第五十回 トルネンブラってなぁに?

【初めに】


 みんな! TAROMAN見てる!? 動画での配信もやってるからNHKのサイトで見てくれよな!

 はい、転職先のんびり選んでたら、エージェントさんのご厚意により、UR求人キャッチできちゃったしぃる君です。まあ本当にURなのかは職場入ってから分かるんですけどね。あとは前の職場がさっさと源泉徴収票送ってくれることを祈るばかりです。これを読んでいる薬剤師の皆様におかれましては転職にはファルマスタッフをおすすめします。ファルマスタッフの人が一番良かったです、ヤバい求人を事前に弾いてくれるから。マジで。

 運が良いのか悪いのかなんも分からんね。もうすぐ悪性リンパ腫の完治診断を貰える予定のしぃる君にサポート送ってくれよな。


 という訳で今日はリクエストにお答えしてトルネンブラについて簡単にまとめておこうと思います。

 本当は「The Chain of Aforgomon」をやろうと思っていたのですが、すでにリクエストを受け付けていたのをうっかり忘れてましたごめんなさい。本当にごめんなさい。そっちはそっちですぐにやります。

 トルネンブラ、と聞いてすぐに出てくるあなたはきっとクトゥルフ神話TRPGが大好きな筈。なにせTRPGとともに生まれ育ってきた外なる神ですからね。今日はアザトースの宮廷の楽団長にして有能プロデューサー、トルネンブラPの魅力について迫っていきましょう。


【トルネンブラのお仕事】


 音楽を司る外なる神です。その役割は眠りにつくアザトースの為に音楽を奏で、その安寧を保つことにあります。アザトースが目を覚ますと我々の住む宇宙そのものが崩壊してしまうことから、トルネンブラの仕事はある意味で宇宙の平穏を守る仕事と言うべきでしょう。

 ただしその音楽が人間に平穏をもたらすかどうかは全く別の問題。むしろその心をかき乱し、狂気を呼び込むこともしばしばあります。トルネンブラはあくまで宇宙を調律するだけなのです。

 そんな彼は時折優れた演奏者をアザトースの宮廷に招き入れることがあります。トルネンブラの起こした事件を描いた作品として取り上げられるのが「エーリッヒ・ツァンの音楽」です。この作品にはトルネンブラの名前は出てきませんが、この作品に出てきた正体不明の“何か”こそがトルネンブラであるというのが、クトゥルフ神話TRPGにおける設定です。ラヴクラフトが書いた「エーリッヒ・ツァンの音楽」を元にして、トルネンブラという外なる神は創造された訳ですね。この作品では、夜な夜なこの世のものと思えぬ音楽に取り憑かれた老ヴィオラ奏者が、音楽とともに何者かに住んでいた区画ごと姿を消してしまいます。主人公の記憶には、その事件が不可思議な記憶として残ってしまい、世間における事実とは矛盾してしまうのですが、アザトースの安寧という大きな調和の為には、その程度のことは平気でやるという設定なのでしょう。

 宇宙を守る神話的楽団を率いるトルネンブラPなのです。


【トルネンブラの姿】


 「エーリッヒ・ツァンの音楽」においてもそうでしたが、トルネンブラと呼ばれる存在には実体がありません。それはいうなれば生きた音楽。それが現れる場所に常に聞こえてくる不気味な音楽こそが、他ならぬトルネンブラそのものなのです。

 TRPGで使うならば、たとえばセッションの間のBGMで聞こえ続けていた音楽が実は他ならぬトルネンブラだったとか、口笛を吹くと共にトルネンブラが現れてその力で変身して邪悪な存在と戦う力を与えてくれるとか、この胸の歌がシンフォギアとか、動画投稿サイトの有名演奏者が突然正体不明の楽曲を配信して大混乱とか、そういうシナリオを作るのに役立つことでしょう。

 なにせ現代TRPGシーンは音楽の使用が非常に簡単になっております。そんな時代だからこそ、音楽も上手に組み入れてトルネンブラの姿を描写してみてはいかがでしょうか。


【参考シナリオ】


 『トレイル・オブ・クトゥルー・ジャパン』の「6本目に魔が宿る」はこのトルネンブラを扱う際にはぜひ参考にしてもらいたいシナリオです。この作品の中ではトルネンブラの名前は出ませんが、エーリッヒ・ツァンが作曲した幻の音楽とそれにともなって現れる恐ろしいなにかの存在に触れられます。

 それとコンテンツの配信という意味では『アカシック13』の「イエロウ・ウインド」も良いでしょう。こちらはハスター関係の話なので、少しだけディテールが異なるのですが、こちらのシナリオ構造もトルネンブラの扱いを考える上では非常に参考になると思いますよ。

 大事な点として「演奏が多くの人の耳に入ると大変なことになるから阻止しなくてはいけない」があると、PCたちのモチベーションが作りやすくなるので、此処は抑えておくとシナリオが面白くなりやすいです。あとは折角なので芸術系技能が輝く仕様にすると映えるってところでしょうか。この二つは大事なポイントです。


【トルネンブラの能力】


 単純に演奏者をさらう以外にも、シナリオや作品ごとにトルネンブラは様々な力を発揮します。音楽を聞いた人間を暴力行為に駆り立てたり、死者を一時的に動かしたり、衝撃波で建物や生き物を破壊することが可能です。音、振動が関わるのならばいくらでもやりようがあるって感じでしょうか。恐ろしい相手となっております。

 クトゥルフ神話TRPG第六版の基本ルールブックにある「死者のストンプ」は、トルネンブラという名前こそ出て来ないもののニャルラトホテプの授けたトランペットを使った者がアザトースの宮廷に連れて行かれたりします。業務委託か?

 なお、音を聞かない為に耳をふさいだ場合でも、肉や骨を通じて伝わる振動だけでも影響を受けます。周囲をまるごと真空で包んだらやっと影響をごまかせるかな……という感じでしょうか。

 「エーリッヒ・ツァンの音楽」のように、音楽家が自ら曲を奏でることで一時的に抵抗可能とするという設定もあるので、そういうシチュエーションもなかなか卓映えしますよね。


【さいごに】


 トルネンブラは、クトゥルフ神話TRPGのお陰で日本で二番目に紹介されたクトゥルー神話の邪神となりました。一番目はニャルラトホテプです。いあ、にゃるらとほてぷ。混沌、そして秩序を司る神が順番に紹介されたと考えると日本のクトゥルー神話の受容過程ってめちゃくちゃ美しいと思いませんか? 俺は思います。

 極まった理論や極まった音楽がシンプルかつ美しくなるように、混沌と秩序の順番で神々が参入した日本クトゥルー神話シーンの成り立ちも、非常に美しい歴史の軌跡を描いていると思うんです。もはや奇跡です。

 トルネンブラそのものは存在からして後付ですし、紹介する内容も決して多くはなかったのですが、音楽という物語に絡めやすいという性質、そして日本にたどり着いた歴史の過程、そういったところから非常にシナリオ映えする存在だと考えております。

 この講座のトルネンブラの紹介に、これを読んでいるあなたの作品の名前がいつか加わる日が来るのかもしれません。


 それでは次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。


【宣伝】


 夏休みの宿題に読書感想文を八百字程度で書きました。御覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/16817139556940714925/episodes/16817139556940721487

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