第六十四回 Fate/Grand Order「ポホヨラのクリスマス・イブ 夢見るサンタとくるみ割り人形」のクトゥルー神話要素について①

【初めに】


 はぁ~乱世メンテ乱世メンテ

 今回は24時間くらいで済んだようですね……久しぶりにFate/Grand Orderを感じることができてなんだか懐かしくなりました。

 なんだか騒がしいようですが、古人曰く「だったら私、アイドルとシャンシャンする作業に戻ります……」と。漫画で分かるFGOはいつだって人類最後のマスターの味方だった……。学園アイドルマスター、現在100連ガチャ無料! 価格にして一万円分くらいの価値はあるのでぜひやってね!


 さて、真面目な話に戻ると今回はプリテンダーとなったアビゲイル・ウィリアムズがサンタとなって大活躍しております。しかもモチーフはかの有名なの物語『くるみ割り人形』。しかも第一夜からニャルBBちゃんが出ていると来た。冒涜的なアトモスフィアが留まるところを知りません。

 アビーちゃんがプリテンダーなのも、夢の中の仮初の姿だからなのかもしれませんね。まあこれは根拠の無い妄想なのですが、今からする根拠のある話で「なんかそれめっちゃありそう」って思って頂ければ幸いです。それでは始めていきましょう。


【ロウヒ&今回の異様に反応の小さかった特異点&空の欠片】


 まず取り扱うべきはロウヒでしょう。今回のピックアップサーヴァントとして物語でもサンタを待つ重要な存在になっていますが、彼女はクトゥルー神話との親和性がそもそも高いのです。

 クトゥルー神話にはイタクァという旧支配者が居ます。この旧支配者は北極圏を縄張りとしており、風雪を自在に操り星間宇宙を飛び回ります。

 そう、今回舞台となっている北極圏です。イタクァが最初に登場した小説「風に乗りて歩むもの」はカナダを舞台とした物語ですが、北極圏とは北欧・カナダ・ロシア・グリーンランドを含む区域であり、イタクァの勢力範囲はとうぜんこれらの地域にも及びます。カナダでイタクァが暴れたように、北欧・ロシアあたりでもイタクァの影響力があったと考えるのが自然でしょう。

 要するにこういうことです。カナダに現れたイタクァの眷属は現地の伝承“ウェンディゴ”としてクトゥルー神話では語られますが、北欧に手を伸ばしたイタクァの大祭司がロウヒであったところでクトゥルー神話(そしてFate/Grand Order)的にはおかしなことではありません。


 ここで気になるのがそのイタクァの本拠地です。

 イタクァは北極圏を勢力下におさめているのですが、実は異世界に本拠地があるのです。有名なクトゥルー神話小説である「タイタス・クロウ・サーガ」のシリーズにおいて描写された異世界ボレアと呼ばれる場所です。

 この異世界ボレアには三つの月があり、吹雪に覆われ、イタクァの子を生む為につれてこられた人間の女性やイタクァの娘(美人)が住んでいます。今挙げた「タイタス・クロウ・サーガ」の中でもイタクァの娘は無事に婿ムッコを見つけて神ぴょいしてハッピーハッピーです。ロウヒ自身も己の欲望の為に婿ムッコを迎え、今回のシナリオで登場している“サンポ”を作ってもらっているので、そもそもロウヒとイタクァの行動はかなり近いものがあるのです。このあと話すのですがロウヒとイタクァの近いところは他にもあり、そんなロウヒが構築している「外界とほぼ完全に遮断されていた雪と氷に包まれる異世界」って本当に「ただのサンタ村」なの? という話をしたいんですよね。

 あのサンタ村、本当に我々の知っている世界と同じ場所に存在しているのか? カルデアから観測しづらかった理由ってそもそも異世界だからじゃないか? 北極圏に構築されたゲートからギリギリ反応を観測できているだけじゃないか? サンタ村から離れて森の中でカルデアとの通信が一時的に回復したのは「あのサンタ村こそがイタクァの支配する“ボレア”そのものだからじゃないか?」と私は疑っています。


 ロウヒとイタクァの類似点ですが、今回のロウヒのデザインが気になっていて、そもそもロウヒは鳥人に変化して飛び回るのですが、これがどうにもイタクァのイメージに近い気がしてならないんですよね。長い手足と赤い瞳というのがイタクァの基本的な姿なのですが、ロウヒも宝具発動の時だけ瞳が青白→紫になるし、鳥人形態で一気に手足が伸びているんですよね。

 鳥人になっても肘から翼伸ばす必要も足首から鳥の足を伸ばす必要も無い筈なのに……わざわざそうしているんですよね。この状態の時はイタクァの影響を強めに受けてるんじゃないかな……と気になってしまいます。

 それとEXアタックでオットセイぶん投げたあと何故か触手でてますよね? あれが本当に触手かはわからないし「やだなあ北欧といえばクラーケンですよ~」と言われたらそれ以上調べる事はできないのですが、無印アビゲイル・ウィリアムズの触手攻撃に随分似てらっしゃいますね……とだけ言わせてほしいところです。


 これは推測の域を出ないのですが、ロウヒがフォーリナーに弱いバーサーカーというのも個人的に気になっていて、ロウヒがイタクァの崇拝者ではないにしても、イタクァの影響を受けて発狂している状態なのでは? くらいにはロウヒを疑ってかかっています。

 あとこの前のゴッホちゃんイベントが病の神としてのアポロンの話でしたが、ロウヒは天空の神ウッコに祈りを捧げて、ロヴィアタル(ロウヒの別称という説もある)という女性から人類の世界に仇為す病魔を産み出したこともあります。そもそもあの婿ムッコってウッコとつなげていて、マスター使ってなにか産ませようとしてるんじゃないだろうな。どうなんだい。エッチなのかい? まさかFateがエッチなゲームだなんて言うつもりじゃないだろうな……?

 あとFGOはクトゥルー神話関係に関しては全部計算してやっていると私は思っています。この考察が的中してしまったことから「全部計算してなきゃこう書かないな」と考えるに至りました。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/1177354054893387413

 こういった経緯から、ゴッホちゃんイベントで病魔の話したのも前フリだったんじゃねえの?と睨んでいます。

 あとクトゥルー神話で病魔の旧支配者というとハスターリクという存在が居るので、これが風に分類されるハスターとの関係性も大きく、この前のイベントでゴッホちゃんがやたらハスターの色である黄色基調のデザインだったのと合わせて「直接関係は明示できないがかなり引っかかる」ポイントでした。

 加えて天体軌道調整という第一スキル名や極星天球殻循環という宝具名からしても、「宇宙を飛び回る旧支配者」としての要素が根っこにあって、その上から第二第三スキルのようなロウヒ的要素を被せてないか? このロウヒこそプリテンダーみてえだぞ? ロウヒの皮被ったイタクァとかじゃないだろうな? そうでなくてもイシュタルと遠坂みたいな共生関係じゃないだろうな? と、色々疑わしいです。

 ここまで状況が揃いすぎてると、実はアビゲイルがイタクァ本体降ろしてましたもあり得るんだよな……。


【くるみ割り人形】


 くるみ割り人形、この作品はそもそもFate/Strange Fakeで大活躍のアレクサンドル・デュマが原作を書いています。この記事を読みに来た皆さんならご存知でしょうが、デュマはかの有名な巌窟王の物語を書いたことでも知られています。

 そう、アビゲイル・ウィリアムズに藤丸立香を託して消えたアヴェンジャーの物語です。アビゲイル・ウィリアムズに巌窟王が何を託していったか、主に心の防衛ですが、とりわけ夢の防衛ですね。

 夢です――実はそう、今回取り上げられた“くるみ割り人形”も夢の世界を描いた物語なのです。くるみ割り人形の物語では、くるみ割り人形にされた王子様を少女が救い出すことになります。今回は夢の守り人を託されたアビゲイルが、藤丸立香の夢の中で「ネズミの王」を倒して、くるみ割り人形ならぬトントゥにされた藤丸立香を王子様に戻すのではないかと私は見ています。

 そもそもクトゥルー神話やアビゲイル・ウィリアムズ自体が夢というものを主題に取り扱っています。このエッセイでも紹介した通り、夏アビーはドリームランドモチーフでしたね?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/1177354054918981780

 彼女に与えられたサンポが一体何なのかはまだこれから明らかになるところですが、今回のシナリオに夢が絡むならばアビーサンタは正しく適役といえることでしょう。


【第一夜】


●大黒天


 クトゥルフ神話におけるネズミといえば「壁の中の鼠」です。ニャルラトホテプが関係する陰惨な物語で、先祖の屋敷を改築している間に壁の中から鼠の足音が聞こえると言うようになった男が、無惨に発狂していく姿を描いています。

 また、今回はBBニャルが登場していること・魔女狩りがキーワードとなっている事から、ニャルラトホテプの眷属である魔女“キザイア・メイスン”の存在も無視できなくなっています。

 このキザイアの使い魔がブラウン・ジェンキンスと呼ばれる人面鼠めいた気持ち悪い生命体です。

 そもそもFGOの大黒天は大黒天の御使いの鼠たちなので、魔女の使い魔という役割で呼び出されるにはぴったりです。大黒天というのはインドの神話におけるシヴァ神の別名なのですが、シヴァ神というのはニャルラトホテプと同じく三つの瞳を持っていたり“偉大なる暗黒の神”という別名があったり、黒をイメージカラーとして黒い肌の男の姿で現れ闇の中を跳梁するニャルラトホテプとの類似性がしばしば語られます。今回の事件に裏でニャルラトホテプが関わっているとすれば今回の大黒天はニャルラトホテプの遣いであり、なおかつくるみ割り人形における悪の親玉「鼠の王」の下僕という役どころなのかもしれません。

 日本の作品だと『黒い佛』なんかも大黒天とニャルラトホテプの縁になってますね。


 まあ最初はそんな都合よくニャルラトホテプが関わってくるわけねえだろと思ってましたが……


●BBホテプ


 でてました。こいつが鼠の王。汝が黒幕! 罪ありき!

 まあ実際のところは真の黒幕というほどのこともなく、良い感じに黒幕をそそのかして利益をかすめ取ろうとしている可能性がありますが……こいつが最初に出たので「ああ、これはクトゥルー神話のテクスチャで考えて良いんだな」と確信を持てた相手ではあります。

 ありがとうBBちゃん、大好き。


【第二夜】


●魔女


 魔女狩りというワードが出てやっと自分の中でつながったところはあります。

 クトゥルー神話において、先程お話したキザイア・メイスンの出てくる物語「魔女の家の夢」では、主人公が熱病らしきものに浮かされて夢を見ている描写が出てきます。その夢の中で主人公はアザトースに出会い、発狂し、聴力を失ってしまいました。もしこのシナリオが夢だとすれば、藤丸立香も下手をすればアザトースやその他の邪神に遭遇し、危険が身に及ぶかもしれません。

 そして最初に話した通り、ロウヒは北欧世界に九つの病魔を解き放った存在であり、その中には熱病Feverも存在しました。思ったよりも遥かにロウヒが真っ黒でおっかないですね。

 今回の敵が魔女だとすると、偽りの魔女狩り(クトゥルー神話の世界では本当に魔女は居たが撮り逃した)で歴史に名を残したアビゲイル・ウィリアムズが、夢の世界で藤丸立香を救うために本当の魔女狩りを成功させるのが今回のイベントの筋書きかもしれません。

 無実の人を陥れた罪に苦しむ彼女にとっては、良い子になれることが一番のプレゼントですよね。


●テスカトリポカ


 そのままそこでテノチ抑えといてください。

 クトゥルフ神話TRPGではテスカトリポカがニャルラトホテプの化身であることになっています。

 だったら今回の黒幕側なのでは? と思うのは間違いです。ニャルラトホテプは無数の化身を持っており、それぞれが自由に行動しています。このテスカトリポカが化身であっても、テスカトリポカとしての自我でテスカトリポカとしてカルデアを助けていてもなんらおかしくありません。

 今回のテスカトリポカは星の話をしてましたよね。

 彼は今回のイベントにおいて、南米神話の星座では理解しきれない法則が働いていることについて言及していました。

 別の神話の星座……別の神話というのが、それこそクトゥルー神話であることは十分ありえます。そしてロウヒが今回星と天への干渉をスキルや宝具で行っています。ポカニキの指摘はかなりこの話の核心を突いていると言えるでしょう。

 これだけ迫ったアドバイスをしておいて、実は敵……という事は考えづらいと思います。あと今回もテノチをいい具合に制御してくださっているので、もうそれだけで我々カルデアはだいぶ感謝すべきだと思います。


【第三夜】


●回想でのロウヒの宝具


 撃てない状態だったのか、回想で撃つと設定上の齟齬が発生する状態だったのか、ずっと封印されていましたね。

 その代わり相手にデバフが延々かかり続けていたので、あの時のロウヒの宝具に相当するものがあれだったと見るのが良いと思われます。

 翻って今の(カルデアに召喚される方の)ロウヒは、回想における彼女と異なる存在になってしまっていると考えるべきでしょう。

 やっぱりバーサーカーになるにあたってなにか憑いてませんか?


●猫耳美少女


 TLで拡大画像を見せてもらったんですが、エジプト十字を装備している猫となるとバステト関係と見るべきですね。

 クトゥルー神話でバステト(クトゥルー神話だとバーストと呼ぶ事が多い)は旧神側であり、旧支配者と相対している間は助けになる存在です。そうでなくともクトゥルー神話時空で猫が悪い訳ねえよなって俺信じてるよ。バステトには血に飢えた凶暴な側面もあるのですが、今回の雰囲気を見るにそれはあまり関わってこないのではないかな……と見ています。いよいよ収集つかないからね。

 アンクは復活の力を持ち、サンポもまた復活を待っているとすれば、いい具合に後半で噛み合ってくるのかもしれません。

 しかもバステトとニャルラトホテプは因縁があって、古代エジプトで縄張りが被っていたりニャルラトホテプがエジプトの信仰をめちゃめちゃにしようとしたり、対立している要素があるので、今回のニャルBBの暗躍に対抗して動いている可能性が高いですね。そもそも凶暴という話は『妖蛆の秘密』という魔導書で触れられているものの、古代エジプトの資料なんてニャルラトホテプが変な改ざんをしててもおかしくないですから、FGOでは「元々善良なのにニャルラトホテプのせいで凶暴なことにされた」とかでもおかしくない。そもそもバステト(バースト)凶暴説自体が『妖蛆の秘密』でしか触れられてないんですよね。FGOでは「モリアーティ英霊化阻止の為にホームズが色々やった」が実際ありましたから、ニャルラトホテプならそれくらいしますよ、きっと。

 なのでこの美少女猫ちゃんは安心と見るべきでしょう。元気にYoもといモイ!と挨拶してあげましょう。


 ニャルラトホテプがいよいよ悪い事しそうになった時にサンポをアンクの力で復活させたりするんじゃないかなー。


【今後の更新について】


 今回は、ひとまず、ここまでとしておきましょう。

 おわかりいただけたと思いますが、今回は知れば知るほど神話的真実に満ちた冒涜的かつ名状しがたい混沌の物語となっています。この先も楽しみですね。

 次のシナリオの更新が始まり次第、こちらも追加で更新いたします。

 それまではしばしの小休止。情報が多すぎて語りきれていないこともあるので質問は何時でも受け付けております。


 その間に皆さんに一つお願いがあります。


 アイドルとシャンシャンするのも良いですが、せっかく皆さんFGOが好きでしょうから、この講座を参考にして考察ツイートでバズってリプなどでクトゥルフ講座を宣伝してください……なぜなら! カクヨムコンテスト10が開催中だから! 私はカクヨムコンテストで良い成績を残したい! どうぞよろしくお願いします!


 それでは次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。

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