第7回 クトゥルフ神話TRPGってなぁに?(その他神話的言い回しについての解説)

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 拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。

 とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。


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【始めに】


 今回はちょっとした小ネタとしてクトゥルフ神話TRPGの簡単な遊び方講座をさせていただきたいと思います。その説明と絡めてクトゥルフ神話で良くある言い回しについてもちょいちょい触れていく予定です。

 割と遊びの多い回ですし、卓ゲ(TRPGのことです)の遊び方など鳥取(その人が良く遊ぶプレイグループのことです)によって千差万別、話半分に聞いてやってください。


【クトゥルフ神話TRPGの遊び方講座】


 クトゥルフ神話TRPG(原:Call of Cthulhu)はアメリカで発売されたホラーTRPGです。TRPGについて知らない方は角川様の方から出ております多種多様なTRPGリプレイや、エンターブレイン様から出ておりますクトゥルフ神話TRPG公式リプレイの“るるいえシリーズ”を読みましょう。どのみちやるとなればあの分厚いルルブ(TRPGを遊ぶ為に必要なルールを書いた本)を買うのですから安い安い。

 無料でリプレイに触れてみたい方はカクヨムで言えば「クトゥルフ神話 探索者たち ~鈴森くんの場合~」なんかがオススメですね。リプレイとしても小説としても実に優秀で、ゲームそのものに慣れた頃にはまた違った楽しみ方ができる一粒で二度美味しい名作です。


 探索者の作成や判定などについては当たり前ですがルルブにお任せするとして、この講座で触れていきたいのは「一般的に腐りにくい技能の取り方」と「PL(参加者、クトゥルフ神話の秘密に巻き込まれる人々)としての立ち回り」です。

 個人的には「KP(脚本・監督・進行役、クトゥルフ神話の秘密に巻き込む人、あるいは神)としての遊び方」も入れたいのですが、いかんせんsealは


・ホラーショウで「某アイドルゲームのアイドル達が撮影したという設定のクソ映画卓」


・比叡山炎上で「ニンジャスレイヤー卓」


・クトゥルフ2010で「デモンベイン卓」


 とまあろくなことをしていないので自重させていただきます。各方面にごめんなさい。皆は真似するなよな!


【クトゥルフ神話TRPGの遊び方講座 一般的に腐りにくい技能の取り方】


 KP


 冗談ではありません。KPとしても円滑にシナリオが進んで欲しいんです。ええ、たとえ糞映画卓だったとしてもそうなんです! なのでシナリオを進める上で欲しいと言われた技能は最優先で取ってください。だいたい60~70くらい有れば大丈夫。ちょっと数字が足りないなと思ったらロールプレイとかで補正もらえるように立ちまわってみましょう。クトゥルフ神話はそういう立ち回りをするゲームです。

 そんなのいきなり思いつかない? はい、sealも最初はそうでした。

 でも適当に喚けば案外なんとかなります。

 例えば「場所を絞って目星使いたいんですけど、ボーナスもらえますか?」とか「このキャラとは長い仲なので心理学にボーナスもらえますか?」と言えば案外もらえるものです。KPだって話進めてPLにクリアして欲しい訳ですから、ちゃんと誘いには乗ってください。プロレスみたいなものです。ちなみにシナリオをクリアされたくない系KPはKPって言わないから気にせんでええのよ。


 さて、KPから言われた技能は当然取ったとして。その後にはどのような技能をとっていけば良いのでしょうか? 答えは簡単。


 PL


 TRPGというのは大体において役割分担のゲームです。クトゥルフでもおおまかに探索、文献調査、荒事、対人、治療みたいな役割に分けられると思います。PCの能力やセッションの傾向から役割を分け、それに応じて技能をとるのが良いでしょう。というわけで役割説明を始めます。

 ちなみに※がついている役割はセッションによっては一切必要ないこともありうる役割です。


【クトゥルフ神話TRPGにおける役割】

※INTやAPPなどの能力値の解説は省略します


探索:

 危険なものを実際に見たり聞いたりする役割、一番SAN値が減る。目星! 聞き耳! 忍び歩き! 鍵開け! 隠れる! INTとPOWの両方が高いと個人的にはベストですが、発狂リスクとの兼ね合いでINTはちょっと低いくらいでも良い。とにかくPOWだ、POWを上げて命という名の盾となれ。多少は戦闘というか自衛能力が有ると良いでしょう。交渉技能も有ると捗るぞ。

 あとは部屋に入る前には「聞き耳!聞き耳をする!!」と叫んで、部屋に入ったら「目星! 目星をする!!」と叫んでおけば良いんじゃないでしょうか。や~ん、SAN値減らしたくな~い><とかカマトトぶってる暇が有ったら情報とってこい、って感じの役目です。一番探索者できて楽しいよ!


※SAN値とは探索者がどれくらい正気度残っているかを示す値だと思ってください、ルルブの内容なので詳しくは割愛


文献調査:

 ひたすら図書館(もしくは図書館+コンピュータ)したり、知識に任せてオカルトやその他学問系の知識をロールする人。だいたい対人役との兼役をするのでこちらはINTが高いと良いでしょう。治療担当をやるのはやめてください死んでしまいます。貴方がろくでもない文献読んで発狂した時に誰が治療してくれるんですか。逆に発狂する時は自分が本を読んでいる時が多いので、治療してもらえる確率は高いといえます。

 外国語に詳しいと吉。英語とかラテン語とか中国語とか、そこらへんはKPと話してセッションの雰囲気で決めてください。


荒事※:

 クトゥルフモンスターや狂信者が襲ってきた時、頑張って殴りあってください。

 神話生物によって倒せる倒せない逃げられる逃げられないをメタ視点で判別できる経験者がやることをお勧めします。

 銃を取るか、武道を取るか、それともその他の武器をとるか、それは状況次第なのでお任せします。この役割を取る人間にアドヴァイスなんて今更です。今回お話している役割理論に照らし合わせると、対人役か治療役との兼役がおすすめですよ。

 対人役は調査パートで有用ですし、狂信者とかと交渉決裂しても即座に暴力に訴えられるので有用です。治療役については戦闘特化の方がダメージ受けにくい上に治療はだいたい戦闘後にやることも(個人的な経験では)多いので案外噛み合います。

 発狂すると味方にとんでもない暴力が降り注ぐ可能性も有るので注意してください。もしも治療役をやる場合は精神分析だけ別の人に持ってもらうのも有りかもしれません。正気にさえ戻ればなんとかなります。

 発狂回避の低INT、高POW、そして恵まれたSTRやSIZやCON、可能ならDEXも欲しいと難しいところなのですが、狂信者に一方的にボコにされない為に調査の際にも一人は欲しい役どころです。調査役に最低限の戦闘力持たせるのも有りです。安全靴、杖、ブラックジャック、仕込杖、海外あるいは警察なら拳銃。時代によってはライフルとかサブマシンガンぶっぱだってできる。お好きにどうぞ。


 さて、かの有名なマーシャルキック、武道キックについてだけ捕捉もしておきましょう。あれはハイリスクハイリターンです。習得コストは莫大、武道ルール無しだと火力はショットガン並(勿論それも十分強力ですが)。フルオート連射や爆弾投擲には所詮かないません。あと武器を装備する必要が無い為、習得者が発狂すると本当に危険です。

 ただ、運とKPの機嫌と調査の進捗が良いとクライマックスでは愛と哀しみと仲間たちの無念を背負った武道キックでイゴローナク(神格だけど人型なので武道による追加効果を狙って良い裁定が下ることも有る)を一方的に蹴殺せることも有ります。有りました。やりすぎた。ごめん。


対人※:

 とにかく信用、言いくるめ、説得、心理学、その他諸々で人間相手に情報を引き出す係です。文献調査役と兼ねるのも良いですね。これも慣れていて口八丁なPLがやった方が良いでしょう。特に中の人の発想力が重視される役割です。これはアドヴァイスできることがそれほど有りませんね。探索役との兼ね役も良いかもしれません。


治療:

 医学や精神分析などで味方を癒やすヒーラーです。医学は調査技能としても便利なので、できるなら応急手当じゃなくて医学とった方が良いと思います。でも応急手当は簡単に取れるからね。こっちはこっちでちょっとかじるのに超便利。これだけだと仕事が少ないので対人役か文献調査役との兼役とかが良いのではないでしょうか。ただし文献もやるなら精神分析とかは他の人にとってもらいましょう。

 あと多少医学の値が低くても応急手当キットとか医療用キットとか持っていると多くの場合は補正をもらえることもあるので、キャラを作る時はちゃんと持っていると設定しましょう。発狂しにくいに越したことはありませんが、結構どんな性能のキャラでもやれちゃう割に重要なお仕事です。誰かが副業でやるのが基本ですね。


 このように多くの役割がクトゥルフ神話TRPGには有るので、能力値決定後におおまかな役割分担を行い、その役割に合わせて技能をとっていくと良いでしょう。誰が取るか悩むような技能も出るかもしれませんが、後半に紹介した荒事(非武道型)や対人、治療役のキャラは比較的技能ポイントが余りやすいのでそれを補うと良いと思われます。僕はショットガンで最低限戦闘能力確保して、信用&図書館+αあたりを振り回すディレッタントが好きです。+αで目星、オカルト、外国語、隠すあたりが入りますね。


【立ち回りについて】


 ともかくこのゲームは情報とってなんぼです。戦闘役以外は発狂のリスクを恐れずに突っ込んでいった方が楽しいですよ。というか突っ込め、良いな! 特に探索役はアグレッシブに行け! 狂った後は他の人々にカバーしてもらえば良いんだ! クトゥルフ神話TRPGはKP含めたチーム競技だ! 皆で楽しもう! 「イェーイナイス発狂!」「イェーイ!」で良い! ちなみにsealは合法的に発狂ロールしたいから基本的に毎度探索か文献担当希望してるぞ!

 皆も被害担当艦になって他のメンツのSAN減少を減らしつつ以下のように情報を取りまくろう!


KP「死ぬ者は運が悪い!」

seal「目星!」

KP「見るものも悲しんではならん!」

seal「クリティカル!」

KP「ああよか目星じゃ!神話生物じゃ!」

seal「いあいあ!(絶賛発狂中)」

他PL「ああ良か発狂じゃ!(精神分析)」

seal「いあいあ!(SAN値以外復活)」

※このあと最初に戻る、SAN値多めの面子が多人数で目星(だいたい低め)を振って探索役のSAN減少しすぎないようにしたりもする

※こういったSAN値のダメージコントロール大事、探索役設けるのもそもそもダメコンの一環

※命もSAN値もクライマックスに投げ捨てられるように可能な限り温存しましょう


 はい、初めて卓ゲやってた頃は大体こんな環境でした。

 当然ですがあんまりさっさと発狂すると他のPLに迷惑だし、土壇場までは生き延びましょう。

 ちなみにこの「いあいあ!」って奴はアクロ語において「私は空腹である」という意味を持ち、神への祈りとして狂信者がしばしば使っています。要するにお恵みを求めている訳ですね。皆も狂信者になって神の恵みを乞い求めよう!


 さて、(自キャラの)死は恐れないでガンガン調査に行くのが基本的に良いPLです。ただそういうプレイしていると死にそうになりますから、文章で自分の持つ情報をまとめて残しておきましょう。ちゃんと情報を残せないと味方が全滅するからです。オールフォーワン、ワンフォーオールの精神ですね。グレート・オールド・ワンの星辰じゃありませんよ。

 こうして残された文章は“手記”と呼ばれ他の探索者の調査の力強い助けになります。原作のクトゥルフ神話作品でも狂気に囚われた人々の手記がモチーフになっているものは非常に多い。

 かの有名な「窓に! 窓に!」という一節もとあるクトゥルフ作品における登場人物の手記の中に書かれていた名文句なのです。

 なんでそんなギリギリまで細かく書いて実況していたのかは当時から突っ込まれていたとかいないとか。ともかく受けたので手記形式の作品は今日まで続いていますし、TRPGの方でも手記は重要アイテムです。


 最後に魔道書についてです。魔道書はすなわちクトゥルフ神話についての知識が書いてあるすごい本なのです。使い方次第ではたいへんなことになってしまいます。

 これはKPにちゃんとお伺いを立てて運用しましょう。情報源なのか、魔術使わせたいのか、それともトラブル的に手に入ってしまっただけなのか。

 それまでのシナリオの流れや開示されている情報からKPの希望に沿った使い方をしてあげてください。

 そしてKPがぶっちゃけたらそれに従ってください。

 お互い慣れた間柄だったら「魔術師プレイしようぜ!」「ひゃっはー!」も十分できる(というかやったことある)のでおもいっきり愉しめば良いと思うよ。

 萎縮の呪文喰らって死ぬ狂信者とか、ニンジャvsマジシャン~暁の決闘~とか完全にギャグでした。


【最後に】


 如何でしたか? 皆様がクトゥルフ神話TRPGを遊ぶ際の一助になる文書になっていたら幸いです。みんなもあの分厚いルルブを買って図書館技能でさくさく熟読してください。拙作ケイオスハウルではクトゥルフ神話TRPGのルルブやサプリのパロディネタが時々突っ込まれているので更に楽しく読めるかと思われます。

 ケイオスハウル二十五話でナイ神父がやられた時に、最後の反撃かましてくるのを予想した我らが主人公佐助君の行動は、完全にクトゥルフ神話TRPGの知識です。ケイオスハウルは異世界で現実の知識を使ってチートする話だったんだよ!!


 最後に真面目な宣伝。今回紹介した墨の凛様の作品「クトゥルフ神話 探索者たち ~鈴森くんの場合~」は非常に面白いリプレイ小説なので是非お読みください。卓ゲにおいて欠かせない“判定”を上手にとりこんで魅せる演出に昇華させた傑作です!

 キャラもめっちゃ萌えるかんな! 女の子可愛いかんな! 皆読めよな! ちなみに俺は夢子ちゃんが大好きだ! 第二十話読むように!

 

 というところで本日はおしまいです。クトゥルフ神話TRPGの立ち回りはなんとなく分かっていただけたでしょうか。

 これはあくまでsealが今まで居た環境を元に構築した独自の理論なので必ずしも正しいとは限らないことを最後に注意させていただきます。


 それでは本日はここまで、皆様お付き合いいただきありがとうございました。

 次回はニャルラトホテプについて簡単に触れてみようかと思います。

 題して、ニャルラトホテプ概論です!

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