第8回 ニャルラトホテプってなぁに? 改
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拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。
とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。
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【始めに】
さて、最初から趣味で押してきた解説でしたが、そろそろ本当に趣味に走っても許されるよね。というわけで今回はニャルラトホテプの解説です。
そう、カクヨムロボット物の中でも大人気の「斬魔機皇ケイオスハウル」でも主役を張るあのニャルラトホテプ! 話したいことは山程あるのです! ロボは良いぞ。すごく良い。デモンベインと見せかけたファフナーって感じの作品なので是非読んで下さい。
それはさておき。
こちらニャルラトホテプ、千の化身(実はもっと沢山居るとか!)を持つ芸達者な神でございます。全部説明しようと思うとキリが有りません。
なのでsealが説明したいところだけを切り取って話すことになりますが、気になるところなど有りましたらお気軽に質問ください。
【概要~ここだけ読めば大丈夫、簡易版ニャル講座~】
まず最初にニャルラトホテプという呼称について。
ニャルラトホテプ、ナイアーラトテップ、ニャルラトテップ、ナイアルラトホテップ、この神の呼び方は様々ですが今回はニャルラトホテプで統一します。無知蒙昧なる人間ごときの口で邪神の名前など正しく発音出来るわけがないので問題有りません。どうしても近づけたい貴方はエンサイクロペディア・クトゥルフなどの有名な資料を参考にすると良いかもしれません。
今回、この講座では基本的にニャルラトホテプという呼称で通します。
ニャルラトホテプは先日紹介したアザトースの息子であり、アザトースを始めとした数多の外なる神々のメッセンジャーとして、いつもニコニコ貴方に這いよる神様です。ちなみにイホウンデーという鹿の女神が奥さんなのだとか。ケモナー……?
彼は魔法と科学の双方の知識に優れ、人間にそれらの力を授けては、その破滅を肴に酒を呷る愉快な神様でございます。その理由は単純に趣味であったり、知りすぎた者を始末する仕事であったり、場合によりけりです。しかし性格の悪い手口と直接手をくださない立ち回りは基本的に同じ……と思うじゃないですか。一部の化身(特に力の弱い化身)は直接殴ってくることもあるので、注意して下さい。
配下としてはシャンタク鳥と呼ばれる巨大な怪鳥、そして
この
次に行きましょう。
ともかく基本は「事件の裏で暗躍する邪悪な黒幕」というイメージを抑えてもらえれば問題有りません。
その基本を抑えた上で、TRPGなんかではボスにしても良し、追い詰められた主人公達に陰ながら救済を差し伸べても良し、導入部分にだけ正体を隠して現れて主人公達を事件に巻き込んでも良し、なんならヒロインにしても良し、何でもありの便利な神様なのです。
彼のこの特異な立ち位置は、彼が他の旧支配者(及び外なる神々)と違って封印を免れている所に由来します。ニャルラトホテプが自ら手を下さないタイプであることと関係しているのかもしれませんね。これが幸福だったのか不幸だったのか……そればかりは神のみぞ知るという奴でしょうか?
【概要~どんな姿なの?~】
ニャルラトホテプは多くの化身を持つ神です。なので当然、その化身に応じた姿になります。例えば浅黒い肌の水兵、例えば老科学者、例えば荒ぶる狂獣、例えば透き通る黄金の巨木、例えば魔術を窮めし古代エジプトの神、例えば摩天楼の最奥で静かに微笑むスーパーコンピュータ、例えば銀髪で作中描写と挿絵の間でバストサイズの一定しない美少女、例えば命をかけて相棒の少年を守る勇者ロボ、とにかく多くの姿を持っています。
本来の姿は黄色く泡立つ粘液のようなもの、らしいのですがこの姿で出てるのはあまり見たことが無いですね。バストサイズの一定しない美少女ニャルラトホテプの出る某作品のアニメでそれっぽいのを見た程度でしょうか。
その気になれば貴方の作品で好き勝手設定した化身をお出ししても良いのです。ただしそれがニャルラトホテプだと思ってもらえるかは受け手次第です。
参考ににゃる資料としては、とあるサークル様がニャルラトホテプ専門のイラスト集を出しておりますので、みなさんも某虎のお店とかメロンのお店とかで買ってみると捗るかもしれません。
人間として登場する時は黒人、ないしは浅黒い肌の男として出ることが多いです。でもTRPGで黒い肌の男が出たからってニャルだな!!!! と攻撃するのはやめてください。大体気のせいです。殴る場合は、空気読んで殴って下さい。日ノ本の高僧曰く、
ちなみに原始仏教においては獣や大自然の中に特に仏性とか認めてないので注意してください。教えてくれたとある教授に普通に人間が修行しなきゃ駄目よって言われました。びっくりです。とんだ動物差別ですよ。
仏教も興味はあるのですが、いかんせんまだ勉強不足なことと、ニャルの化身である黒仏の話は今回しないこともあるので、これくらいにしておきましょう。
【概要~それぞれの化身について~】
沢山の化身が居るニャルラトホテプ。ここではその化身について簡単に紹介していきたいと思います。
それぞれの化身は独立した意思を持ち、時として互いに対立し合いながらもニャルラトホテプという総体を形成しています。
全く違う力、知識、技術を持ちつつもそれぞれの欲望のままに動き、結果として大いなる神々の意思を世界に実現する。そんな群体こそがニャルラトホテプの本質だと私は思っています。幾ら道化を気取ったところで、大いなる神々の意思に従うことしかできない姿は、どこか神々の決めた定めから逃れられない人間にそっくりですよね。
――――というか、ニャルラトホテプと人と、どう違うんでしょうかね?
ニャルラトホテプの化身は人型のものが最も多い、なんて話を聞くとそんな冒涜的宇宙的疑念にとらわれそうになる夜も有ります。
さて、化身の紹介にいきましょう。
▼チクタクマン
変幻遍在なる歯車神。スティーブン・キングのガンスリンガーシリーズや、FGOで有名な桜井女史のスチパンシリーズなどで出てきます。初出の作品はスコット・デヴィッド・アニオロフスキの「I Dream of Wires」です。ちなみにデモンベインでもこいつモチーフのボスが出たりします。
さてこちらの「I Dream of Wires」は公には訳されてないのですが、訳文を偶然にも読む機会が有りました。そこから得たインスピレーションが今回のケイオスハウルに繋がったという裏話が有ったり無かったり……星々の導きってあるものですね。
この作品の中でチクタクマンは人間に繋がれた人工知能として登場します。主人公と交わす会話もどこか不自然で、非人間性を強く感じさせる存在です。正体不明の機械や文明に対する恐怖感、嫌悪感を描いた名作ですので是非皆様も一度お読みください。この中ではチクタクマンは只の機械であり、神というほどの力は発揮していませんが、まあそれはそれです。後の創作では大体機械を支配する強大な神です。それで良いのです。
ちなみにケイオスハウルでのチクタクマンは、ケイオスハウルの前日譚にあたる短編「物を書くマシン」において、多少のコミュニケーション能力は得ることに成功しています。ですが自らの力の限界を知った彼は人間に頼ることで自らの目的の達成の為に暗躍するようになりましたとさ。詳しいことはケイオスハウルで!
個人的にこの化身を描く場合に大事なのは非生物性だと思っています。命というもの、感情や感覚というもの、そういうものを無視した(あるいは歪めた)キャラクター性の表出がチクタクマンをチクタクマンたらしめるのです。理屈では納得できるが、それはそれとして受け入れられない! という雰囲気の事を言わせるようにすると誰からもチクタクマンとして受け入れられるのではないかなと思います。
ちなみにTRPGでは優秀な装甲、比較的高い耐久力、呪文使いたい放題、毎ターン極悪な状態異常ばら撒き、など非常にいやらしい性能です。そもそも戦うものじゃないんですけどね。これを反映して拙作のケイオスハウルでも、主人公が乗るケイオスハウル(戦闘形態のチクタクマン)を超重装甲のロボットとして描写しています。
そして、なんと、今ならおのケイオスハウルで主人公の佐々佐助が乗り込む斬魔機皇ケイオスハウルのVRモデルが
https://t.co/yvyWRbJzZy?amp=1
▼アトゥ
某所の傷だらけ薄幸美少女エルフになった絵とか最高ですよね。あの方と愉快なメンバーの皆様による卓動画は是非見ましょう。ニャルラトホテプ八変化、是非ともご賞味あれ。
それはそれとして世紀末美少女きらりん☆アトゥちゃんです。勿論、本来の姿は美少女だとかそういうことはありません。アトゥの姿はちょっと黄金でちょっと石英が入り交じるだけの美しい木だとされています。決してアナタハソコニイマスカ?とか問いかけてきませんヨ。
ちなみに資料によってはまたも粘液質の小山だそうですが、粘液だらけにするとキャラ立てづらいので、sealはケイオスハウルのアトゥちゃんの本体に関しては、美しい樹という設定で通したいと思います。好きな設定を、都合が良い設定を使えば良いのですよ。
彼女は虐げられたもの、蹂躙されたもの、奪われたもの、不幸の先に絶望し狂気に陥った人々に信仰される神だとされています。彼女の信者の中には自らを傷つけるものさえ居るそうです。
アトゥは詳しいことが語られている神ではありません。絶望と狂気への救い、そしてその手段を提示すると一気にそれっぽくなるのではないでしょうか。拙作ケイオスハウルにおいては人間に対する共感能力と同……なんでもありません吸収です! 生命力及び絶望や憎悪の感情を吸収する能力です! 同化とか決してそういうのではありません!
なんにせよ、理由付けって大切です。虐げられた絶望と狂気に至った人々に崇め奉られる理由を描くだけで、アトゥは良く分からない化身から一気に生きたキャラになると思っています。皆様もこのキャラを書く時は是非その辺りを考えてみてください。
ちなみにTRPGの方では超☆脳☆筋キャラとして設定されています。こちらでは読心も共感も同化も一切関係無し。パワー! パワー! 必中! 大ダメージ! 登場時もついでに開幕全体攻撃! 死ね!!!!!! 力こそパゥワ!!!!!! みたいな感じです。こういうキャラなのでケイオスハウル本編ではわりとおっちょこちょいな所が有るキャラとして描いてたりして。
アトゥに限らず、はっきりとした設定が残っていないキャラ程、
ちなみに恋愛短編「幸福の邪神様」でアトゥに関する
ぶっちゃけニトロプラスの名作「沙耶の唄」と関連あるんじゃないかと思ってます。「幸福の邪神様」で全部書いたので、此処では触れませんけど。
▼赤の女王
TRPGの方で登場した化身です。美しい女性の姿で現れ、時の権力者を惑わし、世界に破壊と混沌を齎すとされています。基本的に自分からは何もせず、その魅力で虜にした人間たちを操って邪悪な計画を実行するのがその常です。
その姿は女性の持つ魔性の顕現。散々その存在を仄めかした後に、実は犯人は人間でしたーとかやるときっと楽しい。
ゲームの方で考えだされたオリジナルだけあってゲーム的にも非常に空気を読んだムーブをする神様で、基本的に取り巻きを排除しないかぎり自ら戦いを挑むことは有りません。なお、神としては弱いものの勿論人間から見たら勝てない相手です。へっへっへっ、取り巻きさえ排除すりゃこっちのもんよ!! とか考えないでください。
▼トート
命を司る杖を持ち、あらゆる魔術に通ずるとされたエジプトの“強さ”を司る神セト。その頭から生まれたとされる魔術の神がトートです。
現実世界では文字を人間に伝えたとされており、クトゥルフ世界では同名の神がアトランティスの建国に携わっていたとされるなど、ともかく人間に対して友好的な神であると思われます。
ゲーム的にはあらゆる魔術を使いこなす上に、そのMP消費量を半分で済ますなど優れた魔術師としてのスキルを持っています。
人間に智慧を授け、人間を慈しみ、人間を愛する。そんな存在さえ化身として受け入れるところにニャルラトホテプという存在の奇妙さが感じられますね。
個人的にはノーデンスと何がしかの関係があったのではないかと推測していますが、この辺りはノーデンスについて解説した回を読んでいただければと思います。
▼ナイ神父
かの有名なクトゥルフ作家ロバート・ブロックが編み出した化身の一つです。ロバート・ブロックは彼の名作「アーカム計画」にてこの化身を登場させました。
彼は気さくで話しやすく、人心掌握に長けたナイスガイ。多くの人が彼に心酔し、破滅への奈落に転げ落ちていったとされています。悪役の帝王ですね。
強大な魔術の力を持ちながらも、あくまで人間として人心掌握と煽動を武器に邪神復活の計画を成し遂げた一際強力な化身です。
拙作ケイオスハウルでは戦闘面こそパッとしないものの、敵側の精神的なまとめ役として、そしてわざと情報を流すことで主人公を翻弄する策士として、頼りになるおじいちゃんキャラという立ち位置で登場させてみました。
この化身の特徴はその真面目さにあると思っています。ニャルラトホテプには様々な化身が居ますが、他の旧支配者を復活させる為にここまで真面目に働いた化身は実に稀です。その点を活かしながらキャラとして出すと面白くなると思います。
大体が自分の興味や娯楽、そして自分の気に入った人間の為に動くニャルラトホテプの中で一際異彩を放つ真面目なニャル。それがナイ神父なのです。
なにか大きな計画が動いているとさり気なくアピールしたい時には是非この化身を使いましょう。
▼アレクサンドル・デュマ
拙作「失恋童話」でsealが勝手に作った最新のニャルラトホテプの化身です。女好きの世話焼き、おしゃべりで邪悪。性格は悪いものの、気に入った人間にはこれでもかと肩入れをする。そういうキャラクターをしています。
オリジナルの化身を作る際に抑えておくと良いポイントの紹介を兼ねてとりあげさせてもらいました。
まずオリジナルの化身というのは読んでもらう側に納得してもらわなくてはいけません。そのために一番良い手段はニャルの最大公約数的イメージを多用すること、そして多くの人々にとって聞き覚えの有る名前を使うことだと考えています。
アレクサンドル・デュマは昨今だとFateシリーズでも有名な大作家で知っている人は知っているくらいの知名度が有ります。そして彼は黒人のクォーターであり黒い肌をしていたと伝えられています。
いかにもニャルラトホテプの化身的な浅黒い肌、そして能弁な性格。そこに大作家と女たらしという属性が加わると、知っている人ならば「怪しい奴め!」となるものです。
そしてそんな彼が道化の仮面を脱ぎ捨て、ポロリと宇宙的真実について触れる。ほら、如何にも人類を弄ぶ邪悪なトリックスターって感じになるでしょう?
是非ともこんな感じで皆様もオリジナルの化身を作ってみてください!
【最後に】
今回紹介した化身は、ケイオスハウルに登場及び登場予定となっているほんの一部に過ぎません。本当はもっともっと沢山の化身や面白い話が有ります。なので気が向けば今回の講座の続編をやるかもしれません。
ニャルラトホテプはその知名度と人気にも関わらず、あまりに広く、あまりに深く、あまりに難解な神です。勿論共通する特徴はあるものの、それすらも例外は多く、我々はかの神の化身を網羅的に追いかけることによって少しずつ神話的真実に対する理解ができたと錯覚することしかできません。
ニャルラトホテプはクトゥルフ神話の狂言回し、物語の友。そう考えるのが皆にとって一番幸せな結論だと私は思います。
もっと知ろう、もっと理解しよう。そう思ってニャルラトホテプを追いかけ続け考え続け見つめ続けようとしたところで、深みにハマっていくだけです。
馬鹿め! それがニャルラトホテプの罠だと何故気づかん!! と言っておけばだいたいなんとかにゃるよ、実際。
貴方の目の前にばらまかれた知識はかの神の罠に相違ありません。そんな貴方を見て嘲笑うべく、彼はあなたのそばに今も這いよっていることでしょう。くれぐれもお気をつけ下さい。
今回はこれにて〆とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
次回まで闇からの囁きに耳を傾けぬよう。
【CM】
《天ヶ瀬アマタの斬魔行路》
「人の世の法で裁けぬ悪鬼共――魔剣の刃に、血濡れて眠れ!」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882713202
現在カクヨムにて連載中!
異世界物かつ仕事人となっております。
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