第六十五回 Fate/Grand Order「ポホヨラのクリスマス・イブ 夢見るサンタとくるみ割り人形」のクトゥルー神話要素について②

【第四夜】


 推定バステトの行動が思ったより大胆でしたが、第五夜まで通すと手段はどうあれ事態の解決に向けて動いていることは察せられて安心しました。

 そして非常に情報が多い。ひとまず目についたところだけ話しますが、小ネタは色々あるので都度追加していきたいなと思います。


●蓮の花


 クトゥルー神話では黒い蓮の花から夢を見る薬「遼丹リャオタン」が作られます。時間や空間の制約を飛び越えて過去を見たり、夢の世界に行ったりできるとされています。私が訳したヘンリー・カットナーの作品「境界の侵犯者」でもこの薬が使われ、その夢を戸口として邪悪な存在がこの次元に這い寄ってきます。

 なので急に蓮の花と蓮の花の妖精が襲いかかってきたということは、この特異点でそういった薬に近いものを用意している誰かがいるのかもしれませんね。なぜ黒じゃなくて赤と青の蓮の花だったのかと言うと「クトゥルーっぽいけどクトゥルーのあれとは違うよ」と言う為か、あるいは「映画マトリックスの赤い薬と青い薬のオマージュ」なのか、その両方かもしれません。ちなみにマトリックスの赤い薬と青い薬は手塚治虫先生のふしぎなメルモちゃんから思いついたというインタビューを見たことがあります。メルモちゃんも夢の中でママから渡されたキャンディーを使って活躍するので、徹底的に夢のモチーフを大事にしていますね。


●楊貴妃


https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/1177354054893387413

 こっちでもう全部書いてるぜ!

 今回はロウヒから邪悪扱いされてました。

 森を燃やし尽くすことに定評のある彼女が森の娘メッツァンネイト扱いされてるのがじわじわおもろくてプレイしている間にニヤけてました。


●思わぬ呪い

 

 この特異点の構造が明らかになったところでこの言葉を聞くと、「そら高密度の呪いを保有している状態で下手にカルデアの人々の前に顔出したくねえよな」という感想になりますね。

 ただ同時に「観測によって存在を確定させる邪神への警戒」ともとれるんですよね。加えてカルデアの存在は知覚できても、旧神としての力を持つであろう推定バステトは上手く察知できていなかったのも気になっています。クトゥルー神話には旧神の印という邪神避けのお守りがあるので、それに絡む力で上手く気づかれないように立ち回っていたのかもな……などと想像していました。ロウヒが旧支配者イタクァの力を受けていて、推定バステトが旧神側だとすれば、かなり説明が付く場所が増えるんですよね。


 これ神話知識無い状態で見ると「どういうこと?」がかなり増えるよな……わかっててやってるんだろうなあ。


●キャッツアイ星雲


 これはクトゥルー神話とは関係ないのですが、キャッツアイ星雲の存在はここで初めて知ったのでバステトらしき美スクールガールもどきについて追加説明を行います。

 クトゥルーとはそれほど関係ないのですが、猫はそもそも地球から月に飛ぶ能力があります。推定バステトはビヤーキー(バイアクヘー)を呼んで逃走していましたが、あれはあくまでカルデアから逃げる為にそうしただけで、単純に特異点に飛び込むだけだったら本体の性能を使ってできてしまうのかもしれません。

 それとXで「ビヤーキーを使うということはハスターと契約したはず!」みたいな話を見ましたがそんなことはなく、オーガスト・ダーレスによる最初のビヤーキー使用描写では、クトゥルー退治に命をかけている老碩学ラバン・シュリュズベリィが黄金の蜂蜜酒と笛でぴょんぴょん飛び乗ります。まあハスターと敵対するようなことがあれば乗らせてはもらえないでしょうけどね。


●「余計な知識をため込んだばかりに意味を見出しすぎてしまうのかもしれない。」


 なあこれ今の儂のことなんじゃが……。

 孔明とロード・エルメロイII世にそれを言われるとその、はいすいませんでしたとしか言えないよ……。

 このあとの選択肢でもつい余計な事言いそうになって止められました。だってどう見てもあれバ……やめましょう。変な観測の仕方するとそれだけでめちゃくちゃなことになるのがフォーリナー案件なので。

 知ってるから危ないんですよね。


【第五夜】


 明確なクトゥルー要素は少なめでした。


●「探究心あふれるトリスタン卿ならば器用にそして華麗に乗りこなしてみせたかもしれないな!」


 実際にトリスタンが乗りこなしてダゴネットが仲良くなる話があります。

 Patrick Thomas先生の「Surely You Joust」で『Cthulhu Unbound, Vol. 2』に収録されています。

 せっかくならトリスタン卿も参加してほしい……というよりフォーリナー奏章で大活躍してくれるかもしれませんね……!


●ポラリス


 まだクトゥルー神話という枠組み自体が固まる前からラヴクラフト御大が書いていた作品のタイトルがポラリスです。

 徴兵検査に健康が理由で不合格となった翌年に書かれた作品です。当時28歳。不名誉に感じていました。

 そんな時に書かれたためか、主人公も虚弱な体質のために見張りの兵としての仕事を全うできず、

 今回のアビゲイルは育成の中で自らが藤丸立夏の夢かもしれないし、藤丸立夏がアビゲイルの夢かもしれないという内容の話を口にしています。

 これは今後の奏章でメインになっていく話題で、今回のイベントではそこまで深く掘り下げられないのかもしれないと思っていますが、北極星を使ってイベントの中で相当入念にほのめかしをやっている手触りがあります。


 あと純粋に北極星自体が妙見菩薩という日本のCOCでハスターと一緒にされている菩薩様と深い関係もありますからね。


●ロウヒの瞳


 赤くなってる! 目の中心だけ赤くなってる!

 やっぱイタクァ関係の気配してるよこれ!

 でもこれこそミスリードで、それこそ「余計な知識をため込んだばかりに意味を見出しすぎてしまうのかもしれない。」の具体例かもしれないので、まだ様子見……様子見だ……。


●ロヴィアタル


 直接は関係ないのですが、今回のロヴィアタルはロウヒの別名という扱いになりましたね。9つの病魔も9つの厄災としか言われていないし、厄災を産む話はそこまでガッツリとカレワラから持ってこないのかもしれませんね。

 召喚した後が婿ムッコ呼びなのは単純に今回のイベントでサンポを復活させてロウヒに気に入られた結果なのではないかと考えています。


【小休止】


 FGO周辺はそもそもFGO書いてる人たちがクトゥルー神話どっぷり世代なので、すごい速度で知識が出揃ってきて非常に面白いですね。

 私もまだ勉強不足だなと改めて思い知らされました。

 正直もっと内容を吟味して書きたいのですが職場が繁忙期なので許してください。ハスターリク降臨したんじゃねえの?ってくらいインフルエンザの患者が多いのです。


 それではくれぐれも次回まで闇からの囁きに耳を傾けぬよう。

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