の住まうルルイエが万一にでも浮上しようものならば世界中の人間が彼の精神と直接触れ合って発狂することでしょう。


 また、強大な魔術を使うことでも知られています。現在、この地球を始めとして様々な場所で旧支配者と呼ばれる邪悪で強大な神々が封印されて眠っています。彼等が死ぬこともなく静かに眠り、力を蓄えることができるのはこのクトゥルフの用いた魔術のお陰なのです。


 眠る旧支配者が、彼等に敵対的な旧神に殺されることを免れたのは、このクトゥルフによるファインプレーが有ったからとされています。


 直接的な力ならばもっと強い神は沢山居ます。ですがクトゥルフの魅力や特徴はそんなところにはありません。

 遥か太古から我々人類と積極的に触れ合い、神としての力を存分に見せつけ、夢という手段を通じて人間の多くに影響を及ぼした行動力。

 そして魔術により同じ旧支配者達を紙一重で守ったという功績。

 こういった理由から、クトゥルフはというわけです。


 人類を知り、人類を使い、人類と生きる。クトゥルフは弱く愚かな筈の人間を上手く使う非常に危険な邪神です。単純な怪物というだけではなくこのように思慮深い邪悪さを演出するとTRPGの時には話が盛り上がることでしょう。


【最後に】

 はい、という訳でクトゥルフ回でした。

 如何でしたか?

 役に立って、なおかつ面白ければ幸いです。


 次回はシノン様からのレビューを参考にクトゥルフで良くある言い回し(SAN値、いあいあ、窓に! 窓に!、手記、魔道書、魔術師)とクトゥルフ神話TRPGをやる際に気をつけておくことを取り上げてみたいと思います。

 sealは元々卓ゲ畑の出身ですのでお役に立てれば幸いです。


 それでは次回まで闇からの囁きに耳を傾けぬように。


【CM】

《天ヶ瀬アマタの斬魔行路》

「人の世の法で裁けぬ悪鬼共――魔剣の刃に、血濡れて眠れ!」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882713202

現在カクヨムにて連載中!

異世界物かつ仕事人となっております。

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